取材レポート

関西大学初等部

双方向型授業を2020年4月13日から開始。発熱者用の保健室も新設し、防疫対策も万全に備える

2010年の創設以来、充実したICT環境のもと、ミューズ学習をはじめとする思考力を培う教育を通し、「感性豊かな子・考える子・挑戦する子」を育んできた関西大学初等部。「関西大学初等部でしか出来ない教育」を求めて、東は滋賀の草津、西は兵庫の三ノ宮からと遠方から通う児童も多くいます。
新型コロナウィルス対策による臨時休校の際には、全学年で双方向型のオンライン授業を4月13日から開始。教室での学びをオンライン上で再現したかのような質の高い遠隔授業を展開しました。
学校再開後は、新たな保健室を設置するなど徹底した感染対策の実施。ICTを活用した行事の開催などを通して、可能な限り、子ども達が「いつも通りの学校生活」を送れるように対応を進めてきた同校。長戸基校長先生に、休校中の取り組みや学校再開後の学びについて、話をうかがいました。

関西大学初等部校長 長戸基先生のお話
長戸基校長先生

長戸基校長先生

関西大学初等部校長 長戸基先生のお話

教室での学びをそのままオンライン上に再現した休校中の遠隔授業

関西大学初等部では4月13日から全学年でオンライン授業の配信を開始。1日中、画面を見て学習することは子ども達にとって負担が大きいという判断のもと、1コマ45分の授業を午前3コマ配信し、午後は午前に出された課題に取り組む形で行われました。

オンライン授業は、リアルタイムで行われる双方向型のほか、繰り返し自分のペースで見て学習した方が良いと判断した単元については、オンデマンド型で授業動画を配信。双方向型の場合、3年生以上は1人2台の端末をそれぞれZoom会議用とデータ伝達用に使い分けることで、教員とのやりとりはもちろん、グループワークも可能となり、子ども達は各家庭にいながら、全員が教室にいるかのような環境で授業に参加することができました。長戸校長先生は「今回のオンライン授業でこだわったのは『顔が見えること』。教員やクラスメイトとのやりとりがあって初めて、本当に『つながった』と感じられるのではないでしょうか。子ども達も対面だとやっぱり嬉しいようで、楽しそうにしていました」と話します。

4月17日に「次の週からは、教員も自宅から授業を配信することになります」というメールを保護者宛に送った所、5日間のオンライン授業実施に対する感謝と教員への労いの言葉が綴られた返信が多数寄せられたそうです。返信の数は176通。全校生徒は362名、家庭数はそれよりも少ないことを考えると、半数以上の保護者から感謝の気持ちが届いたことになります。その事実からは、同校の休校中の早い対応が、子ども達はもちろん、保護者にも大きな安心を与えたことが感じられます。

充実したサポート体制が迅速な授業配信を叶える

4月13日から全学年で双方向型授業の配信開始と、全国でも屈指のスピードで進められた休校中の学習。3つの要因がその実現を可能としました。まず、開校以来、ICT機器を文房具として使い、教員・生徒ともICT教育に慣れ親しんできた素地があったこと。それに加え、先を見据え、いち早く対応策の検討を開始していたこと。同校では3月の休校中に、4月の休校解除は難しいだろうと判断。3月の段階でオンライン授業の実施に必要なiPadの確保を始め、どのようなアプリを使ってどんな風にオンライン授業を行うかの試行がなされた状態でした。そして、ICT教育をサポートするためのSE(System Engineer)が3名常駐していることも大きかったと長戸校長先生は話します。

「当時、1~2年生はiPadを個人所有しておらず、また、3年生以上は端末を2台使用しての遠隔授業を行うため、家庭で用意できない分の端末を学校から貸し出せるようにと、iPadやノートパソコンを確保しました。それらの端末を家庭で使えるように準備に入った際には、初中高合わせて3名常駐するSEさんが大変頑張ってくださいました。4日間で200台以上を初期化・セットアップし、各家庭にお渡ししたのですが、なかなか教員だけでは、これだけの準備は出来なかったと思います」

分散登校時からいつも通りの温かい給食を提供

6月1日からは対面授業が再開されました。当時はクラスを半分に分けて登校させる学校が多く見られましたが、それでは授業が進まず、とりあえず来ているだけという状態になると同校では考え、クラスを分割することなく、学年ごとの分散登校を実施。同校は最大でも1クラス32名という少人数のため、クラス全員が教室に入っても、机の間隔が1.4mと充分に生徒間の距離を取ることができる環境であったことも、学年ごとの分散登校を後押ししてくれました。

6月8日からは1日6時間の対面授業を開始し、それに伴い給食も再開。給食は、配膳時の感染リスクを避けるため、自校調理の給食をお弁当容器に一人分ずつ盛り付けて子ども達に渡すことにしました。その実現のため、保健所の指導に基づき、教室横の多目的室を給食室と同じレベルの衛生状態を保てるように仕様を変更しました。簡易給食の提供や自宅からお弁当を持参させるという選択をせず、労力を掛けて通常の給食を提供するという学校側の選択には、長い休校期間を過ごし、非日常が続いた子ども達に栄養バランスの取れた「いつもの給食」を食べてもらいたいという思いが感じられます。

登校日には6時間の対面授業、自宅待機日には3時間のオンライン授業が行われ、同校では分散登校中も順調に学びを進めることができました。結果、7月20日の終業式を7月31日に延期と10日程、授業日数を延長したのみで、例年の進度から遅れることなく学習を進められたそうです。

「実体験を大切に」。感染対策を徹底して授業や行事を開催

学校再開後も、様々な行事や授業を中止にせざるをえない状況が続きました。しかし、同校は子ども達の実体験を大切にしたいと、学校医にも逐次確認を取りながら「とにかく出来ることをどんどん進めていった」そうです。

例えば、水泳の授業も、コロナ禍で取りやめにした学校も多い中、同校では感染症対策を徹底して実施。学校医の指導のもと、入退室の手洗いやアルコール消毒はもちろん、更衣室ではソーシャルディスタンスが保たれるように印が付けられたロッカーのみを使用。プールサイドの壁にも印をつけ、距離を取ることを意識させる。ビート板の使い回しをせず、終了後にはすべて消毒する。コースごとに終わる時間に差を設け、更衣室が密にならないようにするなど様々な対策を行い、例年通りの授業を行ったそうです。

また、文化祭や運動会は、来校者が増えることで感染リスクが高まることを考え、オンライン開催に変更。事前に子ども達が演技をしている様子を撮影し、その動画をYouTube限定配信機能を使って保護者に届ける形で行われました。学年ごとに教員が工夫を凝らして作成した動画には、保護者からも「実際で見るよりも近くで見られて良かった」という声が寄せられるほど好評だったそうです。

修学旅行での模索から伝わる、子ども達を第一に考える学校側の思い

10月にオーストラリアに行く予定だった6年生の修学旅行。状況を考えて、7月の時点で行き先をオーストラリアから沖縄に変更しました。オーストラリアに行かないという決定には、子ども達も関わったそうです。

「行くか行かないかの最終決断をする時に、現地の日本人スタッフや旅行代理店の方とZoomで繋いで、子ども達と一緒に現地の状況を確認したんですね。聞いた情報をもとに、行っても良いのか諦めた方が良いのか『どうしたい』より『どうすべきか』を考えてもらいました。子ども達はピラミッドチャートを使って、自分たちの意見を組み立ててディスカッションしました。そして、子ども達自身が納得してオーストラリアに行かないという結論を出しました」

子ども達の意見を聞かずに修学旅行を中止にすることは可能ですし、またその方が簡単です。しかし、同校ではそのような一方的な決断をしませんでした。子ども達に現地の状況を確認させディスカッションさせることで、自分達の行動が社会にどのような影響を及ぼすのかを考える機会を与えました。コロナ禍だからこそ得られる学びを大切にする学校側の姿勢からは、子ども達に正解のない課題に向き合う力を付けて欲しいという思いが感じられます。

また、修学旅行先を沖縄に変更後も、オーストラリアで予定されていた同世代の子ども達とバディを組んで英語で交流する機会を設けてあげたいと、現地インターナショナルスクール『アミークス』との交流を決定。それに向けて運動会で行う踊りをエイサーに変更したほか、Zoomを使って生徒間の交流も行いました。残念ながら、2月に予定されていた沖縄修学旅行は、緊急事態宣言により行くことは出来ませんでしたが、子ども達のことを第一に考え、最善を尽くそうとする学校側の思いは子ども達や保護者に伝わったのではないでしょうか。

まとめ

早い段階での双方向型遠隔授業の配信や分散登校中の給食の提供、水泳授業の実施、ICTを活用した様々な行事の開催と、コロナ禍にあって学校医と連携しつつ、既存の方法を柔軟に変えることで、可能な限り「いつも通りの学校生活」を叶えてきた同校。その根底には、子ども達のために最善を尽くそうとする学校側の熱い思いがあります。その思いが開校以来、連綿とあったからこそ、ミューズ学習や全国屈指のICT教育などの先進的な取り組みが花開いてきたのだと取材を通して感じました。

同校が追い求める「関西大学初等部でしか出来ない教育」の中には、子ども達や保護者が安心して気持ち良く学校生活を送れることも含まれています。施設面でも、新たに第二保健室を設置。今までの保健室の横にあった教育後援会室を新たな保健室として整え、発熱症状がある子とない子が触れ合わないように動線を分離しました。養護教諭は二人体制で教員用防護服も備えるなど万一の事態に備えます。ここまで徹底した感染対策を実施する学校は、そう多くはありません。同校のこの一年の対応は、子ども達が6年間を過ごす学び舎として信頼できる存在であるということを、学びの面でも防疫面でも、充分過ぎるほど証明してくれたのではないでしょうか。

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