取材レポート

追手門学院小学校

思考力や探究心を育む次世代型学習の拠点となるメディアラボが2019年春に竣工

昨年度、創立130周年を迎えた追手門学院小学校は、西日本で最も長い歴史を持つ私立小学校です。「敬愛」「剛毅」「上智」を教育目標に掲げ、伝統と実績に基づく「志」を育てる教育で、未来のリーダーにふさわしい人材の育成に尽力してきました。

2020年から施行される新学習指導要領に対応した新しい学びを追究すべく、この3月にメディアラボ(東館)を竣工。1888年の設立当時から行われている英語教育をはじめ、プログラミング教育を効率的に行うための環境やアクティブラーニングを実現するためのスペース、220インチの大画面を備えたフューチャーラボなど、子どもたちの思考力や探究心を育む手助けとなる多彩なフロア展開となっています。

このメディアラボとそこで育まれる新しい学びについて、井上恵二学校長にお話をうかがいました。

追手門学院小学校 校長 井上 恵二 先生 のお話
井上 恵二 校長先生

井上 恵二 校長先生

追手門学院小学校 校長 井上 恵二 先生 のお話

ネイティブ講師との距離が近く、日常的に英語に触れられるイングリッシュゾーン

追手門学院小学校の英語教育は3つのスタイルがあります。一つ目は担任による“書く”に特化した毎日10分間のモジュール英語学習。二つ目は、『総合』授業内の外国語活動で、ネイティブと日本人講師からオールイングリッシュで外国の文化を学ぶ授業。三つ目が、教科としての『英語』で、ひとつのクラスをふたつに分け、それぞれのグループにネイティブと日本人講師がついて、少人数制で行われる“聞く”“話す”に特化した授業。3階に設けられたイングリッシュゾーンで行われるのが、この三つ目の『英語』です。
1クラス20人以下で行われ、会話や発表の機会を多く取る授業内容に対応するため、イングリッシュゾーンの3つの教室は、通常の教室よりやや狭く作られています。その分、ネイティブ講師との距離が近く、その発音をよりしっかりと聞くことができます。

また教室の外側に設けられたメディアスペースには、パソコンや国際交流の記念品、パズルなどが置かれています。休み時間に自由に触ることができ、子どもたちはパズルなどで遊びたいと、このスペースを訪れます。その際、メディアスペースの一角にある先生ラボにいる、ネイティブ教員や情報科の教員ともコミュニケーションをとる機会が生まれます。より日常的に英語やパソコンについて触れてもらいたいという想いが見事に実り、授業外でも子どもたちが集まり、教員と語り合うスペースとなっています。

循環式の構成で、調べ学習・協働学習の拠点となるアクティブスペース

2階にはアクティブラーニングの拠点として、アクティブスペースとライブラリースペースが設けられています。
協働学習や調べ学習、それに伴うプレゼンテーションが自由に行えるように、2階のアクティブスペースはひとつの大きなフリースペースとなっており、可動式の机といすを採用することで、色々なグルーピングに対応します。
中2階にあるライブラリースペースは本棚階段でつながれたスキップフロア構成で、自由な行き来が可能。約1万7千冊が揃うという充実した蔵書に加え、隣接するパソコンルームでネット検索もでき、豊富な情報資源に簡単にアクセスすることができます。また、大きな本棚階段は座って本を読むほか、2クラス分の児童が並んで座ることができるので課題発表の際の座席として使用されることもあります。

ライブラリースペースでの調べ学習の後、アクティブスペースでグループワーク&プレゼンテーションという循環式のフロア構成で、次世代型教育に対応した学習スペースとなっています。

取材時には、アクティブスペースで小学校6年生の社会の授業が行われていました。この日のテーマは「摂政」について。フローチャートで時系列に沿って学んで行くという内容で、電子黒板で教員がフローチャートの作り方から説明していきます。6人ずつのグループごとにテーブルに座り、電子黒板でのレクチャーを見ながら、手元にある自分のタブレットを操作していました。積極的にグループ内でコミュニケーションを取りながら、授業に取り組む姿が印象的でした。

児童の"ちょっと休憩したい"を叶えるリラックス・スペース

このアクティブスペースの一角には、“ごろごろゾーン”と呼ばれる小さなエリアが設けられています。靴を脱いで入るこのエリアでは、その名の通り、置いてあるクッションなどにもたれたり、床に寝そべりながら図書館の本を読むことができます。光りが差し込み、ホッとリラックスできる空間となっています。
このほか、図書館内にも棚に囲われたソファ席やちょっと座って本を読める隠れスペースが柱の陰に設けられています。こういったスペースを作った背景には、本にたくさん親しんでほしいという想いと共に、多くの学習施設を手がけてきた設計士からのアドバイスがあったそうです。

「時間に追われる今の時代、子どもたちの健全な生活には、ちょっと休憩したい・ちょっと隅に入りたいという願いを叶えるリラックスできるスペースが必要だと助言を頂きました。特に本校は厳しい学校と言われています。そんな学校生活の中で、子どもたちが子どもたち自身で息抜きができる場所が必要だと感じ、このごろごろゾーンを設けました。思った以上に、子どもたちが親しみを持って来てくれています。実際に私も寝転んでみましたが、とても気持ちがいいんですよ」(井上学校長)

大型スクリーンで実物大の大きさを実感できるフューチャーラボ

メディアラボで行われる次世代型教育を象徴する存在がフューチャーラボです。2教室あり、3階には220インチ、2階には150インチの大型スクリーンを常設。実物大で本物を子どもたちに見せてあげたいという想いから採用された設えです。例えば、社会の授業で奈良の大仏について習ったときのこと。教室で教科書から大仏の大きさを学んだ後、フューチャーラボに移動して、実物大の大仏の手のひらの映像を見たそうです。

「もちろん、子どもたちは事前に大きさについては知っていましたが、感覚的にはまだ掴めてなかったんでしょうね。実物の大きさを実感し、なんでこんな大きな物を作る必要があったのか。どうやって作ったのかと好奇心を刺激された様子でした。子どもたちの学びには、机上の学びだけでなく実体験が必要です。本当は、実際に見て・触って・食べてとさせてあげたいのですが、物理的に無理な場合も多いです。このフューチャーラボなら、実物に近い大きさと雰囲気の中で、本物を感じさせてあげることが可能です」

大型スクリーンには実物大で見るだけでなく、ミクロのものを大きく映し出し、しっかりと観察できるという楽しさもあります。まだ顕微鏡に触ることのできない低学年の児童の観察力の育みにも一役を買っています。
また、協働学習の際にも、児童のそれぞれの意見をタブレットで提出させて、スクリーンに個々の意見を一度に投影することができ、意見共有のツールとしても活用されています。

豊かな感性を育む多彩な空間

2階にはアクティブラーニングの拠点として、アクティブスペースとライブラリースペースが設けられています。
協働学習や調べ学習、それに伴うプレゼンテーションが自由に行えるように、2階のアクティブスペースはひとつの大きなフリースペースとなっており、可動式の机といすを採用することで、色々なグルーピングに対応します。
中2階にあるライブラリースペースは本棚階段でつながれたスキップフロア構成で、自由な行き来が可能。約1万7千冊が揃うという充実した蔵書に加え、隣接するパソコンルームでネット検索もでき、豊富な情報資源に簡単にアクセスすることができます。また、大きな本棚階段は座って本を読むほか、2クラス分の児童が並んで座ることができるので課題発表の際の座席として使用されることもあります。

ライブラリースペースでの調べ学習の後、アクティブスペースでグループワーク&プレゼンテーションという循環式のフロア構成で、次世代型教育に対応した学習スペースとなっています。
取材時には、アクティブスペースで小学校6年生の社会の授業が行われていました。この日のテーマは「摂政」について。フローチャートで時系列に沿って学んで行くという内容で、電子黒板で教員がフローチャートの作り方から説明していきます。6人ずつのグループごとにテーブルに座り、電子黒板でのレクチャーを見ながら、手元にある自分のタブレットを操作していました。積極的にグループ内でコミュニケーションを取りながら、授業に取り組む姿が印象的でした。

取材を終えて

創造力やコミュニケーション力、主体的に学ぶ姿勢を育むことを目的に作られたメディアラボ。これまでもその取り組みはなされてきましたが、開放的で話し合いやすい空間を作ることで、より幅広い分野を効率的に、深く学んでいくことができると感じました。

このメディアラボを最大限に生かすために、教員も日々勉強を重ねているそうです。
「教員にも幅広く教材研究をすることを求め、アクティブラーニング型の公開授業を昨年は66本、大体1ヶ月に1~2本のペースで行いました。教員も外部の研究会に参加するなどよく勉強をしてくれています。教員もよく学ぶというのは、当校の伝統なのかもしれません」と井上学校長。

最先端の技術を備えた施設とより良い教育を追求する教員。そのふたつが両輪となって、開学以来紡いできた“志の教育”がさらなる発展を遂げようとしていることを感じさせてくれる取材でした。

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取材協力

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