取材レポート

雲雀丘学園小学校

『雲雀丘で学びたい』と頑張れる子に来てほしい。その思いが生む、個人試問と親子面接の新入試

ペーパーテストで測れる認知能力より、チャレンジ精神ややり抜く力、順序立てて考える力、コミュニケーション力など、非認知能力と呼ばれる力を重視し、個人試問に重きを置いた試験を展開してきた雲雀丘学園小学校。加えて、「『雲雀丘で学びたい』という気持ちを持った子どもたちに入学してほしい」と、2022年度入試では専願受験者のみペーパーテストを廃止し、親子面接と個人検査のみの試験を導入しました。
「先日その試験を経て入学してきた新1年生に交通ルールを教えに行きましたが、好奇心を持ってしっかりと授業にのぞむという例年通りの新入生の姿が見られました。」と話す入試対策部長の今井徹先生に、新入試をはじめ、同校の実体験を大切にする教育、新文化館について、お話を伺いました。

雲雀丘学園小学校 入試対策部長 今井徹先生のお話
入試対策部長 今井徹先生

入試対策部長 今井徹先生

雲雀丘学園小学校 入試対策部長 今井徹先生のお話

2023年度からペーパーテストを全廃

雲雀丘学園小学校は、2023年度入試では専願・併願ともペーパーテストを実施せず、親子面接と適性検査(個人試問)のみの試験にすると発表しました。この理由について、「2022年度入試で専願者の数が大幅に増えたこと、専願受験者の割合が全受験者の85%となったことも大きいです。と今井先生は説明します。

また、2023年度より今まで7つ設けていた適性検査の領域を、「ことば」「人間関係」「数量・図形」「環境・自然」「絵画」「健康」の6つの領域に絞り、必ず出題する内容も「瞑想」と「箸使い」「なわとび」が加わりました。

「『雲雀丘で学びたい』と思っているお子さんに来てほしいと、内容を公開しました。瞑想は、椅子に座って目を閉じて1分間動きません。幼稚園児にとって、目を閉じて黙って過ごす1分間は、とても長く感じられるでしょう。また、お箸やなわとびも一朝一夕に出来るようにはなりません。どれも出来るようになるためには、お家での練習が必要となってきます。本校に入学するために、練習を頑張ってほしい。そんなお子様にたくさん来ていただき本校で学んでほしいと思っています。」と今井先生。

そして、これらを練習することは様々な力の育みにもつながると今井先生は続けます。

「瞑想では自分を律する力を育むことができます。それは、しっかりと話を聞ける・集中できるという所にもつながります。きちんとしたお箸使いはきれいな鉛筆の持ち方の基礎となります。実技の練習をすることが、学校に入ってからのスムーズな学習につながります」。

想定外の成果が生まれた親子面接

2023年度入試では適性検査は大きく変わりますが、親子面接は2022年度と同じく、原則両親と子ども・15分間という条件で行うとのこと。昨年は控え室で両親が同じ内容のアンケートをそれぞれで記入していただきました。このアンケートについて「お父さんとお母さんの回答が一致しているかは見ていません」と今井先生。

「アンケートは記述式にしています。大切なのは、しっかりお子さんのことを考えているか、本校の考え方を理解していただいているかという点です。ご夫婦で同じことを書いていなくても問題はありません」。

また、親子面接では一切、志望理由は特に聞いていませんと今井先生は続けます。

「本校はネット出願で、出願時も細かいことは聞いていません。親子面接ではご家庭でどんな雰囲気でお子さんに接していらっしゃるか、しつけなどについてどんな風に考えているかを知りたいと考えています」。

以前は、保護者のみの参加だった親子面接が両親参加となり、学校説明会などイベントの父親参加率が上がったといいます。

「今までは入学式で初めて本校に来たというお父さんも多かったと思います。しかし、両親揃っての親子面接をするようになり、入試前に本校に足を運んでくださるお父さんが増えたように感じます。先日の説明会でも夫婦で参加する家庭も多く、お父さんから本校のことが良く分かったという声も頂きました。やはりお子様が入学される学校は、ご夫婦で納得した形で入学していただきたいですね。」

デジタルとアナログ、両方の良さを備えた教育を展開

コロナ禍で、1年生から一人一台の端末を整備した雲雀丘学園小学校。教員も様々な研修を通して積極的に新しい取り組みを進め、子ども達のプレゼン能力を始めとするICTスキルも向上しました。その中で、「ICT教育ももちろん進めていきますが、その一方でやはりアナログという所をもう一度しっかり見直していきたい」と考えているそうです。

「やはり非認知能力を磨くには、アナログ教育は必要不可欠と考えます。そのひとつの取り組みが、本校独自の連絡帳です。教員が黒板に書いた次の日の予定を本校では子ども達自身で取捨選択して書かせます。宿題など自分が必要でない情報は、書かなくてよいという指導をしています。連絡帳は必ず教員がチェックをします。正直、iPadで写真に撮ってもらう方が教員としてもラクですし、時間短縮にもなります。しかし、小さなことでも毎日積み重ねることで考える力が育っていくと考え、続けていきます」。

ひばりの里

同校のアナログ教育の一つに70周年記念事業のひとつとして生まれた『ひばりの里』があります。『ひばりの里』は幼稚園脇の池だった所に保護者と共に土を運び作ったビオトープのこと。田んぼと池があり、多様な生き物が集まります。

「今はアメンボも見たことがない子もたくさんいます。『ひばりの里』なら、アメンボやカエルの卵を実際に見ることができます。田んぼでは田植えから収穫、足踏み脱穀機を使っての脱穀までしてもらいます。この体験を経た子ども達は、5年生で稲作について学ぶ時に『手作業はしんどいし時間も掛かるから、機械でするのも分かるなあ』という感想を持つようです。今はアプリを使えば昆虫の姿や鳴き声も聞くことができますが、やはり実体験を伴った学びは納得感という点で違います。デジタルとアナログ、両方の良さを取り入れて、色々な教育を行っていきます」。

新文化館『道しるべ』が2022年3月に竣工

70周年記念事業の締めくくりとなる新文化館、通称『道しるべ』が2022年3月に完成しました。この通称には、「学園を巣立つ子どもたちが目的地へ自ら進むための道標」「小・中・高のひとつの結び目」「先頭に立って指し示す」などの意味が込められているそうです。

この『道しるべ』に新設された小学校図書館のコンセプトは、「行きたくなる」「使いやすくなる」「本が読みたくなる」。入口全面をガラス張りにし、入口付近に本や掲示物を自由に飾れる大きな展示台を配置。書架も本が一望できるよう斜めにレイアウトにするなど、図書館の前を通るだけで、たくさんの本や楽しげな掲示物が目に入ってくる空間構成となっています。

また、皆で車座になって本を読めるカーペットスペースや、1クラスが授業で利用できる調べ学習エリアもあります。この調べ学習エリアの壁は、プロジェクターから投影できるようホワイトボード仕様に。取材時に調べ学習エリアで行っていた社会の授業では、備え付けのモニターに加え、ホワイトボード壁にも映像を投影し、先生が2つの画像を使いながら丁寧に説明を行っている姿が見られました。

また音楽室も以前の3倍ほどの広さを確保し、オルガンも36台と個人で1台を使える数を備えるなど、室内での音楽活動に制限がある中でもいつも通りの授業を提供できる環境を整えました。

今井先生は「小学生図書館も広くなったので蔵書も増やせますし、中高生用の図書館も使えるので、より幅広いジャンルの本を楽しめるようになりました。音楽室にはモニターなども設置していますので、音楽の授業以外に使うことも可能です。『道しるべ』には中高生が使う施設も多く、子ども達は中高生の学ぶ様子を目にする機会が増えるでしょう。中高生と接することで良い影響が出てくるのではないかと期待しています。我々教員も中学校の先生方と話し合いながら、新たな取り組みを模索している所です」と語ります。
図書館

図書館

図書館内学習エリア

図書館内学習エリア

音楽室

音楽室

取材を終えて

入試よりペーパーテストが無くなることで、試験が簡単になると考える保護者も多いのではないでしょうか? しかし、雲雀丘学園小学校の適性検査で出題される「瞑想」「箸使い」「なわとび」は、記事中で今井先生が話す通り、どれもすぐに習得するのは難しく、日々の練習が必要となってきます。今井先生は「入試で見せていただいたら練習してきたかは一目でわかる」とも話されます。また、2022年度の親子面接では親子で遊ぶ姿も見せてもらったとのこと。生活の中で、親子がどのように関わってきたかが問われる内容となっています。

そういった点を考えると、もしかすると問題集をこなすだけで対応できるペーパーテストの方が、ある意味簡単かもしれません。ただ、この日々の在り方が問われる新入試に向けて頑張れたお子さんは、入試を突破する技術ではなく、頑張る力・集中して聞ける力など様々な力を備えることができるでしょう。この力は、子どものこれからの人生への大切な贈り物となるはずです。

学校説明会ではより詳しく入試の内容を説明するほか、模擬テストが受けられる入試体験会も6月に実施する予定だとか。受験を予定されるご家庭は参加されてはいかがでしょうか。

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