取材レポート

はつしば学園小学校

留学生と一緒にチャレンジした3年ぶりの修学旅行。「伝える」を重視して進化する教育プログラム。

児童一人ひとりの個性を尊重し、「きく(聴く・訊く)」姿勢を大切に学びを展開してきたはつしば学園小学校では、コロナ禍を超えて新たなチャレンジがスタートしています。はつしば学園小学校は、英語を第二言語とする国で子どもたちが学ぶプログラム「GrapeSEED」を、関西私立小学校では初めて導入するなど、英語教育に力を入れていることで知られています。今年度は、実践できる英語力を伸ばせるようカリキュラムがバージョンアップしました。またプログラミング教育は、より想像力・創造力を育む包括的なカリキュラムとして、「テクノロジー教育」と名称が変わり、新たな学びに進化しました。従来からの「きく(聴く・訊く)」姿勢が学校文化として定着し、違いを認め合うなかで「つたえる(伝える)」ことを大切にした学びへと進化しています。

今回はコロナ禍の影響で3年ぶりに実施された6年生の修学旅行や、英語やテクノロジー教育プログラムを中心に、加藤武志校長先生にお話をうかがいました。

はつしば学園小学校校長 加藤武志先生のお話
 加藤武志校長先生

加藤武志校長先生

はつしば学園小学校校長 加藤武志先生のお話

留学生と一緒にフィールドワークを実施した長崎・修学旅行

今回のインタビューでは、加藤校長先生が開口一番に、4月に3年ぶりに実施できた6年生の修学旅行について、とびきりの笑顔で話してくださいました。

「コロナ禍以前は、本校の系列大学にあたるAPU(立命館アジア太平洋大学)がある大分県で修学旅行を行っていました。それをさらにバージョンアップしたいと国際都市・長崎に変更を決め、下見や企画などの準備をすすめていた矢先、新型コロナウィルスの影響で、修学旅行そのものが中止に。この4月、ようやく念願がかないました。

長崎での修学旅行の目玉は、APUの留学生に協力を仰ぎ、オールイングリッシュで交流するフィールドワークです。1チーム5名の児童+留学生1名の15グループにわけ、国際都市を体感すること、また平和の尊さを学ぶことをテーマとして、1日観光に出かけました。グラバー園やめがね橋など、出発前にそれぞれのチームで決めたルートを、路面電車や徒歩で留学生と一緒に行動しました。

2日目に実施したフィールドワークの前日、到着した日の夕方には、自分のグループを担当する留学生とお互いに自己紹介やゲームなどのアイスブレーキングありました。留学生から「No Japanese,all English」「Don‘t be shy」と声をかけてもらい、一気に打ち解けた雰囲気になりました。

またフィールドワークが終わった日は、夕食前にそれぞれのチームが訪問したところをポスターにまとめて発表する報告会を実施。こちらもプレゼンは英語で実施しました。これは即興でないとできませんから、どのように話せばよいか、留学生に指導してもらいながら、短い時間で準備を行いました。全員がすらすらと話せるわけではありませんが、それぞれが自分たちの経験を伝えようとする姿勢、また発表を聴こうとする姿勢に、6年生らしい成長を感じることができました。

最終日は福岡の太宰府天満宮へ立ち寄り、全員で合格祈願のためのご祈祷を受けて帰ってきました。修学旅行が終われば、それぞれの進路へ向けた受験生としてのチャレンジがスタートします。全員で目標達成に向けて、気持ちを新たにできたと思います。

5年生から準備を進めてきた修学旅行でしたが、子どもたちにとっては、生涯の思い出になる充実した2泊3日になったと思います。また私たち教員も、コロナ禍を経て、学校の外での学びの大切さを再確認することができました」(加藤校長先生)

英語の実践をテーマにした修学旅行は、はつしば学園小学校が長く続けてきたプログラムとのこと。コロナ禍のトンネルを抜け、新たな英語の実践プログラムにチャレンジでき、6年間の成長の証が見られたとうれしそうにお話してくださいました。

4技能をバランスよく、実践力を養うはつしば学園小学校英語プログラム

学校創立より、英語教育に力を入れているはつしば学園小学校では、英語を第二言語とする国で使われているプログラム「GrapeSEED」を2018年に導入しています。また英語は教室ではなく専用の部屋が用意されており、ネイティブの教師がオールイングリッシュで授業を実施。4技能をバランスよく身につけられるようカリキュラムが構成されています。

インターナショナル幼稚園出身の児童と、小学校から英語教育をスタートする児童では、小学校入学時に習熟度に差があることを踏まえ、低学年はクラスを分けて授業を実施。高学年では全体で英語スキルが向上できるよう、カリキュラムは年々ブラッシュアップされています。また家庭学習アプリも導入し、学校と同じ学びを家庭でも継続できる環境が整っています。

「小学校英語においては、一般的には会話が中心で、まずは「聴く・話す」のスキルを身につけるという認識がありますが、本校のGrapeSEEDの場合は「読む・書く」がバランスよくカリキュラムとして入っています。導入以前は、本校でもネイティブの先生が話していることはわかりますし、発音もとてもきれいでしたが、一方で単語のつづりがわからない児童もいました。GrapeSEEDは「読む・書く」がカリキュラムとして確立されているため、4技能をバランスよく身につけられるところがメリットです。またそれが作文能力につながります。「読めて・書ける」ところまで導くことで、自分の思いを伝えられる実践的な英語能力が身につけられるのが本校の英語教育だと考えています」(加藤校長先生)

3年生から英検受験にもチャレンジしているはつしば学園小学校では、3級以上の取得者は80名を超え、2級取得者もいるとのこと。6年生で準2級取得を目標とし、英検対策を学校としてサポートして、全体のレベルをあげることを目指しています。

想像力・創造力を育む「テクノロジー教育」

今年度より、プログラミング教育はテクノロジー教育と定義されました。今までに実践してきたタブレットやパソコンの基本的な操作スキル、またプログラミング的思考、論理的な思考力、みんなで作り出す協働などを包括し、一歩前へ進んだテクノロジー教育と位置付けられています。

「昨年より、3年生以上にiPadを導入しました。Wi-Fi環境が整い、LTE方式にバージョンアップしたため、子どもたちはタブレットの電源をいれれば、ネット環境に学校でも家庭でもすぐにつながります。あっという間にタブレットをノートがわり、辞書がわりに使えるようになりました。

今は専用アプリで、3DCG(3次元コンピュータグラフィック)に挑戦中。子どもたちはマイルームづくりを行っています。パーツの作り方だけは教師が指導しますが、あとはそれぞれに創作します。30人の児童がいれば、みごとに30通りの個性的なお部屋ができます。子どもたちも見せ合ったり、アドバイスしたりしながら、切磋琢磨している様子がうかがえます。従来のプログラミング教材より試行錯誤が可能となり、また創造性が非常に高く、何より夢中になって取り組んでいます。子どもは飲み込みが早く、こちらが驚くほどです。もっとやりたいという気持ちが、子どもたちの背中を押してくれるように感じますね。また大人も使うアプリのため、それを子どもの時から使えることは、未来につながるということ。子どもたちには自分の可能性を感じてもらいたいですね」(加藤校長先生)

学校の外でのびのびと学ぶ充実した宿泊行事

はつしば学園小学校では小学校1年生から、すべての学年で宿泊行事を行っています。コロナ禍を経て、ようやく実施できると、先生方も楽しみにされている様子でした。

「1年生は校内で宿泊を行います。まずは慣れた場所でいつもと違う体験を行うこと。また災害時を想定し、学校でひと晩を過ごす体験を実施する防災教育の面もあります。2年生は信貴山での自然体験、3年生は宿坊での修練学習です。コロナ前は高野山で実施されていましたが、今年は信貴山のお寺にて実施されます。4年生はハチ高原で、山登りや飯ごう炊飯、川遊びなどの本格的な林間学校へ。5年生は海。夕日が浦での臨海学校へ行きます。そして最後が6年生の修学旅行ですね。高学年ともなると慣れたもので、自分のことは自分でできるようになります。1年毎の子どもたちの成長を強く感じられるのが宿泊行事ですね」(加藤校長先生)

取材を終えて

今回は授業が行われている平日に取材に伺いましたが、休み時間にきれいな琴の音が響いてきました。練習をしていたのは5年生です。校長先生に案内していただき、練習を拝見しましたが、オープンスクールでのお披露目に向けて、熱心に取り組んでいました。

はつしば学園小学校では英語教育に力を入れる一方で、日本文化を学ぶことにも力を入れられているとのこと。アイデンティティを持ち、自分の思いを伝えることにつながる活動だと感じました。日本人らしい表現をひとつでも身につけることで、将来、世界で活躍する自分の自信につながるのではないかと感じました。

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