取材レポート

雲雀丘学園小学校

2022年度入試から、専願者受験はペーパーテストを廃止。より思考の過程を問う内容へと変更

阪急雲雀丘花屋敷駅から学園専用通路を通ってすぐという恵まれた立地に佇む雲雀丘学園小学校。1949年の創立以来、「高く、豊かに、たくましく」を教育目標とし、高い学力と人間力を併せ持つ子どもの育成に取り組んできました。
2021年度から校長に就任された井口光児先生に、2022年度から変わる入試内容と70周年記念事業について、お話を伺いしました。

雲雀丘学園小学校 校長 井口光児先生のお話
井口光児校長先生

井口光児校長先生

雲雀丘学園小学校 校長 井口光児先生のお話

様々な施設を改装・建築し、利便性を高める

2020年に創立70周年を迎えた雲雀丘学園は、70周年記念事業として、学童保育の場「The Will House」の建設のほか、様々な施設を整備しました。1学年3クラス編成時に建てられた低学年校舎を1フロアに4クラスが配置できるように教室を作り替え、1つの学年が同じフロアで学べるようにしたほか、保健室と家庭科教室を文化館から高学年校舎に移設。教室の改装では、今まで廊下などに配置されていた個人用ロッカーを教室内に集めて設置。新しいロッカーに縦型を採用することで制服を掛けられるようにするなど、大小の改装を経て利便性が高まったと思います。

70周年記念事業の締めくくりとなる文化館の建て替えは、2022年の春に完了予定です。「ひばり文化の大樹を作る」がテーマの新文化館には、小・中高のそれぞれの図書室、音楽室、約350人定員の講義室、購買部などが集結。2階に設置予定の小学校図書室は、渡り廊下で小学校校舎と繋がり、雨の日でも濡れずに行き来することが可能です。新しい小学校図書室について井口校長先生はこう話します。

「新しい図書室では、広くなる分、読み聞かせのためのスペースもしっかりと確保し、児童の目線が来る所に本が並ぶよう低い棚を中心に本を配置できればと考えています。また、現在は全学年が一人一台タブレット端末を所有していますので、その利点を生かし、タブレット端末で蔵書の検索や予約ができるようなシステムを整えられないか検討中です。司書も常駐します。子ども達にとって一番良い図書室を作るべく、来年の2月末の完成まで検討を重ねていきます」
「The Will House」

「The Will House」

図書室

図書室

図書室

図書室

2022年度より大きく変わる入試

雲雀丘学園小学校では、2022年度入試より、専願者向けの入試ではペーパーテストを取りやめ、親子面接と個人試問・集団試問とすることにしました。また、追加合格を出す方向で2月のB日程も実施しない予定です。これは「ぜひ本校で学ばせたいというご家庭に来ていただきたいと考えた結果」と井口校長先生は述べます。

「昨年は、併願受験の方々には大変厳しい入学試験となりました。また、B日程も例年合格者が少なく、1人の年もあるほどです。我々としては、ぜひ雲雀丘で学びたいという方に来ていただきたい。そして、そういう方をたくさん募集したいということで、今回の変更に踏み切りました」

従来の入学試験でも、ペーパーテストの比重が少なく、個人試問を重視していた同校。入学試験を重ねる中で、ペーパーテストは答えがあっていても、それが当てずっぽうであるのか本当に分かっているのかは見えない部分があると感じていたそうです。

「ペーパーテストの場合は、パターンを教えれば、子どもたちはすっと頭にテクニックを入れることができます。その訓練で得られる能力は、付け焼き刃のものが多く、時期が来るとすぐ忘れ去られてしまいます。そこで、専願者試験ではペーパーテストを廃止することにしました」(井口校長先生)

ペーパーテストが無くなることで入試が簡単になるのでは、と思われる保護者も多いかもしれません。それに対して井口校長先生は「逆に、ご家庭での親の役割が非常に大きくなるのではないでしょうか」と話します。

「私たちはペーパーテストで測れる知識の豊かさより、失敗にめげずに頑張る力や自分で継続して取り組む力など、非認知能力の高い子どもたちに来てもらいたいと思っています。このような力を育てるには数ヶ月では無理です。保護者の皆さんが日々の色々な関わりあいの中で、お子様としっかりと向き合っていただくことが非常に重要となってきます」(井口校長先生)

思考のプロセスを重視する口頭試問

個人試問・集団試問については、従来通り「言葉」「数・図形」「環境」「表現」「身体機能」「社会性」の6分野を実施するとのこと。井口校長先生は「今までペーパーテストで問われてきた内容を個人試問ですることは一切ない」と話します。

「一切、鉛筆を持たせません。文字も書かせませんし、読ませません。数字も1から10までしか数えさせません。幼稚園あるいは保育園で普段、取り組んでいる内容を、またご家庭でしつけの中でされている部分を試験問題に取り入れ出題します。小学校課程の問題を出さないというのも、昔から引き継がれてきた当校の伝統です」(井口校長先生)

個人試問は横で観察する教員や採点する教員はいるものの、基本的に質問は担当教員と児童の一対一で行われます。人見知りの子どもからもきちんと回答を引き出せるように努めるとのこと。また、例え1問目で間違えたとしても、必ずその場で答え合わせをして、どうしてそのような答えになったかを子どもに理解させた上で2問目以降に取り組むという形で進めるそうです。

「私たちは○か×かの入学試験をしてはいません。個人試問を進める中で、子どもたちがどう考えているのかという考え方のプロセスも評価するために、きちんとポートフォリオも取るようにします。ペーパーテストを無くす分、一対一で子ども達の思考の中身をしっかりと捉えたいと思います」

家庭のあり方を見るため、面接形態も変更

また2022年度からの大きな変更に先駆けて、2021年度入試では、面接を保護者のみから、家族3人での親子面接に変更。時間も5分から15分へと延長しました。その狙いについて、井口校長先生はこう話します。

「子どもの力とはどういう所にあるのかを改めて見てみますと、家庭での愛情に裏打ちされた自己肯定感がしっかり育っているかということが、やはり大きいと思います。試行錯誤し、失敗を重ねて毎日続けることで成し遂げた時にすごく達成感が得られます。その達成感を得るために、お父さん、お母さんがお家でどのように励ましているのか、どのように支えているのか。それも子どもの成長を測る上でバロメーターのひとつです。そこを、親子面接で親子の様子やご夫婦の様子を拝見させていただくことで測りたいと考え、面接形態を変更しました」

実際、変更後の2021年度入試では家庭の雰囲気がよく分かったと、井口校長先生はその手応えについて話します。続けて「普段通りの様子を見せていただければ」と笑顔を見せます。

教員の質が一番大事

最後に井口校長先生は、こう話します。
「今までやってみなはれ塾や放課後預かりなど色々整えてきましたが、学校というものはやはり教員の質が一番大切です。もちろん元気よく遊んでくれる教員や面白い教員も良いのですが、授業の質をしっかり上げること、そして、学級指導、子どもに対する指導を生活指導も含めて、きちんと行う教員になってもらいたいということは、4月の校長就任時に先生方にお願いしました」

大学卒業後すぐに同校に入職し、以来38年にわたり指導にあたられてきた井口校長先生。井口校長先生は、昔「雲雀丘学園小学校に行って井口先生に担任をしてもらいたいと保護者に言われるような教員になれ」と先輩教員から言われたことが心に残っているそうです。一人ひとりの教員が、そのような教員に成長してもらいたいと話します。そのために、同校では教員研修に力を入れているとのこと。コロナ禍のため、大規模な教員間の授業公開は行えませんが、学年単位・教科単位の少人数での授業公開を、1年を通じて行っていく予定です。

「授業の質を上げるために一番大事なのは、人に授業を見せることです。ここを見てほしいんだという、しっかりした気持ちを持って、授業の準備をして公開することが指導力を磨きます。若手もベテランも全教員が1年で1回以上、他の教員に授業を見てもらう機会を設けるよう伝えています。○○先生に担任をしてほしいと入学試験に来てくれる人が一人でもいたら、それが私学の教員としての矜持となります。私は一人ひとりの教員がそう言ってもらえるように成長してもらいたいと思います」(井口校長先生)

まとめ

2022年度から大きく変わる入試ですが、子どもたちがどう考えて答えを出したかという課程を重視する姿勢には変わりがありません。これは雲雀丘学園小学校が、昔から大切にしてきたこと。入学後も、点数や成績ばかりを意識させるのではなく、どうすれば目の前の課題を解決できるのかを自身で導き出せるようなサポートを大事にする教育を同校は展開しています。

2021年には全学年でタブレット端末の一人一台制の整備が行われ、2022年春には70周年記念事業も完了予定と、より充実した教育環境が整います。加えて、長年同校で教鞭をとっておられた井口先生が校長に就任されたことで、教員の質を重視する姿勢も一層明確となりました。万全のサポート体制のもと、子どもの考える力を育む同校の教育への期待が、近年の専願受験者の増加に表われているのだと取材を通して感じました。

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