取材レポート

菅生学園初等学校

菅生学園「小大連携による体験学習」東海大学と連携した学習プログラムでより深い学びへ

里山を中心とした豊かな自然環境の中にある菅生学園初等学校では、地域の特性を活かした様々な体験学習が行われています。2014年からは生活科と総合的な学習の時間を活用して、全校体制で毎週2時間「ゆたか」の時間を特設。学校周辺に生息する生き物や植物に触れることで、豊かな心と自ら学ぶ力を育みます。東海大学との連携によるフィールドワークなどについて校長の下平孝富先生にお話を聞き、4年生の授業を取材しました。

菅生学園初等学校 校長 下平孝富先生のお話

「ゆたか」の時間(4年生の)を取材
4年生の児童2人にインタビュー
校長 下平孝富 先生

校長 下平孝富 先生

「ゆたか」の時間(4年生)

「ゆたか」の時間(4年生)

菅生学園初等学校 校長 下平孝富先生のお話

菅生の自然環境を活かした体験学習 

本校では、2014年から「ゆたか」の時間を特設し、「山」「川」「土(栽培)」という3つの柱を設けて、菅生の自然環境を活かした体験学習を行っています。里山に囲まれているので遠方に出かけていく必要がなく、学校の周辺で様々なプログラムを体験できます。これまでは教員が試行錯誤しながら、児童の発達段階に応じた体験学習プログラムを作ってきました。導入から6年目となり、構築したプログラムをさらに発展させていくことを考えています。ただ「楽しかった」で終わらせるのではなく、次の学びへのステップとなることが重要です。そのためには、何を目指すか、どこにゴールを持っていくかを明確にしていく必要があります。近年、多くの学校がSDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいますが、「ゆたか」の時間で行ってきたことはSDGsへの取り組みに通じるものです。これまで行ってきたことをSDGsがゴールと定めた方向へと進めていくためには、専門的な知識が必要となります。そこで、東海大学の系列校であることを最大限に活用し、2019年度から東海大学と連携したプログラムをスタートさせました。

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より深い学びを目指して東海大学と連携

東海大学との連携の第一歩として、今年度から東海大学人間環境学科自然環境課程の藤吉正明教授に来ていただき、小大連携でフィールドワークを実施しています。藤吉先生は、里地里山の生物保全などの研究を行っており、里山のプロフェッショナルです。専門家に加わっていただくことで、よりアカデミックな学習が実現し、子どもたちの学びもより深いものになっていきます。一方で、大学側も大学での研究成果を小学校にフィードバックしていくことで、検証やさらなる発展へとつなげていくことができるのです。双方にメリットがある小大連携には、多くの可能性があります。東海大学は学部が多岐にわたっているので、他の分野でも小大連携ができるでしょう。「ゆたか」の時間をこれまで以上に学問レベルとして高いものにすることを目指して、初等学校と大学が連携してできることを探っていきます。

初等学校で身につけた学び方のノウハウやマインドは、中等部や高等学校での学びにつながります。ですから、初等学校の6年間で、興味をかきたてる体験を徹底的に行っていくことが重要です。本校では、初等学校での6年間だけでなく、中等部・高等学校(特進コース)も含めた12年間の一貫教育を見据えた教育を提供したいと考えています。12年後には、21世紀に求められる力を備えた人材となって大学で学んでいけるように、そのベースを本校で育むことを目指します。

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「ゆたか」の時間(4年生の)を取材

恵まれた自然環境の中で五感を使った学び

「ゆたか」の時間は、「山」「川」「土(栽培)」という3つの柱を設けて、発達段階を踏まえた体験学習を実施。絶滅危惧種のトウキョウサンショウウオも生息する鯉川周辺でのフィールドワークをはじめ、米や野菜の栽培、育てた大豆を使った味噌作りなども行います。

今回取材したのは、4年生の授業。東海大学で里山の研究なども行っている藤吉正明教授と研究室の大学生たちと一緒に、鯉川周辺に生息する生き物を探しに行きました。最初に、藤吉先生が虫取り網の使い方を説明。研究室で使っている本格的な虫取り網はネット部分が深く、奥の方に虫を追い込んでくるっとひねると虫を閉じ込めることができます。使い方を教えてもらうと、児童たちは散らばって生き物を探しました。多くの生き物が生息しているので、チョウやバッタ、イナゴ、コオロギなどがそれほど苦労せずに見つかります。バッタやコオロギなどいろいろな種類を捕まえた児童もいれば、チョウだけを集めてほかの虫は取らない児童もいました。虫を触れない児童には無理に触らせることもなく、サポートに入っている大学生たちが網から虫カゴに入れる手伝いをしてくれます。虫を触わることには抵抗がある児童も、網を使って捕まえることは楽しんでいました。

30分ほど虫取りをした後は、藤吉先生による解説の時間。子どもたちの虫カゴに入っている虫を見ながら、虫の名前や生態について説明しました。藤吉先生は小学生にもわかりやすい言葉で説明し、様々な角度から興味を引き出します。たとえば、ベニシジミというチョウについては、植物も使って解説。藤吉先生は、その場に生えている植物の葉を取って大学生に食べてみるように言い、どんな味か尋ねました。「レモンのような味がします」という答えを聞き、「シュウ酸という酸味があり、酸っぱい葉だからスイバ(酸い葉)といいます。ベニシジミはスイバを食べるので、春先にはスイバの根もとに幼虫がいるはずだよ」と説明。「食べてみたい!」という児童が何人かいたので、藤吉先生がスイバを選んであげました。似たような葉でも食べられない葉もあるので、その場で見分けることができる専門家がいると安心です。子どもたちは目で見るだけでなく、手触りや葉の味など、五感を使って様々なことを学んでいました。子どもたちの好奇心にすぐに応えられる専門家の存在が、より深い学びへとつなげるために大きな役割を果たしていることが、子どもたちの表情からも伝わりました。

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4年生の児童2人にインタビュー

鯉川周辺での生き物探しの感想

4年生・男子
「最初の頃は虫が怖くて虫取りは嫌だなと思っていましたが、少しずつ慣れてきました。まだ苦手な部分もありますが、前よりは生き物と触れ合えるようになったと思います。今日は、お兄さんやお姉さんに手伝ってもらって、トンボやバッタなど、いろいろ取りました。虫取り網もだいぶ使えるようになりました。ちょっとずつ虫を触れるようになれたらいいので、次は網からカゴに入れるのを自分でやってみようかなと思っています」

4年生・女子
「今日は、バッタが何匹か取れました。まだ手では触れないので、網から直接カゴに入れたり、お兄さんやお姉さんに手伝ってもらっています。この授業をやる前は、バッタなどは捕まえたことはありませんでした。いろいろな生き物を見たり触ったりできるので、この授業は楽しいです。虫の名前とかはあまり知らないので、先生の解説を聞いたり、調べたりしてちょっとずつ覚えています。いつか、もっと大きなバッタや大きなチョウを捕まえたいです」

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4年生男子

4年生男子

4年生女子

4年生女子

取材協力

菅生学園初等学校

〒197-0801 東京都あきる野市菅生1468   地図

TEL: 042-559-9101

FAX:042-559-9120

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