取材レポート

雲雀丘学園小学校

人間力を養う教育を支える柔軟な学校体制。休校下の取り組みを通して、ICTの利点を生かした教育への挑戦を続ける

『孝道』と『やってみなはれ精神』で人間力を養う教育

初代理事長・鳥井信治郎氏の「親孝行な人はどんなことでも立派に出来ます」という言葉から『孝道』を建学の精神としている雲雀丘学園小学校。
「親孝行というと古めかしい言葉に聞こえます。しかし、親というのは、人が感謝する対象として一番身近な存在。親に感謝できる子は必ず周りの人に、そして社会に感謝が出来る。色々なことに感謝して物事を進めて行く子は、どんなことでも立派に出来る。そのように初代理事長は思われたのではないでしょうか」と成地 勉校長先生は話されます。

『孝道』とともに大切にしているのが『やってみなはれ精神』です。「言い訳をせずに、とりあえずやってみよう。失敗してもいい。失敗することから得るものがあるから」という考えのもと、子ども達は6年間、様々なことにチャレンジします。

『孝道』と『やってみなはれ精神』を2つの柱とする人間力を養う教育について、新型コロナウィルス対策による臨時休校下での取り組みと併せて、成地 勉校長先生にお話をおうかがいしました。

雲雀丘学園小学校 校長 成地 勉先生 のお話
成地 勉校長先生

成地 勉校長先生

雲雀丘学園小学校 校長 成地勉先生のお話

防護服製作を通して、社会貢献の大切さを知る

新型コロナウィルス感染拡大により防護服不足が問題となった4月下旬、幼稚園園長の発案で、学園をあげて防護服作りに取り組みました。医療系会社と宝塚医師会の副会長を務める校医の監修のもと、作り方の動画を作成し、保護者用ホームページにて公開。たくさんの家庭から協力があり、学園全体で約1,800枚、うち小学校では1,000枚を製作することができたそうです。この防護服は、5月1日に、医療従事者への感謝の気持ちが綴られた子ども達からのメッセージとともに、宝塚市と川西市の両医師会に寄付されました。

このメッセージは学校から作成をお願いしたわけではなく、子ども達が自主的に書いてきてくれたそうです。医療従事者が罹患するリスクを負いながらがんばってくれていることを子ども達が分かって防護服を作っているからこそ、たくさんのメッセージが添えられたのではないでしょうか。届けられた防護服とメッセージに対する病院側からの感謝の声も数多く届きました。中には涙が出ましたと言ってくださった先生もおられたそうです。

「子ども達なりに社会に対してお役立ちができたのではないかと思います。社会に感謝し、貢献するということの大切さを、これからも伝えていきます」と成地校長先生は話されました。

自然を相手にすることで培う感謝と自己肯定感

2020年で開校70周年を迎える雲雀丘学園。その記念プロジェクトのひとつとして、幼稚園横の枯れ池にビオトープと田んぼを作るという『里地里山プロジェクト』が立ち上げられました。2019年11月に開始し、6月上旬には、有志の生徒・保護者、中高生徒による田植えも実施されました。秋には稲刈りを予定しているそうです。このプロジェクトの狙いは、自然と戯れることを通して、子ども達に感謝の気持ちと自己肯定感を育んでもらうことにあると成地校長先生は話されます。

「出来たお米でおにぎりでも作って食べようと話しています。自分で実際に米を刈り取って、初めてその苦労を子ども達は実感できるのではないでしょうか。米作りを通して、食べ物の大切さを知ってほしい、そして生産者の方への感謝の気持ちを持ってほしいと思います。 きっと思い通りにいかないこともたくさんあるでしょう。でも、自然はそういうもんだよと。思い通りにいかなくても、ちゃんと草は育つ。君たちも一緒だよ。うまくいかないことや出来ないことがあっても、ちゃんと育つし、大丈夫だということも伝えたいと思います」

また、里山という多様性に富み、循環可能な環境に触れることで、サステナブルという視点を学ぶきっかけになれば、と成地校長先生は続けられます。

「米を作り、米を食べ、草木の落ち葉を土に盛り込んで腐葉土を作り、それを使い、また米を作る。その中で色んな生物や植物が生まれます。先日は、モリアオガエルとシュレーケルアオガエルという兵庫県の絶滅危惧種である2種のカエルの卵も発見されました。里山という多様性を感じられる場所作りを通して、持続可能な社会というものを感じてもらいたいと考えています」

自然の中でたくさんの動植物と触れ合うことを通して、自然を大切にするという心も育まれるでしょう。それは、周りの人を大切にすることにもつながっていくのではないかと感じました。

休校下の経験を生かし、ICTだからできる教育に挑戦していく

今回の臨時休校中、ICTを活用した様々な学びの配信を行った同校。子ども達の生活リズムを整えるために、最初に行われたのがYouTubeを利用した朝礼『ひばりっこTV』のライブ動画配信です。8時30分から10分ほど、校長・副校長・教頭のあいさつの後は各学年団の教員が日替わりでゲームを行うなどしたそうです。

学習面では、時間割を作り、授業動画を配信。子ども達は動画を見ながら、授業支援ソフト『ロイロノート』上で配信された課題に取り組んだり、算数であれば専用学習ソフト『キュビナ』を使ったりするなど、ICTを活用した学びが進められました。『ロイロノート』上で子ども達から提出された課題は、すぐに添削して戻すという教員のリアルタイムの対応には、保護者からも安心の声をたくさんいただいたそうです。
安全な国産会議システム『V-CUBE』を使い双方向でコミュニケーションを取ることができるホームルームも実施されました。

「教員も『こんな風に作ったらどう見えるか』『どう作れば理解が進むか』と試行錯誤しながら、動画を作成してくれました。その結果、教員のICTに対する感覚も非常に高まりました。我々の努力次第で、『万全』とは言わないが、『充分』に学びを止めずに進めていけるという手応えを得ています。先生と子ども達が面と向かって行う教育に勝る物はありません。ただ、ICTをうまく使うことでもっと面白い授業ができると感じています」

そして、海外との交流にも今後は積極的に活用していきたいと成地校長先生は続けられます。

「今年はニュージーランドへ研修旅行に行けませんでした。しかし、現地の学校は既にICTを普段使いしていますので、我々の準備さえ整えば、英語の授業の中で子ども達が現地とつながることができます。これはすぐにやりたいと考えています。コロナが進めたと言っていいICT機器だからできる教育に、これからも挑戦していきます」

今回の事態を受けて、夏休み明けには2.3年生に、2021年の春には新1.2年生にiPadの配布を予定。全学年が1人1台のiPadを所有する体制を整えて行くそうです。

『ザ・ウィルハウス』竣工で、ますます充実する課外活動

『里地里山プロジェクト』と同じく、70周年記念プロジェクトのひとつである新南館『ザ・ウィルハウス』が3月に竣工しました。1階にはロボットプログラミング教室『プログラボ』、2階には学童保育サービス『トレジャーキッズクラブ(TKC)』が設けられ、子ども達がより充実した放課後の活動を行える場となっています。

『教育版レゴ®マインドストーム®EV3』や各種教材をもとに、ロボットを制作する『プログラボ』では、ロボットプログラミングを通して、筋道を立てて考える力・物事を深く考える力・最後までやり抜く力を育むことを目的としています。低学年を中心に6年生まで、約160名が通う人気の課外教室です。

『TKC』は、8時30分から18時30分まで、土・日曜以外は預かってくれる学童保育サービス。宿題の補助を中心に、折り紙教室など、子ども達が楽しめるプログラムが日替わりで実施されています。最終18時30分の下校となった場合でも、阪急雲雀丘花屋敷駅直結の安全な学園専用通路を通って、いつもの通学路で帰ることができます。『TKC』ではこの臨時休校中も、医療従事者に限らず、仕事で必要な場合はお預かりが行われていました。

『ザ・ウィルハウス』以外でも校内ではピアノ教室や絵画教室、理科体験教室などたくさんの「やってみなはれ塾」が展開されています。充実した「やってみなはれ塾」とお預かり機能に加えて、パンの販売やケータリング弁当の導入で急な「お弁当が作れない」にも対応可能となり、同校には保護者にとって非常に心強い環境が整えられています。

まとめ

「7月いっぱいは授業を行うものの、通常授業に戻ってから1ヶ月で何を判断材料として成績を付けるか。無理に成績を付けることに意味があるのか。そう考え、通常3学期制の所を、今年は特別措置として前後期制に変更し、前期は9月末までの様子を見て、成績を付けることにしました」と成地校長先生。

目の前の子ども達のために、学校の枠組みを変える。その柔軟な姿勢は、どこの学校でも見られるものではありません。6年間、自分達のことを第一に考えてくれる教員と共に様々なことに取り組むからこそ、子ども達も社会への感謝の気持ちとチャレンジ精神を培うことができるのだと感じた取材でした。

取材協力

雲雀丘学園小学校

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