取材レポート

啓明学園初等学校

啓明の英語教育をさらなる高みへと押し上げる「英語特進コース」

2023年度より従来の「国際英語コース」に代わり「英語特進コース」が設置されることになった啓明学園初等学校。「国際英語コース」のインターナショナルレベルとインターミディエイトレベルもそれぞれ“クラス”として明確に位置づけることによって、英語教育の可能性を追求しさらなる高みへと押し上げていくそうです。
今回は「英語特進コース」を設置した背景について校長の佐川康博先生にお話を伺うとともに、英語科の新先生とアトキン先生にも啓明の英語教育が今後どう変化・発展していくかについてお話いただきました。

啓明学園初等学校 校長 佐川康博先生のお話

英語科教諭 新史織先生、アトキンエリサ先生のお話
校長 佐川康博先生

校長 佐川康博先生

英語科教諭 新史織先生

英語科教諭 新史織先生

英語科教諭 アトキンエリサ先生

英語科教諭 アトキンエリサ先生

啓明学園初等学校 校長 佐川康博先生のお話

「個の学び」と「他とつながる学び」をバランスよく高めて子どもの力を育てる

英語教育についてお話する前に、本校の教育方針また概要について簡単にご説明させていただきます。まず本校では学びを2つに分けています。「個の学び」と「他とつながる学び」に大きく分けて、それぞれバランスよく高めることで子どもたちの力を育てています。

「個の学び」というのは本を読んだり、計算をしたり、基礎学力を高めるようなことですね。ただ一人で考えているだけでは広がりは生まれないので、「他とつながる学び」つまり学び合いによる授業を大切にしています。

考え合う、伝え合う、聴き合う。学び合いを大切にした教育

学び合いにも考え合う、伝え合う、聴き合うといったさまざまな場面がありますが、特に聴き合うの“聴く”といった点にご注目ください。ただなんとなく聞いているのではなく、相手の言葉に聴き入る、あるいは相手の立場になって聴くことの大切さをあらわすために「聞」ではなく「聴」の文字を使っています。

学び合いは本校の教育の真髄とも言うべきところで、他の人の考えを自分の中に取り入れて、自らの考えと照らし合わせ、自分の考えをさらに発展させ、それを他の人に説くことを大切にしています。また学び合いを通して他の人とつながることによって、人だけではなく物事とか事象についても同様に自ら必要に応じていろんなことをつないでいけるようになると考えています。

ここで大切なのは「他に、伝わる言葉を用いて、説く」つまりアウトプットするということですね。学習定着率に関するラーニングピラミッドのお話はお聞きになったことがあるかと思いますが、講義を受けたり本を読んだりするだけよりも人に教えたり説明したりすることによって学習定着率が上がるという有名な研究があります。

学齢レベルに合致した有用なツールとして英語を体得させる

ここからは英語教育にリンクするお話になりますが、本校の英語教育の方針として、学齢レベルに合致した有用なツールとして英語を体得することを目指しています。子どもだからこそ“体得”するというところが大事ですね。また体得するだけではなくて、体得したツールを十二分に活用できる力も育成します。

本校では、英語は私たち日本人にとっての日本語と同じように、自分の気持ちや考えを相手に伝えるためのツールだと考えています。小学校ではそのツールを自由自在に扱えるような礎づくりをしたいと思っています。

言葉の体得というのはそもそも耳に入ってくる言葉、音声をおぼえて真似して発することから始まるので、これも日本語をおぼえるのと同じですね。だから小さい時からやったほうが良い。ママやパパに何かを言いたいというところから始まって、おぼえて、真似て、発して、伝わったということの繰り返しから言葉を覚えていきます。本校の英語教育がセンテンスや音声、リズムを大切にしているのもそのためです。

小さい時から英語をいっぱい聴かせて、英語で言いたくなる場面をつくるというのが啓明の英語なんですね。文法説明から始めるなんてナンセンス。まずは音声をよく聴かせる。どれだけ聴いたか、どれだけ聴けたかが重要だと思っています。

子ども自身の目線、興味、関心の中で主体的に英語を体得する

また子ども自身の目線、興味、関心の中で主体的に体得するということも大切です。例えば、野球の好きな子どもにとって、大谷選手がホームランを打ったとか、膝をついて打ったあのプレーすごかったよねというのを英語で言いたいんです。私が中学生の時にやったような誰かの偉人伝を読むということでは無いんですね。子ども自身の目線、興味、関心の中で英語をやるというのはそういうことで、今はオンラインで中継も観られますし、大リーグの解説者は大谷選手のことを何て言っているんだろうと。そこがポイントですね。

英語教育においても興味、関心を引き出すことが大切で、そうした言語を介して意思を伝え合うこと、伝えたいという気持ちを引き出すことを本校では大切にしています。

週3時間、レベル別3クラス構成の英語教育を実践

本校では現在1年生から6年生まで全学年で週3時間の英語教育を行なっています。2023年度から「国際英語コース」に代わって「英語特進コース」を設置したことによって、レベル別3クラス構成の授業になりました。

特進は特別進度の略で、「インターナショナル・クラス」と「インターミディエイト・クラス」とに分かれます。「インターナショナル・クラス」は英語圏の学校と同じ学齢レベル、「インターミディエイト・クラス」はそのレベルを目指すクラスです。

また「一般英語クラス」も週3時間の授業で、5年終了時に英検3級から準2級以上を目指します。ちなみに「インターナショナル・クラス」は5年終了時で英検2級から準1級以上を目標としています。

「レベル別授業」と「体験的に学ぶ」英語教育の2本の柱

本校では、「レベル別授業」と「体験的に学ぶ」ことの2本柱で英語教育を実践しているのも特徴です。「レベル別授業」については先ほどお話したような音声、リズムを大切にした授業を行い、センテンスをたくさん聴かせます。

また「体験的に学ぶ」機会もたくさんありまして、例えば「Feel world」(worldには、多様な国名が入る)は3人に1人が国際生という本校の特色を生かした取り組みです。子どもたちのお父さん、お母さんをゲストティーチャーとして学校に招いて、各国の文化や生活について教えていただきます。

「Feel イギリス」ではアフタヌーンティーも楽しみましたね。これは語学の勉強になるだけではなく、身近な人を通して生の文化に触れられる機会でもあり、実体験を通して体得できることというのはかなり多いので、そういう意味でも「体験的に学ぶ」ことの重要性を感じています。

またコロナ前に行なっていたオーストラリアにある姉妹校との国際交流ツアーや福島県にあるブリティッシュ・ヒルズでの国内留学体験も再開します。2023年度からスタートする新しい取り組みとしては、2023年1月にオープンした立川のTGG(Tokyo Global Gateway)に必修として行くことになりました。子どもたちにとって実践、挑戦の場が増えると思います。

このような取り組みの成果は英検の結果にも出てきますし、1、2年生の英語劇や5、6年生のスピーチプレゼンテーションにもつながっていきます。結果が出るようになると子どもたちの意欲もさらにアップしますし、そのサイクルがくるくると回る好循環を生み出していると思います。

英語教育に限らず、学び合いや体験を通して学べる恵まれた学習環境

今回の「英語特進コース」の設置は、帰国生では無いけど英語を学ばせたい、インターナショナルスクールではなく日本の学校の良いところも学ばせたいと考えるご家庭にとって新しい選択肢のひとつになると思います。

本校には客観的な根拠に基づいた英語教育の体系的なオリジナルカリキュラムもありますし、3人に1人が国際生という英語を体得する恵まれた環境もあります。また英語教育に限らず学び合いを基本とした授業スタイルは、これからの時代に求められる自ら学び、探究する力を育みます。約3万坪の敷地を生かした森あそびや農園活動などさまざまな体験学習もありますので、豊かな人間性を育む良い環境だと思います。

英語科教諭 新史織先生、アトキンエリサ先生のお話

2023年度から始まる「英語特進コース」について英語科の先生にあらためてご案内いただくとともに、着任2年目の新先生に啓明の英語教育の魅力、強みについてもお話いただきました。

2023年度の「英語特進コース」は10名でスタート

新先生

2023年度から、「国際英語コース」が「英語特進コース」に変わります。インターナショナルレベルとインターミディエイトレベルもそれぞれ「インターナショナル・クラス」、「インターミディエイト・クラス」という名称に変わります。

これまで「国際英語コース」は主に帰国生や国際結婚などさまざまなバックグラウンドを持つお子さんが対象でしたが、最近は国内のインターナショナル幼稚園や英語の塾などにお子さんを通わせて小さい頃から英語教育に熱心に取り組むご家庭も多くいらっしゃるので、そういうご家庭のお子さんたちにも啓明の英語教育を受けていただけるように「英語特進コース」を設けることになりました。

まず入試の時点で「英語特進コース」を選んでいただき、合格した後に「インターナショナル・クラス」か「インターミディエイト・クラス」かのクラス分けが行われます。2023年度は新1年生のうち10名が「英語特進コース」でスタートすることになりました。

子どもの英語力に合わせてより良いアプローチ、カリキュラムを追求

新先生

「国際英語コース」から「英語特進コース」に変わったことで、学習内容やカリキュラムが大きく変わるということはありません。これまでと同じく英語圏の学校における学年相応の英語力を身に付ける「インターナショナル・クラス」とそのレベルを目指す「インターミディエイト・クラス」ということで、英語力に応じた学習内容と授業を提供していきます。

英語力に合わせてクラス分けをするので、習熟度であったり言葉の発達にあった授業内容を追求していけるようになると考えています。子どもの英語力に合わせた内容をより良いアプローチ、より良いカリキュラムを通して追求していけるということです。

学校全体で英語の授業について考える一体感

「啓明学園初等学校が取り組む英語教育の実際」については、以前の取材でもお話いただきましたが、着任2年目を迎える新先生に啓明の英語教育の魅力、強みについてあらためてお話いただきました。

新先生

いつも子どもの学びが中心にあるところが魅力かなと思います。目の前の子どもたちと対話をしながら授業を進めています。例えば、学習指導計画と照らし合わせて必要な力が身についていないなと感じたときは「もうちょっと頑張って一緒にやってみよう」と繰り返し学習したり、子どもたちが熱心に取り組んでいる英語劇の話題を持ち出して「英語でこんな表現が出てきたよね」と投げかけたり。子どもたちの興味や関心に寄り添って授業を進めているところも魅力だなと感じています。

啓明ではこういう風に英語の授業をしたいという芯のようなものを感じています。私が以前勤めていた学校では好きなようにやらせてもらえる環境で、信頼されているのを感じる反面ひとりで何もかも決める難しさも責任もありました。啓明には教員同士で授業を見せ合う研究会があるのですが、そういう時にも啓明の英語教育はこういう考えをしているからもっとこういう風にやっていくと良いかもしれないねとアドバイスしてくれたり、学校全体で英語教育を考えてくれているというのが強みであり頼もしいなと思っています。

「英語のことはわからないから...」と英語科だけがポツンと取り残されてしまうのではなくて、学校全体の一部として受け止めてくれているのが良いなと思っています。また啓明には学び続けている先生がたくさんいらっしゃるので、自分ももっと学ばなきゃいけないという気持ちで毎日過ごしています。

将来にわたって英語力を伸ばすための根っこを育てる啓明の英語教育

新先生

もうひとつ、啓明の英語教育は根っこの部分を育てていくところが非常に大きいなと思っています。その根っこがどれだけ深くなったかによって将来子どもたちがどういう風に伸びていくかが変わってくると思うので、例えば英検で○級取ったという結果よりも、将来にわたって英語力を伸ばすための肥料をたくさんあげられる今のかたちというのは私はすごく意味のあることをしていると思います。

もちろんクラスの目標を表す指標として英検○級レベルというのはありますが、それは決して英検を目的に学習をしているのではなくて、英語の力が身につけば自ずと英検に受かるということをあらわしています。小学校を卒業した後も中学、高校、大学と英語を学び続けるための基礎体力をしっかり身につけられるのが啓明の英語教育です。

目を輝かせてやりたいと言う子どもに驚かされたスピーチコンテスト

啓明のスピーチコンテストをはじめて見たときの感想についてもお話しいただきました。

新先生

私の感覚としては、5、6年生くらいから人前で英語を話すのはちょっと恥ずかしいとか、みんなの前で言うなんて上手に言えないし嫌だなという子がほとんどかと思いますが、啓明は「スピーチコンテストで発表してみたい人いますか?」って聞いたら、たくさん手が上がって、まずそこに驚きました。目を輝かせてやりたいと言っている子がたくさんいたので、英語に対する抵抗感が無いんだなというのを感じました。

きっと1年生の時から英語をたくさん聴いて、先生ともたくさんやりとりをして、伝わった、伝わらなかったといったいろんな経験を積み重ねているからこそやりたいって気持ちにつながっているんだろうなと。驚きと同時に英語の教員として悦びも感じました。

スピーチの内容もすごく子どもらしいものもあれば社会的な問題、戦争や差別についての発表もありました。自分はこう思っているということを他人に臆せず出せるところもすごく素敵だなと思いました。

「英語特進コース」のスタートは教員にとっても現状を見直すチャンス

「英語特進コース」のスタートに向けてお考えになっていることや、今後取り組んでみたいことなどについて新先生、アトキン先生にそれぞれお話を伺いました。

新先生

英語力に合わせてより明確なクラス分けをしようということで「英語特進コース」が設置されました。私たち教員にとっては新しい制度がスタートするタイミングなのでいろいろなことを見直すきっかけになると思っています。啓明にはすでに確立された体系的なカリキュラムがありますが、子どもにもっと英語の力をつけさせるためにはどうしたら良いか、自分たちにできることはまだまだあると思っています。

1年生の時にもっとこういうアプローチをしておけば高学年の学習につながるんじゃないかとか、ひとつひとつ検証することがたくさんあるので、これを機にもう一回私たちも気持ちを新たにして英語教育に取り組もうと思っています。

アトキン先生

両親がともに日本人で普段の生活は日本語を話していますといったお子さんも多く入ってくることが考えられますので、自宅でどのようにもっと英語に触れられるか、もっと効果的、効率的に自宅で学習するための手立てを考えています。

iPadを使った学習やMobyMaxというオンラインプログラムはそういうお子さんたちにも効果的かなと思うのと、さらにそういう子たちにとってもっと良い手立てはないかということを考えています。

ただ実際にはどんなお子さんが入ってくるか分からないので、新年度が始まってみて、子どもたちをよく見ながらカリキュラムを組み立てていこうと思います。さらに家庭学習をどう支援するかは今後考えていかなければならない課題だと思います。

コロナ禍になって今もマスクをしながら授業をしていますが、マスクを通して喋ることで声がくぐもってしまいます。子どもたちがしっかり発音できているのか、しっかり音声を聞き取れているのか音の理解で難しさを感じていました。

低学年は特にマスクをしていると音だけを頼りに口の動きを作るというのが難しいので、今後マスクが無くなることで口の形を真似しながら視覚的にも見られるようにするというのがやりたいことのひとつですね。もうひとつは低学年のうちに英語の歌を歌える環境があれば、音のつながりや英語を楽しむというようなことから子どもたちの英語の力をつけていけると思います。

Zoomで授業した時は子どもたちの表情が見えなくて難しかったのを覚えていますが、対面でマスクをしないで子どもたちが授業中に笑っているのとか、ちょっと難しいなと感じている表情を見ながら一緒に授業ができるのを楽しみにしています。

英語教室にはライブラリーがあって、英語の本がたくさんあります。家庭学習にもなりますし本を借りるよう推奨しているので、読んでみたい人はいつでも借りに来てください。

最後に、アトキン先生に最近がんばっていることについてインタビューしました。

There's so many books in the library.
Sometimes the kids ask me, what should I read ?

So I'm trying to read more books, doing more reading because we encourage our kids to read.

I read an interesting book, The Phantom Tollbooth.
I enjoyed that one.

The story follows a young boy named Milo and a dog named Tock and the Humbug.
They travel fantastical world, Kingdom of Wisdom.
And they try to bring back princesses, named Rhyme and Reason.

It's great because there's a lot of play on words which a native speaker would pick up on.
So I really enjoyed that aspect of it.

編集後記

今回の取材を通じて、啓明が学校全体で英語教育に取り組んでいるという一体感と、体系的に確立されたカリキュラムを見直してさらなる高みを目指そうとする探究の姿勢にあらためて魅力を感じました。

新先生にお話しいただいた啓明の英語教育の魅力も、率直な感想であると同時に共感できる部分が多く、新しく開かれた「英語特進コース」というチャンスに挑戦してみようと思わせてくれる素晴らしいメッセージになりました。

取材協力

啓明学園初等学校

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