取材レポート

関西大学初等部

常に最高の教育を追求する関西大学初等部

コロナ禍以降、「今の状況でできる最高の教育を子どもたちに」をスローガンに掲げ、常に新しい学びに取り組んできた関西大学初等部。2023年度に6年生が挑戦したのは本の出版です。2年間にわたる防災学習を1冊の本にまとめ、出版にかかる費用はクラウドファンディングで集めたそうです。2月の発売からまだ1ヵ月ですが、重版がかかるほど高い評価を得ています。本の出版に至る経緯や得た学びのほか、2020年度から計画してきた沖縄修学旅行、2024年度に再開する海外修学旅行などの取り組みについても、校長の長戸基先生に語っていただきました

関西大学初等部校長 長戸基先生のお話
6年生60名が2年間の防災学習のまとめとして本を出版
体験が人を育てるという学びの一番大きな所を得る
「今の状態でできる最高の教育」を、修学旅行でも追い求める
2024年度の修学旅行はニュージーランドへ
子どもたちが主体的に進める新しい運動会
まとめ
校長 長戸基先生

校長 長戸基先生

関西大学初等部校長 長戸基先生のお話

6年生60名が2年間の防災学習のまとめとして本を出版

関西大学初等部では2024年2月に1冊の本を出版しました。タイトルは『やってみた!いのちを守る64の防災活動』。11期生となる6年生60名全員が著者となり、5・6年生の2年間に取り組んできた防災学習をまとめたものです。

「子どもたち一人ひとりが防災活動を実行し、その活動の目的や実際にしたから分かったことなどを自分たちの言葉で紹介しています。『食器棚に滑り止めを敷いてみた!』『防災リュックを背負って走ってみた!』『非常食を作って食べてみた!』など、非常に実践的な内容となっています。また、同じ高槻ミューズキャンパス内にある関西大学社会安全学部の教授であり、日本の防災研究の第一人者である河田惠昭先生をはじめ、専門の先生方にご協力いただき、本を作りあげることができました」(長戸校長)。
「やってみた」防災ブック

「やってみた」防災ブック

本の出版は、子どもたちが立ち上げた「災害被害≒0プロジェクト」のもとで進められたそうです。このプロジェクトについて、長戸校長は次のように説明します。

「11期生は5・6年生の総合的な学習の時間に防災をテーマとして学習を進めました。5年生で神戸にある『人と防災未来センター』に行った際、子どもたちは災害が起こった時の大変さと今後起こると言われている南海トラフ大地震について学びました。1年生で大阪府北部地震を経験していることもあり、他人事ではないと子どもたちは感じたようです。そこで、地震による災害被害を限りなくゼロに近づけるために何ができるのかを探究しようとなりました。この探究学習が『災害被害≒0プロジェクト』です」。
阪神・淡路大震災時の調査活動(人と防災未来センター)

阪神・淡路大震災時の調査活動(人と防災未来センター)

防災の探究には、地震が起こるメカニズムや地震に強い構造などの理科的視点、災害時の衣食住や避難所の生活などの社会科的視点といったいろいろな視点から考えることが求められます。これには同校が進めてきた*「学びのSTEAM化」の手法が活用されています。関西大学社会安全学部など外部の機関や専門家とも連携できる大学併設校ならではの環境が整っていることも深い学びの手助けとなりました。

「調べるだけでは災害被害を少なくすることはできないことに気付いた子どもたちは、調べてきたことを多くの人に伝え、防災意識を育んでもらうことを目的としたイベント『BOSAI FESTA』を本校アリーナで開催することにしました。たくさんの人にご来場いただきましたが、ほとんどが保護者や学校の近隣にお住まいの方。本校に足を運べる限られた人だけでなく、もっと多くの人に伝えるにはどうしたらよいかと考え、たどり着いた答えが本の出版だったのです」(長戸校長)。

*STEAM教育とは、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)にArts・Liberal Arts(芸術、文化、生活、経済、法律、政治、倫理等)を加えたもので、複雑に絡み合う社会課題に向き合う人材の育成につなげることを目的とした教育である。「学びのSTEAM化」とは、「子どもたちがSTEAMの視点を持ち、多面的・多角的に問いを見出し追究を進めていく」という主体的・対話的な深い学びを実現させるために同校が研究を進めている手法である。
避難用リュックに入れるものを実物を用いて吟味

避難用リュックに入れるものを実物を用いて吟味

BOSAI FESTA

BOSAI FESTA

体験が人を育てるという学びの一番大きな所を得る

本の出版を経験することで子どもたちには大きな成長が見られたと長戸校長は続けます。

「ある子が『いろいろな活動をするにはたくさんの人の協力が必要で、協力や支えがなかったら自分達のやりたいことができなかったと気付きました』と感想を寄せてくれました。実際に防災活動をやってみたから分かった『防災学習としての学び』はもちろん、プロジェクトを進める大変さや支えてくれる人がいるありがたさをしみじみと感じられたという学び。体験が人を育てるという学びの一番大きな所を得られたと感じています」。

関西大学は「学の実化(学んだことを実際の生活や生き方に活かす)」を教育理念にしています。まさに、この教育理念そのものの学びを小学生時代に得られることは、子どもたちのこれからの人生に大きな意味があるに違いありません。
防災士とともにリアルな防災を考える

防災士とともにリアルな防災を考える

「今の状態でできる最高の教育」を、修学旅行でも追い求める

「今の状態でできる最高の教育を子どもたちに」をスローガンに教育を進める関西大学初等部。6年生の修学旅行にも、その思いは息づいています。

2023年度の修学旅行先は沖縄県。まずは八重山諸島で沖縄ならではの美しい自然に触れた後、沖縄本島に移動。以前よりオンラインで交流してきた現地のインターナショナルスクール「AMICUS」の子どもたちと親交を深めたほか、小グループに分かれてネイティブの英語リーダーとともに英語ミッションに挑戦する「まちかどロゲイニング」やひめゆりの塔・平和祈念公園での平和学習を行いました。

「実は、この修学旅行の計画を立てたのは2020年のこと。以前はオーストラリアに行っていたのですが、新型コロナウイルス感染症対策のため3月に全国一斉休校措置が取られ、しばらくは海外に行けないことが予想されました。その時点で行き先を国内に変更。日程も年度内の一番遅い2月に設定し、その条件下で一番よい形で修学旅行をできる場所はどこかと考えて、沖縄を選びました」(長戸校長)。

西表島では星野リゾート西表島ホテルに泊まったそうです。高級リゾートとして名高い星野リゾートグループのホテルを選んだ理由について、長戸校長は次のように説明します。

「何よりも感染症対策を重視した結果です。この修学旅行を計画した2020年は、旅行すらはばかられる雰囲気でした。その苦しい状況の中で最高の修学旅行を追い求めると、やはり感染症対策が第一優先となります。それが、たまたま西表島ホテルだっただけで、子どもたちに贅沢をさせようと選んだわけではありません。結局2020年度に修学旅行はできず、今年度やっと伺うことができました。とても素敵なホテルで、安心して子どもたちが宿泊できる環境でしたね」。
修学旅行 街角ロゲイニング

修学旅行 街角ロゲイニング

宿泊場所「星野リゾート 西表島ホテル」

宿泊場所「星野リゾート 西表島ホテル」

2024年度の修学旅行はニュージーランドへ

コロナ禍が収束し、海外との交流も復活してきた2024年度はニュージーランド修学旅行を計画中だとか。以前行っていたオーストラリアからニュージーランドに変更した経緯について、長戸校長はこのように述べます。

「とにかく1年でも早く海外修学旅行を再開したいと考え、2020年度から動いていました。オーストラリアでの継続を考える上で、まず問題となったのが非常に厳格な感染対策です。オーストラリアは当時、一人でも感染者が出れば街全体をロックダウンするといった厳しい姿勢だったのです。加えて、長く交流してきた学校の近隣にはホテルがなく、ホームステイの再開も見通せない状況だったこともあります。本校の修学旅行の主目的は、英語を使って現地の人と交流し異文化を実際に体験することなので、オーストラリアでの継続は難しいと判断しました。そこから交流していただける現地校を探した結果、幸いニュージーランドにある本校と同じApple Distinguished Schoolに手を挙げていただけたので、行き先をニュージーランドに変更しました」。

海外修学旅行では、毎回現地の子どもたちとバディを組んで何日かを一緒に過ごしてもらうそうです。英語が通じなかったら、バディとも思うように意志疎通できません。他にも子どもたちだけで買い物に行ってもらうなど、様々な英語を使った活動が設けられています。

「そんな本物の体験が子どもたちの成長には大切だと考え、とにかく早く再開することを第一に進めてきました。通常の学校生活はもちろん、様々な行事においても、今できる最高の教育を提供できるよう今後も努めていきます」と長戸校長は熱く語ります。
2024年度の修学旅行はニュージーランドへ

2024年度の修学旅行はニュージーランドへ

ニュージーランドのアップル認定校と交流

ニュージーランドのアップル認定校と交流

子どもたちが主体的に進める新しい運動会

関西大学初等部では、2023年度、運動会を大きく変え、プログラム作りや進行の一部を子どもたちに任せることにしたそうです。

「子どもたちが主体になって取り組む方がいろいろな学びの質を高められます。これまでの、子どもたちをずっと見守ってきて、本校の子どもたちならもっとできるはずだとも感じてきました。そこで、特別活動を子どもたちに委ねることに。そのひとつが運動会です」(長戸校長)。

運動会の表現種目こそ体育科の学習の一環として教員が主導して進めますが、それ以外の種目は子どもたちが主体となって進めることにしたとのこと。

「団体競技は学年担任と子どもたちが話し合って種目と内容を決定。学年縦割りで1人1種目を選んで参加するエントリー競技については、6年生で作る運営委員会が『走る』『跳ぶ』『投げる』をテーマに種目を考え、審判もしてもらいました。出場種目を自分で選べるスタイルにしたのも、やる方も楽しめるようにという子どもたちの考えです。運営も6年生が担ったことによって、子どもたちにとって非常にやりがいのある運動会となりました」と長戸校長。

一生懸命頑張る6年生の姿を見て、低学年の子どもたちはあこがれの思いをもったといいます。

「3月上旬には6年生を送る会がありましたが、例年以上に温かい別れを惜しむ会となりました。縦割りで動くことで、これほど仲間意識や所属感が醸成されるのだなと感じました。低学年の子どもたちが週末になると学校に行けないことを悲しんでいるとよく聞きます。これも、学校が楽しい・大好きと思う気持ちを縦割り活動が育ててくれているおかげもあります。今後もより一層縦割り活動を充実させていきます」と長戸校長は笑顔を見せます。
運動会

運動会

運動会

運動会

まとめ

関西大学初等部の2024年度入試では定員60名の枠に166名もの出願がありました。関西でも屈指の人気を誇る理由について、長戸校長は「やはり教育内容に魅力を感じていただけているようです」と話します。

学校説明会(2024年3月17日開催)でのアンケートにも、

・子供の好奇心・ワクワクを大切にし、そこから学びが生まれ、自分で考動する力が日常的に積み重なっている様子が伝わってきました。
・英語では、ゲーム的な要素を交えながら、楽しく学ぶことを実践され、決して勉強だけで終わらせずに、ゴールとして修学旅行先のニュージーランドで活かすなど英語を話せるようになるモチベーションも確保できています。そして、これから社会に出て行くにあたり、重要な要素を小学生という大事な時期に学べることには、とても魅力を感じました。
・息子が本好きなので、iPadで書籍を借りることができるという話はとても嬉しい。

など関西大学初等部だからこそできる教育を評価する言葉が並びます。

同校が追い求める「今の状況でできる最高の教育」は、教育系YouTuber・平岡雄太さんの動画でも知ることができます。

【Apple認定】iPadを活用しまくりな、この小学校がスゴい!
https://www.youtube.com/watch?v=2MnrowjGfBE

動画をチェックするとともに、学校説明会にも参加し、その魅力を体験されることをおすすめします。
学校説明会(2024年3月17日)

学校説明会(2024年3月17日)

「今できる最高の教育を子どもたちに」

「今できる最高の教育を子どもたちに」

取材協力

関西大学初等部

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