取材レポート

小林聖心女子学院小学校

創立100周年に向けた新たな教育の歩み

2018年に創立95周年を迎える小林聖心女子学院では、小学校から高校までの12年一貫教育を行っています。独自の4-4-4制による教育と、創立100周年に向けた新たな歩みについてお話を聞きました。

小林聖心女子学院校長 棚瀬 佐知子 先生のお話

小林聖心女子学院小学校 副校長 矢本 紀子 先生
小林聖心女子学院中学校・高等学校 教頭 黄田 みどり 先生 のお話


小林聖心女子学院小学校 英語科主任 ナンシー・塩崎 先生
小林聖心女子学院小学校 英語科非常勤講師 伊藤 浩子 先生 のお話

校長 棚瀬 佐知子 先生

校長 棚瀬 佐知子 先生

小林聖心女子学院校長 棚瀬 佐知子 先生のお話

現代の子どもの発達に対応する4-4-4制

本校では、小学校から高校までが一つのキャンパスで12年間ともに学んでいます。また、ステージを4年ごとに区切る4-4-4制を採用し、小中高の教員が連携して独自のカリキュラムをつくり上げています。

ステージⅠ 小学1年生~4年生
ステージⅡ 小学5年生~中学2年生
ステージⅢ 中学3年生~高校3年生

4-4-4制は、現代の子どもの成長、特に女子児童の成長が速くなってきていることへの対応に適していると考えます。ステージⅡに当たる小学5年生は、思春期の入り口です。この年齢から中学2年生までは、女子にとってとても大切な時期となります。また、小学校と中学校の学習の段差をなめらかにして「中1ギャップ」を防ぐうえでも、ステージⅡの区切りが重要です。小学校高学年は、中学を意識して学んでいく必要があります。

公開研究会を開催

2018年度は、外部の教育関係者に向けて公開授業研究会を開催します。公開するのはステージⅡ、またはステージⅢの主要5教科。デジタル教材で学ぶ小学校の算数や中学の数学の授業なども公開します。小中高の先生や大学の先生などに広く見ていただき、シンポジウムを行う予定です。テーマは「対話を通して変容をめざす授業」。「変容」という言葉には、キリスト教の考えが反映されています。学びを進めることでサナギが蝶になるように「より新しい自分」へと成長していくことを目指します。それは単なる「変化」ではなく「変容」です。本校では、神様に創造された人としての成長を「変容」ととらえ、日々の学校生活において「変容」が実現するよう教育を行います。

21世紀に息づく伝統の教育

時代に応じた教育とともに、伝統の教育も大切にします。その一つに「沈黙」があります。日々の生活や行事などで、子どもたちは「沈黙」し、じっと自身と向き合います。12年間繰り返し「沈黙」を経験することで、自分をしっかりと持てる人を育みたいと考えています。

豊富な体験学習も我が校の伝統です。なかでもボランティア活動は貴重な体験となります。高校では、手話や点字、釜ヶ崎支援、児童養護施設訪問など、様々なプログロムが必修となっており、体験学習は生徒の生き方に大きな影響を与えています。体験学習で実際に見たり聞いたりしたことが引き金となって、医療系に進もうというような選びにつながることがあります。また、体験学習とつながる記念行事での講演、例えば、釜ヶ崎でホームレスの方々の自立支援のために起業した女性の経験談などに大いに刺激され、大学のAO入試に活かした生徒もいます。体験学習での豊かな学びが、大学の選びや将来の職業選択、生き方につながっていくことは、とても嬉しいことです。

「伝統」と「新しさ」を両輪に

我が校の子どもたちは、異性の目を気にすることなく伸び伸びと過ごし、自分の好きなことに打ち込んでいます。ある生徒は小学生の頃から一生懸命、蜂の研究に取り組んでいました。そのことも医学部進学に活かされていたと思います。卒業生の進路は理系や芸術系など多様です。近年の特徴として、国公立大の進学者が増えています。また、17%程が医歯薬獣医系に進んでいます。

今年度より、創立100周年の記念事業として、本館校舎などの改修を始めます。築90余年の本館は、近代モダニズム建築の代表的建築家アントニン・レーモンドの設計よるもので、1999年に国の登録有形文化財に指定されています。堅牢で美しい本館を改修して保存に努める中、「伝統」と「新しさ」を大切にして、今後もよりよい教育をめざしていきます。

副校長 矢本 紀子 先生・教頭 黄田 みどり 先生 のお話

めざす女性像を示す「プロファイル」

黄田先生 聖心女子学院では小学校から高校まで一貫した教育を行うために、プロファイル「聖心女子学院生18歳のすがた」を定め、本校でもそれを全教員が共有しています。1989年の策定以来、改訂を重ね、現在では「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」「社会性」「意志力」「生き方における志向性」の6つのカテゴリーごとに、具体的な「すがた」が示されています。

矢本先生 項目は、全部で60に及びます。たとえば「魂を育てる」では、「キリストを知ることによって『人に尽くす』という生き方に価値があると分かり始めています」「沈黙の大切さを知っています」など。「社会性」では「礼儀正しい態度と言葉遣いができます」など。「意志力」では「失敗を恐れず、新しい経験に踏み込んでいきます」などです。

黄田先生 プロファイルは、現在進行形で表現していることが特徴です。18歳で完了するのではなく、さらにその先も成長を続けてほしいという思いがあるからです。また、小中高の各教員がプロファイルを共通の指針として、子どもの発達段階に合った指導を行う意味でも現在進行形なのです。

卒業式に子どもの成長が表れる

矢本先生 小学校入学から4年生までのステージⅠは、生活面と学習面の基礎基本を徹底させます。学習習慣や生活習慣、礼儀、人とのかかわり方など、自主自立に向けて、まず人としての基本の「型」をしっかりと身につけることが大切な時期です。

黄田先生 小学校からきちんと教えていくことで、中学、高校へと進むにつれ成長の様子がよく見えるようになります。それが特にはっきりと表れるのが入学式や卒業式ですね。小学校の入学式では、目が動いてしまったり、落ち着かない様子が見受けられますが、それが高校の卒業式になると、生徒は微動だにしなくなります。つまり、型と心がいつの間にか一致してくるのです。

心の成長を促す4-4-4制システム

矢本先生 4-4-4制は、特に女の子の心の成長、発達にかなっています。ステージごとの朝礼を月1回行うのですが、ステージⅠでは一番上級生の4年生が司会進行を務めます。6-3-3制なら6年生がするところを4年生がすることで、リーダーとしての意識を早いうちから育て、自尊感情を高めることができるのです。

黄田先生 ステージⅡでは、最上級生の中2がリーダーとなって朝礼を行います。反抗期真っただ中の中学生は、小学5・6年生の後輩がそばにいると「自分たちがちゃんとしなくては!」と急にしっかりします。ステージⅢでは中学3年生が高校1~3年生とともに高校生の「沈黙」のすがたが自分たちとはまったく違うことに気づき、改めて「沈黙」の意味を考え、自分達の姿を見直すのです。

英語科主任 ナンシー・塩崎 先生・英語科非常勤講師 伊藤 浩子 先生 のお話

少人数制できめ細かく指導

塩崎先生 英語の授業は、小学1年生から6年生まで少人数制です。1クラスを2分割し15人程度のグループで、ネイティブ教員が週1時間、日本人教員が週1時間授業を行います。少人数だから、子ども一人ひとりに話す機会がたくさんあります。一人で話すことで「なんとなく発音」するのではなく「はっきりと正しく発音」するよう繰り返し教えます。

伊藤先生 4-4-4制を意識して、中高での指導経験のある日本人教員が小学校の授業を担当するのも本校の英語教育の特徴です。それによって、中高の学びを見通しながら教えることができます。

塩崎先生 ステージⅠでは、自然に英語を話せるようになることを目指します。歌や*チャンツなどで英語に慣れていきます。授業は1年生からほとんどオールイングリッシュです。ジェスチャーを交えて話すことで、子どもたちは簡単な英語表現はすぐに理解できるようになります。小学3年生からアルファベットを書く練習を始め、文字と発音の関係を意識させていきます。

*チャンツ(chants):英単語や文章を調子のいいリズムにのせて発声・発音やイントネーションを身につけるもの

小学5年生から中学のテキストを使用

塩崎先生 ステージⅡはリーディングとライティングの学習を進めます。さらに、2017年度より小学5年生は中学1年生用の教科書「Progress in English21」を採用し、文法の学習も始めます。日本人教員が文法やライティングを中心に教えます。そこで覚えた表現を使って自分で文章をつくったり、話したりする学習をネイティブ教員が担います。

伊藤先生 英語のサポートシステムとして、国内外のインターナショナルプリスクールや海外での現地校などで英語を使って生活してきた児童向けにAdvanced English classを設けています。1~4年生・5~6年生の2クラスで、月に2~3回、英語力の保持と伸長をめざして授業を行います。転入生向けの補習クラスも設置しています。2~3年生・4~5年生の2クラスで、こちらも月2~3回のペースで補習を行います。

国際交流「ジャパン・フェスティバル」

塩崎先生  小学6年生と海外姉妹校の留学生が交流する「ジャパン・フェスティバル」にも力を入れています。本校の高校で受け入れる留学生と、毎年12月に交流します。昨年度はオーストラリアの姉妹校から30~40名の高校生が訪れました。

伊藤先生 フェスティバルに向けて、6年生は後半期から準備を開始。グループごとに、茶道・書道・生け花・和食・ゆかたなど日本文化について調べ、英文で1つのまとまりのある紹介文に仕上げます。当日はプレゼンテーションの形式に従って1人ずつ発表します。

塩崎先生 フェスティバルでは、留学生のお姉さんとの自由会話の時間も設けています。そこで易しいフレーズを確実に話せるよう、昨年度は小テストもしながら徹底的に練習しました。子どもたちはプレッシャーを感じながらも一生懸命がんばり、当日は「伝えられた!」と自信を持つことができたようです。「修学旅行の次に楽しかった」などの感想も聞かれ、私たち教員もとてもうれしく思いました。本校では英語学習へのモチベーションが大きく向上する国際交流も大切にしながら、4-4-4制を生かした英語教育を発展させていきます。

こうした4-4-4制による教育を進めるためには、小学校、中学校、高校の教員同士の連携が不可欠です。たとえば、7年生の国語や数学、社会などは、小学校の学習と重複する部分があります。そうした重複を避けるために、小中高の教員が互いの学習内容についてよく理解しておかなくてはいけません。そこで、5・6年生の国語・算数は、中学と小学校の教員のティームティーチングによる授業も行っています。

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取材協力

小林聖心女子学院小学校

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TEL:0797-71-7321

FAX:0797-72-5716

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