取材レポート

帝塚山小学校

「2030年代に生きる子どもたちに求められる力」を育てる

帝塚山小学校では、子どもの10年後、20年後を見据えて次々と新しい教育を推進しています。近未来に求められる力を養い、一人ひとりの可能性を伸ばす同校の教育について、お話を聞きました。

帝塚山小学校 校長 野村 至弘 先生のお話
校長 野村 至弘 先生

校長 野村 至弘 先生

2030年代の社会とは

本校では、「2030年代に生きる子どもたちに求められる力」を念頭に、子どもの10年後、20年後を見据えた教育を行っています。そして、一人ひとりの可能性を伸ばす教育に取り組んでいます。

2030年代はどんな社会になっているでしょう。グローバル化がさらに進んでいます。AIの実用化も広まります。ある研究によると、現在の職業の半分は機械化される。また、半分以上は新しい職業に代わると予測されています。機械化される職業は、事務や経理、電車やバスの運転手、接客など幅広い範囲に及ぶ見込みです。

近い将来求められる力とは、これまでの知識・技術にもとづいた情報処理能力から、思考力や判断力、表現力を駆使した情報編集力へと大きくシフトします。そして、創造性やイノベーション力、意欲、共感力、コミュニケーション力など総合的な人間力も重要になります。コミュニケーションツールとしての英語力も必要です。

これまでの教育は情報処理能力の育成が中心でした。また、日本の青少年は、他国と比べて自己肯定感があまり養われていないことが世界的な調査でわかっています。いま学校に求められるのは、新しい時代を見越した教育です。そして、一人ひとりのよさや可能性を伸ばす教育が大切なのです。

創立以来の英語教育

本校では英語教育やプログラミング教育をはじめ、子どもの将来に向けた様々な教育を積極的に推進しています。また、その学び方として、子どもが主体となって自ら考え、友だちと協力して課題を解決するアクティブラーニングを取り入れています。さらに、本校が特に意識するのは、「社会に開かれた教育」です。学校を開き、外の世界の人たちと連携して、より専門的で最先端の教育を行っています。

まず、英語教育について、本校は創立以来、全学年で英語の授業を行ってきた実績があります。現在は週2回の授業で、1~3年生は少人数制です。加えて朝の会でのモジュール学習や、1年生から全員参加の英語劇発表会、英検やスピーチコンテストなど、ネイティブ教員と日本人教員が中心となり、学校を挙げて力を入れています。

さらに、国内留学体験も行います。海外で実施するよりも低額で、しかも安全です。3~5年生全員参加でレイクフォレストリゾート(京都府)にて、サイエンスや算数、ダンスなどをオールイングリッシュで教わったり、異文化交流を体験したりと、充実したプログラムで楽しく効果的に学びます。
こうした独自の手厚い英語教育により、子どもたちは確実に運用力を高め、外部のコンテストでも多くの子どもが優秀な成績を収めています。公立小学校では2020年度より5・6年生の「英語」が必修となりますが、本校は私学として遥か先を行っています。

ロボットプログラミング、ボーカロイド

プログラミング教育も、全国の小学校に先駆けて2016年度より導入しました。本校では総合学習の枠組みで1年生から「情報」の授業を設置しており、プログラミングもこの授業で1年生より学び始め、ロボットを動かします。4年生は帝塚山幼稚園の園児にプログラミングを教えるという、縦のつながりを生かした学習も行います。5・6年生は「火星の石をゲットせよ」といった課題でロボットのプログラミングにチャレンジするなど、より発展的な学習を行っています。

「ボーカロイド」を活用して作曲にチャレンジするという音楽教育も、全国の小学校に先駆けて2017年度よりスタートしています。ボーカロイドとはヤマハが開発したコンピュータによる歌声合成技術です。ピアノが弾けなくても、ICTを活用してだれでも創作活動ができ、男子・女子ともに意欲的に楽しく取り組んでいます。

小学校でのプログラミング教育の必修化は世界的に広まっていますが、日本の公立小学校はようやく2020年度より必修となります。「これからはコンピュータゲームで遊ぶだけでなく、それを創る側の人になろう」――私は子どもや保護者の皆さんによくそう呼びかけます。本校は世界の動向にも目を向けて教育を行います。

省庁や銀行と連携して金融教育

「社会に開かれた教育」として、産業界・公官庁・民間(地域住民やNPO)・学校(中高大など教育機関)との連携を幅広く進めます。英語やプログラミングも企業などと連携し、最新の教育を行っています。

また、日本の小学校ではあまり行ってこなかった金融や財政、納税に関する教育も、これからはとても大切です。本校では金融庁や銀行、奈良税務署などより人を招いて授業を行っています。たとえば、3年生の金融教育として、金融庁とりそな銀行の人を講師に、自分たちでレストラン経営するというアクティブラーニングを行いました。利子や収益など金融のしくみについて学ぶ有意義な授業です。このほか、帝塚山大学との連携による昔の暮らし体験授業や食育の授業なども行っています。

各分野の研究者や職業人を招いての講演会も開催します。これまでシャープ株式会社のロボット工学研究者に未来のロボットについて講演してもらいました。西川リビング株式会社の方には睡眠と健康について、元日本航空キャビンアテンダントからは礼儀とマナーについて、奈良市福祉課の方には認知症について講演してもらいました。

子どもたちは外部の人と触れ合い、教わることで大きな刺激を受けます。また、これまで紹介した英語教育やプログラミング教育、金融教育など、すべてアクティブラーニングを中心に行っています。

15分間のお昼寝タイム

15分間のお昼寝は、本校がこれからやってみようとするユニークな取り組みです。昼寝は午後の学習や夜の勉強に効果的であることがわかっています。しかも、夜の睡眠の質も上がるといいます。そこで、本校でも昼食後に取り入れたいと思います。すでに西川リビングと連携し週2回試行しています。

昼寝は深い睡眠であるノンレム睡眠になってはいけないので、机に頭を伏せる姿勢で寝ます。昼寝用枕を西川リビングと児童が協同で開発し、子どもたちは自分でつくった枕でお昼寝を楽しんでいます。お昼寝タイムの本格的な導入に向けて、午前中に20分間の休み時間を入れて外で遊べるようにするなど、一日のサイクルも調整します。

アフタースクールも充実

アフタースクールは昨年2017年度より開始ました。国語・算数の個別指導、英会話、ロボット科学講座、スイミング、サッカー、体操などプログラムが充実しています。すべてプロのスタッフが教えます。さらに、お子さんを預かるスタッフとして、本校を卒業したお子さんを持つ保護者が加わっているのも特長です。“元保護者”のスタッフに、“現役保護者”の皆さんはわが子の学校生活や勉強のことなどを気軽に聞いています。保護者にとって、子育ての相談相手は教員だけでなく、いろいろな人がいたほうがいいと思います。核家族化・少子化が進む現代ではなおさらです。

本校は子どもの命と健康を守ることにも一生懸命取り組んでいます。リスクマネジメントも学校の使命です。月1回抜き打ちで行う避難訓練では、校内にバリケードを設けて子どもたちにう回路を考えさせるなど、自分で自分の命を守る力を養います。日常の登下校メールシステムや非常時の安否確認通報システムも導入しています。
子どもの健康を守るために、風邪などの予防として、企業と連携し感染病抗菌剤や抗菌ハンカチを全学年で導入しています。これにより昨年度はインフルエンザの感染を大きく抑制しました。

学校として新しい教育にチャレンジし続けること、そして一人ひとりの可能性を伸ばせるよう多様な学びを提供することがかつてなく大切です。本校は社会に開かれた学校として、未来を生きる子どもたちのために最先端・高水準・多様な教育をたゆまず実践していきます。

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