取材レポート

はつしば学園小学校

授業動画配信とZoomでの双方向授業で、 休校中も子ども達とのつながりを築く。 2021年度から新プログラミング教育も始動。

2003年の創立以来、実践的なICT教育や英語の取り組みを通して、将来につながる学びを提供してきたはつしば学園小学校。進学面においても、系列中学校(初芝立命館、初芝橋本、初芝富田林)への内部進学を保持したまま、外部校に挑戦できる環境が整っています。
今回は、新型コロナウィルス感染症対策のための臨時休校中の取り組みと、2018年度に導入された英語カリキュラム『GrapeSEED』を始めとする英語教育、新しいICT教育の展開について、加藤武志校長先生に話をうかがいました。

はつしば学園小学校校長 加藤武志先生のお話
 加藤武志校長先生

加藤武志校長先生

はつしば学園小学校校長 加藤武志先生のお話

オンデマンド型と双方向型。2つのオンライン学習で子どもとのつながりを築く

全国一斉休校措置が継続中だった2020年4月。新年度を迎えるにあたり、はつしば学園小学校では、まず担任紹介動画を保護者宛に配信し、オンライン上で学級開きを実施しました。その後、順次、授業動画をオンデマンド型で配信する一方、家庭のwi-fi環境や授業用に使える端末があるかどうかを確認するアンケートを実施。その結果、各家庭の環境が整っていることが分かり、Zoomでの双方向授業の実施を決定。双方向授業は、4月末のテスト配信を経て、5月の連休明けから全学年で進められました。

同校がオンライン学習を行う上で大切にしたことは「教師と子どものつながりを築くこと」。そのため、低学年の双方向授業では朝の会や学級会を主に行うなど、学級作りに力を入れたそうです。

「低学年、特に1年生は、各幼稚園から集まってきた知らない者同士が、顔を合せることすら出来ないままに5月を迎えました。我々教員が一人ひとりの子どもを大事に思っていることを伝えて、つながりを築かなければと考えたのです。双方向授業では、通常、学校に来た時に話すようなこと、例えば『朝ご飯は何を食べた?』などの会話を大切に進めました。また授業動画についても、子ども達はひとりで見るわけですから、教員が子ども達とやりとりをしているような言葉がけをすることで、子ども達が先生に呼びかけられていると感じられるような動画作りを心がけました。動画を子どもの横でご覧になっていた保護者も多かったようです。画面を通して新担任の様子を知ることができ、とても安心しましたという言葉もたくさんいただきました」(加藤校長先生)

学校再開後の分散登校では、どの学年もほぼ欠席者がおらず、特に心配していた1年生の出席率は100%。これも、授業動画配信と双方向授業で、子ども達と保護者の不安を払拭できた結果ではないかと加藤校長先生は考えています。

『GrapeSEED』で読む力・書く力をアップし、英検取得率8割以上を達成

はつしば学園小学校で導入している英語カリキュラム『GrapeSEED』は、英語を第二言語として学ぶ子ども達のために作られた教材です。「英語で聞いて、英語で考え、英語で伝える」をコンセプトに、「聞く・話す・読む・書く」の4技能をバランス良く身につけることを目標とし、カリキュラムが組まれています。

同校では学校創立当初から英語教育に力を入れてきましたが『GrapeSEED』を導入したことでより「読む力と書く力を強化することができました」と加藤校長先生。

「母語である日本語を習得する過程でも、子どもは絵本を読むことで言葉を認知します。それと同じ考えのもと、『GrapeSEED』では、学年に応じたリーディングブックを使って英語力を育みます。リーディングブックには1年生のスタート時から取り組み、1年生の終盤では書くことも始めます。『読む・書く』という力が低学年の内から、数段伸びてきていると実感しています」

2018年度の導入時から『GrapeSEED』で英語を学んできた子ども達は現在4年生。2020年10月(当時は3年生)に全員参加で受験した英検では、3年生79名の内、65名(取得率82.3%)が資格を取得することができました。 準2級にも7名が合格しました。

「8割以上の子が英検資格取得と『GrapeSEED』の効果は充分出てきたかなと思います。成績を分析すると、今回資格が取得できなかった子も、筆記とリスニングの2領域の内、リスニング領域はほとんど満点でした。一方、ライティング面では、単語の覚えが不十分な子や回答の仕方に不慣れだった子も見られ、課題が明確に見えてきました。課題に適切に対応しつつ、全員が英検取得できるようにと考えています」(加藤校長先生)

留学生との丸2日間の交流を通して、英語に向かう意欲を養う

続けて、加藤校長先生は、「英語を学ぶ意味は『単語を覚えた』『テストが出来た』ということだけではなく、やっぱり人と人の交流ができることだと思うんですね。英語を使うことで人とつながれるんだ、海外の人ともコミュニケーションが取れるんだという経験につながっていかなければ。今学んだことが、将来の学びにつながらないと意味がありません。英語を学ぶことで、中学・高校やさらに先の将来でコミュニケーションがとれたら、もっと世界が広がるというのが、我々の目指すところです」と語ります。

そのような考えのもとに進められるはつしば学園小学校の英語教育。その集大成として行われる行事が6年生の修学旅行です。修学旅行では、子ども達は立命館アジア太平洋大学の留学生と丸2日間、朝から夜まで一緒に過ごします。日本語を一切しゃべらない留学生と子ども達とのやりとりは、すべて英語で行われるとのこと。子ども達が書道や着付け、折り紙などの日本文化を英語で留学生に教えるほか、子ども達もアジア各国から来ている留学生から出身国の文化を教えてもらうなどします。この2日間を経て、子ども達は大きく変わるそうです。

「生の経験をすることで、ひとつは自信を得るということ。そして、もうひとつは失敗や悔しさえを経験するということです。『なかなか分からんかった』『うまく話せなかった』。それも必要な悔しさだと思っています。子ども達は修学旅行での悔しさをバネにして、中学・高校では英語をもっとがんばろうと思うようです。20歳になった卒業生たちが集まる『成人の集い』で、多くの子から中学・高校で留学やホームステイを経験したとも聞きました」(加藤校長先生)

生きた英語をさらに発展的にしたいという考えのもと、2021年度の長崎修学旅行では、従来のプログラムに加え、フィールドワークを実施する予定だそうです。

「留学生と子ども達のみの班行動で長崎市内を回り、街中で実際に見たものを紹介するなどのやりとりをしてもらおうと思います。『話せた』『言ってることが分かった』『通じた』という3つを少しでも多く経験して、中学校へ向かってほしいと思います」(加藤校長先生)

日本文化教育を通して、日本人としての教養を高める

はつしば学園小学校では、国際理解教育の一環として、和太鼓の演奏や茶道など、日本文化を学ぶ活動にも力を入れています。2019年度からは新たな学びとして、琴を導入しました。1人が1張を使えるようにと30張を揃え、3年生以上が指導を受けています。今後は音楽発表会での発表のほか、留学生へのおもてなしとして、修学旅行時も琴を九州に持って行って演奏することを考えているそうです。

「外国の人たちに出会った時に『日本には和楽器で琴というのがあります』というのは誰でも言えます。『琴を弾いたことがあります。こんな曲が出来ます』と言える人はなかなかいないのではないでしょうか。実体験を伴って話せるというのは、大きなアドバンテージになると思います」と加藤校長先生は話します。

iPad導入で、論理的な思考力と創造性を育む

3年生以上で実施している端末の1人1台制。2021年度からは端末をWindowsモデルからiPadに変更し、iOSの充実したアプリを活用する新しいプログラミング教育の取り組みを予定しています。

「動画編集を学ぶほか、3Dプリンターを導入し、自分で考えた物を立体的に想像して作り上げる授業などを考えています。論理的な思考力に加えて、創造性が必要となってきます。子どもによって出来上がるものが違うはずで、それがやる気を育み、子ども達も前のめりになって学習してくれるのではないかと期待しているところです。さらに、大人になっても使える実用的な技術を、実際に使いながら学ぶというのも大きなポイント。未来を見据えた、我々の新しい挑戦です」(加藤校長先生)

「入学して良かった」と回答した児童が100%に

毎年行っている児童アンケートに、「私ははつしば学園小学校に入学して良かった」という項目があります。子ども達は、「よく当てはまる」「やや当てはまる」「やや当てはまらない」「当てはまらない」の4つから、自分の気持ちに一番近い選択肢を選んで回答します。12月に6年生に実施したところ、「よく当てはまる」「やや当てはまる」という肯定的な回答を選択した児童の割合は、なんと100%。6年生全員が同校に入学して良かったと感じているのです。アンケートを取るようになってから、100%になったのは初めてとのこと。この結果が何よりも嬉しかったと加藤校長先生は笑顔で話します。

「今年の6年生は、5年生の3月から3ヶ月間休校となり、最高学年になるというタイミングを失い、さらに学力面でも決して万全な状態でスタートを切れたといえません。その上、運動会も音楽会もできず、6年生が活躍する場面もなく、やることは中学受験に向けての勉強ばっかりです。学校が面白くないという回答が出ても仕方がないと覚悟していたのですが、100%が出たという結果は本当に嬉しかったですね。同じ質問の肯定的な回答が4年生の時は96%、5年生の時は97%だったのが、最終学年では100%と上り調子となりました。担任団をはじめ、学校と子ども達がつながれて、皆が本校に入学して良かったという気持ちを持って送り出せたというのは、何より嬉しいことです」

まとめ

今回の取材では、『GrapeSEED』や実践的なICT教育など新しい取り組みについてお伺いしましたが、どの取り組みでも「学びを子ども達の将来につなげること」を大切にしていることが伝わってきました。はつしば学園小学校の教育の根底に、教員が一人ひとりの子どもを大切に思う気持ちがあるからこそ、子ども達も教員を信じ、学びを着実に自分のものとしていけるのでしょう。2021年度から始まる新プログラミング教育にも期待が高まります。

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