取材レポート

城南学園小学校

先進的な「ICT教育」と人間力を高める独自の「たてわり活動」を両輪に『城南の情熱教育』を展開

建学の精神「自主自律(強く正しい)」「清和気品(清くやさしい)」のもと、智・徳・体の調和のとれた人間の育成を目指す城南学園小学校。一人ひとりの子どもたちをしっかりと見つめサポートする「城南の情熱教育」を通して、希望の進路を叶える学力や主体的に学ぶ姿勢を培います。ICTを活用した思考力を育む指導や、人間力を高める独自のたてわり活動について、教頭の河岡秀典先生にお話を伺いました。

城南学園小学校教頭 河岡秀典先生のお話

城南学園小学校 教頭 河岡秀典先生のお話

個別最適化された学びを叶え、思考力の育みにつながる「Monoxer(モノグサ)」

「本校は、ICTをおそらく大阪府下にある私立小学校17校の中でベスト3に入るほど活用しています」と河岡先生。その言葉通り、同校では1年生から端末の1人1台制を導入し、授業でも電子黒板を利用して子どもたちの意見を集約したり、授業支援クラウド「ロイロノート・スクール」の思考ツールを利用した課題追求やプレゼンテーション作成を行ったりするなど、積極的に活用しています。

また、学習アプリ「Monoxer」も関西では他校に先駆けて導入済みです。「Monoxer」とはAIを活用した記憶定着を目的とするアプリで、教員が覚えてほしい内容を登録すると問題を自動生成してくれます。加えて、問題演習を重ねることで、子どもの習熟度と忘却度をAIが自動判定し、一人ひとりに合った出題内容に調整してくれるという個別最適化された学びを叶えてくれるアプリでもあります。同校では、主に漢字と計算の学習で利用しています。

「Monoxer」の導入について、河岡先生は「基礎学力の定着というよりも、その先にある思考力の育みを目的とした取り組みの一環だ」と説明します。

「思考力と言っても、知らないことばかりの中で考えることはなかなかできません。知識という手持ちの駒をたくさん持つことが必要です。『Monoxer』を通して、基礎的な計算に取り組んだり、学習の中にたくさんある覚えなければいけない要素をしっかりと覚えることで、手持ちの駒を増やすことができます。それと並行して、思考ツールを利用して自分の考えや結論を導き出したり、iPadを使って自分の考えを発表する経験を重ねることで、思考力は磨かれていくと考えています」

「Monoxer」を活用して行く上で、個々に対するフォロー体制も万全に整えているとのこと。

「最終的に正答率が100%になったら、その単元は修了です。ただ、覚えるのが苦手な子や理解するまで時間がかかる子については、取り組む前に覚える時間をしっかりと取るように指導しています。また、問題数を少なくして、早く100%にたどり着くような問題構成に変えることもあります。きちんとフォローすることで、正答率が無理なく100%に近づき、自信にもつながります」

2021年度は、漢字や計算のほか、高学年では理科や社会の問題も学校側で作成し、実施したそうです。

「このアプリは、利用前に問題の元となる内容を登録する必要がありますし、漢字であれば何個ずつ出題するかなど、教員側でカスタマイズしなければいけない要素が多いアプリです。そういった点で導入に二の足を踏んでいる学校も多いと聞きますが、本校では関東のICT先進校ともやりとりをし、試行錯誤しながらも順調に運営できています。今後は四字熟語や英単語などの学習にも活用していきたいと考えています」

低学年にも役割のある「たてわり活動」。全学年で責任感や自主性が育つ

城南学園小学校では例年、週2~3回、昼食後の20分間、たてわり活動を設定。全学年をたてわりで1班10人前後の班に分け、週替わりで掃除・グラウンドスポーツ・屋内スポーツの3つの班活動を行います。

たてわり活動を取り入れている学校は多いですが、同校の活動の特長は、1年生以外のすべての学年が役割を持っていること。6年生は班長、5年生は副班長、4年生は1年生のお世話係を務め、3年生は小さな班長、2年生は小さな副班長という役割を担います。

「本校では、1・2・3年生の教室は3階、4・5・6年生の教室は4階と2つの階に分かれています。3年生が小さな班長という役割をになうことで、3階の中で一番上の学年という意識が育ちます。下の学年の見本になろうと、廊下を走ったり、騒いだりしないよう気をつける様子が見られるようになります。たてわり活動は、責任感や自主性を伸ばし、相互に協力する心を養うための大切な活動です」

また4年生が1年生のお世話係になることで、下の学年をどのように導いていくかを学べると言います。

「1週間ごとに活動場所が異なるので、4年生は1年生を活動場所に連れていったり、活動の中でも1年生のフォローに回ったりします。この経験を通して4年生は1年生への対応の仕方を学び、5・6年生でのリーダーとしての活動につなげていきやすくなります」

3学期の終わりに1年生にたてわり活動の感想を書いてもらうと、ほとんどの子どもたちが「高学年のお兄ちゃん・お姉ちゃんのようになりたい」「とても優しかった」と綴るそうです。上の学年にはリーダーシップを育む、下の学年には学校生活の目標となる憧れの存在を持つという、とても大切な活動になっているようです。

ただ、異学年合同での活動である以上、いつも順風満帆に物事が進むわけではありません。何かあった場合、特に悩むのは、班長である6年生です。そのフォローに入れるよう、いくつかの班ごとに担当教員を置き、次週の計画や困りごとの相談にのっていると河岡先生。

「もちろん自分たちで解決する経験も大事なので、話を聞いてできるようであれば任せるケースも多いです。しかし、やはり教員の支援がないと難しいケースもあるので、付かず離れずというスタンスでフォローし、高学年のリーダーシップを育てるよう心がけています」

同校では、学校外でも先輩・後輩で話す姿もよく見られるとのこと。また、同窓会ではたてわり活動で一緒だった他学年の子の話が出ることも多いのだとか。卒業以降にもつながる絆が、たてわり活動を通して育まれています。

人間力を養うために欠かせない宿泊行事

同校では学年ごとに宿泊行事を設定。1年生は河内長野にある学園のセミナーハウス、2年生は琵琶湖での湖畔学舎、3・4年生は吉野と丹波篠山へ交互に、5・6年生は琵琶湖とハチ高原へ交互に行きます。

3年生以上の宿泊行事では、2学年ごとのたてわり班ですべての活動を実施。毎晩、必ず班会を行い、各自が一日の反省と明日がんばることをまとめ、最終日には行事を通して何をがんばれたかをまとめ、皆で集まってもう一度振り返ります。「振り返りを重ねることで、チーム力が高まることはもちろん、自分自身を見つめる機会にもなっています」と河岡先生。

「宿泊行事から帰ってきた子どもたちは、静かにしなくてはいけない時は行事前よりもすぐに静かになりますし、次の行動に移るのも早くなります。ちゃんと人の話を聞かないといけない、約束も守らなくてはいけないという意識が強く出ていると感じます」

宿泊行事の意義について、次のように河岡先生は続けます。

「山を歩くなど体力面でしんどかったり、皆で与えられた課題に取り組んだりと、普段のたてわり活動と比べて活動内容が高度になっています。また朝から晩までずっと一緒ですので、自分の好き勝手ばかり言えないなと肌で感じることも多いので、それが自律心を鍛えていくことにもつながっています。人間力を上げるのにも、この宿泊行事は大切なものです」

子どもたちだけで作り上げていく経験を大切に進めるスタンツ発表

同校では、2022年5月に3年ぶりに6年生の修学旅行を実施することができました。行き先は、白川郷から高山、木曽福島、瀬戸など。毎年、どこに行くかは「日本で生活しているので、日本の良さが分かる場所や日本の歴史的なものに触れられる所」という基準で選んでいるとのこと。

修学旅行や林間・湖畔学舎では、班ごとに考えたスタンツを発表するのが恒例です。たとえば、皆で歌いながら自分たちで考えた振り付けのダンスをしたり、クイズ大会であったりと、「どうやったら楽しいことを提供できるか」を考えて、どの班も熱心に準備に取り組むそうです。河岡先生は、「このスタンツのために、事前にかなりの時間を使います。コミュニケーションの中から物を作り上げて発表していくことは、教科の学びで得られるのとはまた違った表現力につながっています」と話します。

このスタンツの準備には、教員はなるべく口出ししないようにしていると河岡先生は続けます。

「人の命に関わるようなことや人を傷つけるようなものでない限りは、温かく見守っています。自分たちで作り上げていく経験が子どもたちには大切です。本校の場合、しっかりとした学力としつけを身につけることを重視していますので、ともすれば子どもたちは大人から色々なことをやらされてばかりいるのではと感じられる方もいるかもしれません。しかし、指示されたことをできるだけの人間ではだめです。子どもたちだけで考えていく場面もしっかりと提供していきます」

2022年度の修学旅行では密を避けるため、スタンツの発表は実施できませんでしたが、7月にある林間・湖畔学舎では状況を見て復活させたいと考えていると河岡先生は話します。

近隣スイミングスクールとの提携のもと実施する泳力別水泳教室

同校では、水泳教室を近隣のスイミングスクールに委託。5月末から約1か月間、スイミング・インストラクターの指導による1コマ1時間のレッスンを週数回、設定しています。このレッスンは泳力別に7~8つのコースに分かれて指導を受け、泳力が上がれば、上のコースに変わるという仕組みで行われます。

「上のコースになれば、4泳法やタイム測定なども行い、どんどん泳いでもらいます。反対に泳げない子の場合は、きちんと足がつくように台で調整したりヘルパーなども利用したりしながら、顔つけから丁寧に指導してもらえるので、一般的な学校での水泳授業より効果は高いと考えています」

水泳教室も、この2年間はコロナ禍のため中止していましたが、2022年度は感染症対策を徹底した上で再開。移動のバスの中でおしゃべりをしないことはもちろん、マスクもシャワーを浴びる手前で外しているそうです。子どもたちも今は意識して指導中もしゃべっていないようだと河岡先生。

「やはり水泳は全身運動として優れた運動です。また、教えてもらわなければ習得できない運動でもあります。例年は服を着たままで泳ぐ着衣泳も実施し、子どもたちには服を着ていると動きづらいことや服をふくらませて空気を入れることで身体を浮きやすくなることを経験してもらっています。今年は感染症対策の一環として実施しませんが、来年以降様子を見て再開できればと考えています」

まとめ

同校では、今回ご紹介したたてわり活動での班決めや毎年のクラス替えでは、細心の注意を払ってメンバーを決めているそうです。

「たてわり活動での班を決めるときも、子どもたちの性格のバランスや友達関係など、全て細かくチェックをし、複数の教員の目で何度も確認して、最終的な班を決めます。クラス替えも、担任団・管理職と複数のフィルターを通して、今年はこの編成が一番良いと納得できるまで調整します」

そう話す河岡先生からは、子どもたちに楽しい学校生活を送ってほしいという気持ちのもと、全教員で学級運営に携わっている様子が伝わってきます。このようにクラス替え前に各教員が子どもたちの様子を把握できていることは、新学期開始後に万一トラブルが起こった場合の速やかな対応にもつながります。

子どもたちが安心して通える環境を真摯に追い求める姿は、「城南の情熱教育」の証のひとつ。この教育を通して、子どもたちは21世紀をたくましく生き抜いていくための力を大いに伸ばしてくれるのだろうと感じる取材でした。

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