取材レポート

帝塚山小学校

ニュージーランドとZoomでつながるオンラインホームステイ。コロナ禍でも進む国際理解教育

近鉄奈良学園前駅デッキ直結と、安全でアクセス至便な立地にある帝塚山小学校。
子ども達の生きる力=『根っこ』を育てることを大切に、英語教育をはじめ、外部企業と連携した本格的なプログラミング教育など未来を見据えた教育を展開してきました。

今回の取材では、国内の小学校では初となるオンラインを活用したニュージーランド・ホームステイや充実した進学指導、オリジナルノートの作成について、校長の野村至弘先生に話をうかがいました。

帝塚山小学校校長 野村至弘先生のお話
野村至弘校長先生

野村至弘校長先生

帝塚山小学校校長 野村至弘先生のお話

国内留学で英語へのモチベーションをアップ

帝塚山小学校では、創立当時より英語を全学年で教科として位置付け、教育を展開してきました。現在は、週2時間の授業に加え、毎朝15分のモジュール学習を実施。歌や映像を取り入れることで「楽しみながら英語を学ぶ」を実践しています。

同校の英語教育で大きな成果を上げている行事が、毎年行われる国内留学体験プログラムです。3~5年生を対象とし「英語で学ぶ」をテーマに、子ども達は世界各国から集うネイティブ講師より英語で算数や体育を学びます。この経験を通して、子ども達の英語に対するモチベーションが変わると野村先生は話します。

「英語の力に関しては、一回の体験でそんなに変わるものではないです。ただ、英語に対してのモチベーションが、すごく変わりますね。外国人の先生を目の前に、自分が知っている語彙や文法を駆使して、自分の思いを伝えようと子ども達はします。食事も一緒に取りますから、その最中の雑談でも自分の思っていることを全部伝えようと頑張ります。その中で、まず子ども達がびっくりすることは『普段学校でやっている英語が通じるぞ』ということなんですね。次に感じることは『もっとしゃべりたい』。そして『それなら勉強しないといけないな』と思うようです。国内留学以降、朝の会でのモジュール学習を始め、英語への取り組みが変わります」

教員も手応えを感じていた国内留学体験プログラムですが、2020年度はコロナ禍のため、実施を断念することに。しかし、それに変わることを出来ないかと色々模索し、たどり着いたのがニュージーランド・オンラインホームステイです。
英語授業

英語授業

英語授業

英語授業

国内留学

国内留学

国内小学校初。ニュージーランドとZoomでつながるオンラインホームステイ

「学校訪問」「ホームステイ体験」「観光ツアー」の3つのプログラムが用意されたオンラインホームステイ。学校訪問では、オークランドにあるエドモントン小学校の子ども達と英語で交流しました。帝塚山小学校の子ども達からはそれぞれの学年の歌や合奏、ソーラン節などを披露。現地小学校の子ども達からは学校ツアーのほか、マオリの民族舞踊・ハカの実演などが返されました。
ホームステイ体験では、普段現地でホームステイを引き受けているホストファミリーの家にカメラを持ち込ませてもらい、家の中を案内してもらうなどしました。子ども達はホストファミリーから説明を聞いたり、疑問に思ったことを質問したりするなど、英語でのやりとりを楽しんだそうです。
観光ツアーでは、事前に撮影した映像なども交えながら、スカイ・タワーなど現地の観光名所をツアーガイドが案内してくれたそうです。
このオンラインホームステイについて、野村先生はこのように述べます。

「もちろん、実際現地に行き、直接外国の方とお話しできるのがベストなんですが、それができない情勢の中で、このオンラインホームステイは画期的なやり方だったんじゃないかなと思います。バーチャルですが、自分が実際に学校やそのご家庭に行ったかのような体験ができました。普段行っている国内留学まではいかなくても、それに近いような、これからの英語学習に対しての動機付けになったんではないかなと思いますね。子どもの感想としては、ニュージーランドという国に関して知らないことが多かったと。今回の体験を新鮮に感じてくれたみたいです。2021年度は国内留学に戻す予定ですが、ただ情勢がどうなるか分かりません。万が一、国内留学できないとなれば、オンラインホームステイに切替えて行おうと考えています」
オンラインホームステイ

オンラインホームステイ

オンラインホームステイ

オンラインホームステイ

オンラインホームステイ

オンラインホームステイ

内部進学にも外部進学にも、手厚い指導を実施

帝塚山小学校では、児童の約半数が内部進学推薦制度を使って、帝塚山中学校に進学します。この内部進学推薦制度を運用するにあたって、野村先生は「一番大切にしていることは、子どもに不要な負担を掛けないことです。難問奇問にチャレンジするのではなく、小学生として大事な普段の学びをしっかりと勉強すれば評価されるような基準のもとに行うことを目指しています」と話します。

内部進学には、7月と10月の2回実施されるテストで合格点を取る必要があります。内部進学を目指す子ども達が安心してテストに臨めるよう6年生では補習を実施。補習は6年生の4月からスタートし、11月半ばまで週2回、放課後に行われます。
子ども達は、同校のオリジナル問題集を自分のペースで進め、分からない問題があれば教室内に待機している教員にいつでも質問できます。質問には、担任2名と理科の専門教員、補助教員の最低でも4名の教員が対応します。

また、帝塚山小学校では、近年増加している外部進学のための進路指導にも力を入れています。外部進学を希望する家庭に正確な情報を提供したいと、複数の私立中学校に教員が出向いて話を聞いているそうです。教育の内容を確認し、得た情報を子ども達や保護者に伝えるほか「先方の中学校と連携を取って、進路指導に当たれるように対応を整えたい」と野村校長先生。入手した学校パンフレットなどの資料は、誰でも見られるように進路指導コーナーに置かれており、授業参観や個人面談の前後に立ち寄る保護者も多いそうです。外部進学指導の充実とともに、保護者からの受験相談も増えてきました。

外部進学指導について「受験相談については、内部進学テストや5年生の実力テストは全児童が受けていますので、そのデータが学校にはあります。そのデータと今までの卒業した子たちの進学先と見比べて、この子やったらこの学校行けるんじゃないか、この学校が合っているんじゃないかというアドバイスをしています。学力面のフォローについては、もちろん外部進学希望者も、内部進学向けの補習に参加し、質問をすることが可能です。家で取り組んだ過去問の添削指導にも対応しています。今後はより一層外部進学へのフォローにも力を入れていきたいと考えています」と野村先生は話します。
教室補習

教室補習

補習

補習

オリジナルノートで、より充実した『おしらせ』を目指す

創立以来、続けられてきた帝塚山小学校独自の学習法が『おしらせ』です。『おしらせ』は、自分の身近なものについて調べ、それを朝の会などで発表する活動で、子ども達は『おしらせ』を通して「話す力」「聞く力」「発見力」「観察力」などを育んできました。当初『おしらせ』は季節や自然に関することを発表するのみでしたが、5年ほど前からは、自然だけではなく自分が興味を持ったことについて調べ、自学自習用のノートにまとめるという形に変わってきました。

これまで自学自習用のノートは、それぞれの担任が工夫を凝らし、毎年色々な体裁で作ってきました。しかし、2021年度から今まで以上に『おしらせ』に力を入れようと、大阪のノート製造会社『大栗紙工』とタッグを組んで、学校オリジナルの自学自習用ノート『帝塚山ノート』を作成しました。『帝塚山ノート』への思いを、野村先生はこう語ります。

「今は色んな情報が手軽に集まる時代です。だからこそ、その情報をいかに自分で選んで、自分の考えを組み立て、発信していくかということが非常に大事です。自分の考えを組み立てるには、まず書かなければいけません。そこで、特に『書く』という所に力を入れようと考えました。しかし、無理矢理やらされるのでは意味がありません。自分から進んで書くことに取り組んでほしいという思いがあり、今回子ども達が書きたくなる自学自習用のノートを作ってみようということになったんですね」

そのような思いのもとに作られた『帝塚山ノート』。表紙には、帝塚山小学校の校舎が描かれ、学校の雰囲気をそのまま写したかのような温もりあふれる佇まいです。中面も、中紙の色はペールイエロー、罫線や網掛けは淡いグレーと子ども達の目にも優しい色合いでまとめられています。

中面の左ページはフリースペース。高学年用は方眼の印が入った仕様になっています。子ども達は絵を描く・資料を貼る・グラフを描くなど、目的に応じて自由に使うことができます。
右ページは、文字を書くスペース。低学年は無地と網掛けの四角を、中・高学年は無地と網掛けの行を交互に並べています。網掛けには、書く位置をはっきりと認識させるという効果があり、それが『文字を書く』という動作への集中につながるそうです。中・高学年では行の幅が異なるほか、低学年の場合、文字がうまく書けない最初の内は、四角4つを使って1文字を書くなど、発達段階に応じた使い方を考えています。
A4サイズの『帝塚山ノート』には、『大栗紙工』が発達障害者支援団体と共に作った、誰もが使いやすいユニバーサルデザインのノート『mahora』のノウハウが随所に生かされています。

「表紙の色や手触り、紙の質など、1年間、何度も何度も試行錯誤してこの『帝塚山ノート』に行き着きました。色々な教員のアイデアが詰まっています。このノートで、自分で気がついたこと、疑問に思ったことをどんどん書いて、表現していくことを繰り返しながら、最終的に6年生での卒業研究につなげていきたいと考えています。どれくらい活用してくれるか楽しみです」(野村先生)
おしらせ学習

おしらせ学習

おしらせ学習

おしらせ学習

『帝塚山ノート』

『帝塚山ノート』

『帝塚山ノート』

『帝塚山ノート』

まとめ

外部企業と連携して行われる4年生のプログラミング教育や今回取材したオンラインホームステイなど、先進的な取り組みで知られる帝塚山小学校。しかし、『おしらせ』の充実を考えた時にたどり着いたのは、昔ながらのノートでした。
このことについて、野村校長先生は、「ICTを使って、意見をまとめてウェブに載せるということも行いますが、それをする前に、人間として本当に大事な『手で書く』という所をもう一度見直す必要があるんじゃないかと考えました」と話します。

新しい教育に意欲的に取り組みつつ、人間のベースとなる活動の大切さもしっかりと認識し、それを鍛えていきたいという学校側の姿勢が、野村校長先生の言葉には表れています。新しい教育・従来からの教育、どちらかに偏ることなく、両者の良い所を取り入れ、実践していく同校の教育が、子ども達の『根っこ』をしっかりと育み、様々な可能性を伸ばして行くのだと感じた取材でした。

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TEL:0742-41-9624

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