取材レポート

小林聖心女子学院小学校

伝統の中に見出す、時代に即した人間教育。12年女子一貫教育が育む魂・知性・実行力。

12年間一貫教育のもと、社会貢献できる賢明な女性の育成を目的に教育活動を実践してきた小林聖心女子学院。同じ敷地で小・中・高と12年間を終えて学院を巣立った後も、卒業生は強い一体感を維持し、折に触れて母校を訪れるそうです。卒業生に愛される小林聖心女子学院の起源は古く、フランス革命後の1800年、パリで設立されたカトリック女子修道会「聖心会」に遡ります。明治時代に東京で日本最初の聖心女子学院が、そして、大正時代には関西の地で、小林聖心の前身である住吉聖心女子学院が開校されています。

知性と実行力、思いやりの心を備え、喜んで自分に与えられた使命を果たすことのできる女性を育てることを念頭に、12年間を4年ごとの3つのステージで分け(4-4-4制)、グローバルマインドを養う国際理解教育や、異学年が協力し主体的に行事を運営する能力を培うなど、21世紀に求められる資質を養う教育が、早くから実践されてきました。多方面にわたって活躍する卒業生の姿からも、連綿と続いてきた女子教育の伝統が感じられます。

現在、新しい学習指導要領の中で取り組もうとしているようなことを、すでに実践してきている聖心独自のカリキュラムの本質について、また、女子の特性を活かした学びの取り組みについて、3名の先生にお聞きしました。

小林聖心女子学院小学校・中学校・高等学校校長 シスター 棚瀬佐知子 先生
小学校教頭 藤本雅司 先生
小学校教務主任 大川尚輝 先生

シスター 棚瀬佐知子 先生

シスター 棚瀬佐知子 先生

藤本雅司 先生

藤本雅司 先生

大川尚輝 先生

大川尚輝 先生

今、改めて見直される小林聖心の人間教育

キリスト教カトリックの修道会に属するシスターたちによって、1923年に開校した小林聖心女子学院は、阪神の地に根ざし、小学校から高校までの12年間、じっくりと時間をかけて、豊かな人間性を備えた女性を育てることに努めてきました。学院の敷地は四季折々に変化する自然に恵まれ、女性らしい情緒や感性を育むのに相応しい心地よい空間が広がっています。
「200年以上前にフランスで画期的な女子教育を始めた聖心の教育は、いつの時代にも廃れない教育の本質ともいえる新しさを備えているということを実感します。」と話すシスター棚瀬。フランスでの創立当初、男子のためのカリキュラムをそっくり女子に当てはめ、具体的な「見える力」と、思考力や想像力、創造性など「見えない力」の双方を培いながら、人間としての総合的な力を育む聖心の教育観は、新学習指導要領に流れる新しい学力観とも合致します。
「何を理解しているか」だけでなく、それを用いて「何ができるのか」、また「理解していることやできること」をどのように使って社会や世界とつながり、自分の生き方を創り上げていくのか、といった力がこれからの子供たちには求められます。どんなに知識を蓄え、スキルを磨いたところで、それを使うのは人間ですから、知識や技能を使う人の人間性が何よりも問われることになります。その意味で、200年の時を越えて、魂と知性と実行力を柱に、世界に開かれた心と知性を養い、真の人間教育を実践してきた聖心の教育は、現代、まさに新しいということができます。

なりたい自分に向けて、ゆっくりじっくり着実に学ぶ

小林聖心女子学院では、女子の成長にあわせて12年を4年ごと3つのステージにわける4-4-4制カリキュラムを導入しています。ほとんどが四年制大学に進学するなか、大学受験改革を見据えてどのような学びを積み重ねるのか、教頭の藤本雅司先生にお話を聞きました。

男子と女子では、小学校、中学校の時は心も身体も成長のスピードが異なり、それぞれの特性も違うということをふまえ、女子の成長に即したカリキュラムを構築できるのは大きなメリット。共学や6-3-3制では対応しきれないところにまできめ細やかにカバーできるとのこと。4-4-4制カリキュラムを活かして、小学校でしっかりと学力の基礎を身につけ、中学、高校へ途切れることなく積み重ねていくイメージだと言います。丁寧にこつこつと学ぶという女子の特性を活かして、小林聖心では「ゆっくりじっくり着実に」という教育方針でカリキュラムを展開しています。

例えば、小学校高学年で行われる理科の実験においても、化学と物理をあわせたような単元も実施され、理系教科への興味・関心がしっかりと育まれています。花火が水の中で燃える現象や、水が入った紙皿を火にかざしても燃えない現象から燃焼の条件を導く実験や、魚を解剖して人体の仕組みまで学ぶ授業を実施。最初は女子ならではの賑やかな声が聞こえても、すぐに上手に役割分担をして、熱心に取り組む姿に、保護者や教育関係者は驚くそうです。

またカトリックの学校として世界に開かれたグローバル教育が実践されており、英語には創立時から力を入れています。新学習指導要領に先駆けて、既に5~6年生では週3時間の授業を実施。そのうちの2時間は会話を中心とした少人数制で、1時間は文法を学んでいます。また小学校1年生から、毎朝15分、Phonics(英語のつづりと発音を学ぶ教育法)によるSMILE TIME(Seishin Module I Love English TIME)を実施。中学や高校での発展的な学びの土台を作ります。

児童・生徒たちは、12年間を通して自分の将来をしっかりと思い描き、その夢の実現のひとつとして、大学進学を果たしていくそうです。中学や高校での受験がないからこそ、キャリア教育に力を入れ、学習のモチベーションを高めます。高校ではコース制を設けず、幅広い教養を身につけながら、選択授業でそれぞれの希望に沿った学びを深めるようカリキュラムを整え、合格へと丁寧に導いていきます。進学先での卒業生の活躍が認められ、豊富な推薦入試枠を頂いていることも、小林聖心の特徴といえます。

数学ソフト「cabri」を活用したICT教育の実践

教務主任の大川尚輝先生は、「新学習指導要領においてプログラミング教育が導入されることで、”プログラミング”という言葉に注目が高まっていますが、小林聖心では、従来から、思考力を重視した教育を行っており、プログラミング教育はこの思考力につながるものです。」と話を始められました。プログラミング教育とは、グローバル化、AI化が進む時代を生きる子どもたちが、自らのアイデアを形にしていくために必要な考え方を身につけるためのものです。プログラムそのものを教えるのではなく、プログラミングを体験しながら、そのプログラムによってどのように機器が作動するのかという考え方を身につけることが目的だと言います。順序だてて論理的に考える力が必要になります。現在、算数・数学科では、「小林聖心の12年間で学べる算数・数学」と題して、4-4-4制を活かしたカリキュラムを構成し、新学習指導要領に対応した大学入試に向けての取り組みがすでに始まっています。

このカリキュラムでは数学幾何ソフト「Cabri」を活用した授業も実践されており、机上で問題を解くことだけでなく、具体的、かつ経験的に課題を解決する能力を養っています。とくに女子にとって苦手な図形分野では、これらのICTを活用することによって理解が深まり、7年生からの一人一台タブレットPCを用いての授業につながっていきます。「Cabri」を使った実践では、小中高の壁を取り払い、高校数学につながるような内容を、小学生が身近に感じることができるようになっています。12年一貫だからこその系統立てたカリキュラムを考案し、研究授業で情報発信するなど、積極的な取り組みに注目が集まっています。

まとめ

これから入学する子どもたちが大学進学を迎えるころには、新学習指導要領による新しい学力観での大学入試に移行しています。それに先駆けて、独自のカリキュラムが構成され、小学校入学時から大学進学はもとより将来の姿まで、12年という長い時間をかけてじっくりと個性を伸ばし、力をつけていけることは、保護者にとっても心強く感じられるのではないでしょうか。

小林聖心の児童は大変活発で、休み時間も外で走り回る元気な子どもが多いと、先生方は口をそろえます。異性に遠慮することなく、のびのびと学校生活が送れることも要因の一つといえるのでしょう。12年間で培ったしなやかでたくましい人間性は、卒業生の活躍ぶりからも伺うことができ、小学校での学びがその原点になっているのだろうと感じました。

保護者にとっては、我が子を安心して預けられる学校選びはとても重要です。女の子の場合は、特に長い目で見て安心できる環境を選ばれる方も多いと言います。
「目に見える結果を性急に求めてはいけません。急がず、基礎からゆっくりしっかり積み重ねていくことが大切。」と、インタビュー中に話してくださるシスター棚瀬校長のお話には説得力がありました。

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