帝塚山学院小学校
AI時代にこそ輝く「人間力」を。110年の伝統と革新が紡ぐ、自ら学び、共創する力
110年を超える歴史を誇る帝塚山学院小学校は、創設以来「意志の力・情の力・知の力・躯幹の力」という4つの力を育てる「力の教育」を大切にしてきました。さらに、「自学主義」の理念のもと、児童たちが自らの存在意義を見出し、必要な学びを選び取り、主体的に学ぶ姿勢を育むことを重視しています。「伝統は伝承ではなく、日々の革新によって輝く」といった考えのもと、現在の教育がどのように進化を続けているのか、お話を伺いました。
帝塚山学院小学校 入試広報部長 池本篤先生・国語科 井原暢子先生のお話
帝塚山学院小学校 入試広報部長 池本篤先生・国語科 井原暢子先生のお話
入試広報部長 池本篤先生
国語科 井原暢子先生
帝塚山学院小学校 入試広報部長 池本篤先生・国語科 井原暢子先生のお話
限界を乗り越えた涙が、一生の自信に変わる「本物体験」
「AIには代替できない、人間ならではの力を育てる。その根幹にあるのが『本物体験』です」
知識を社会で生かし、仲間と未来を切り拓く大人を理想に掲げる帝塚山学院小学校。『本物の体験』にこだわり、五感をフルに使う場を数多く用意しています。 なかでも、学校の個性が一番表れているのが、4年生から始まる『臨海学舎』です。山口県萩市の海を舞台に、4泊5日の行程を4年・5年・6年と3年連続で経験します。親元を離れて仲間と過ごすこの行事は、児童たちの心に計り知れない影響を与えます。
池本先生は、ある女子児童との忘れられないエピソードを教えてくれました。
「泳ぐのが苦手で、行く前からずっと不安を口にしていた児童がいたのです。本番の遠泳テストでも、彼女は大きく遅れてしまいました。遠くから見ていても、きっと泣いているのだろうなと分かるようすでしたが、それでも彼女は必死に腕を動かし、最後まで諦めずにゴールしました。」
足が着いた瞬間、その子は先生のもとへ駆け寄り、「先生、頑張ったよ!」と大声をあげて泣きじゃくったといいます。
「その涙は、不安から解放された安堵と、やり遂げた喜びが混ざり合ったものでした。それから数年後、中学生になった彼女に再会した際、『あの臨海を泳ぎ切った経験があるから、今なら何でも頑張れると思う』と言ってくれたのです。10歳の時に味わった『苦難を乗り越えた瞬間』の記憶が、大学受験やその先の人生においても、彼女を支え続ける。これこそが、私たちが提供したい学びの価値なのです」
この臨海学舎では、単に泳力を競うのではありません。海の上で縦横の列を揃え、仲間のスピードに合わせ、アイコンタクトで意思疎通を図りながらチーム全員でゴールを目指します。競争ではなく、恊働の価値が根づいているのも特徴です。この挑戦を支えるため、先生は救命講習を受けるなど万全の体制で臨んでいます 。
知識を社会で生かし、仲間と未来を切り拓く大人を理想に掲げる帝塚山学院小学校。『本物の体験』にこだわり、五感をフルに使う場を数多く用意しています。 なかでも、学校の個性が一番表れているのが、4年生から始まる『臨海学舎』です。山口県萩市の海を舞台に、4泊5日の行程を4年・5年・6年と3年連続で経験します。親元を離れて仲間と過ごすこの行事は、児童たちの心に計り知れない影響を与えます。
池本先生は、ある女子児童との忘れられないエピソードを教えてくれました。
「泳ぐのが苦手で、行く前からずっと不安を口にしていた児童がいたのです。本番の遠泳テストでも、彼女は大きく遅れてしまいました。遠くから見ていても、きっと泣いているのだろうなと分かるようすでしたが、それでも彼女は必死に腕を動かし、最後まで諦めずにゴールしました。」
足が着いた瞬間、その子は先生のもとへ駆け寄り、「先生、頑張ったよ!」と大声をあげて泣きじゃくったといいます。
「その涙は、不安から解放された安堵と、やり遂げた喜びが混ざり合ったものでした。それから数年後、中学生になった彼女に再会した際、『あの臨海を泳ぎ切った経験があるから、今なら何でも頑張れると思う』と言ってくれたのです。10歳の時に味わった『苦難を乗り越えた瞬間』の記憶が、大学受験やその先の人生においても、彼女を支え続ける。これこそが、私たちが提供したい学びの価値なのです」
この臨海学舎では、単に泳力を競うのではありません。海の上で縦横の列を揃え、仲間のスピードに合わせ、アイコンタクトで意思疎通を図りながらチーム全員でゴールを目指します。競争ではなく、恊働の価値が根づいているのも特徴です。この挑戦を支えるため、先生は救命講習を受けるなど万全の体制で臨んでいます 。
日本文化への誇りを育む感性教育
同校の独自性は、文化芸術教育にも色濃く表れています。特筆すべきは、伝統芸能の体験学習です。
5年生では、1週間かけて卒業生であるプロの能楽師から直接指導を受ける「能体験」が行われます。最後には学院の浴衣と袴を身にまとい、保護者の前で演じるまでを 経験します。
「能の歴史について、深く内容を聞いた上で、扇子の動かし方や挨拶の作法などの所作を教えてもらうので、児童も理解しやすく、今まさに日本の文化を教えてもらっているんだという実感と、日本人としての誇りも芽生えます。単に教科書上で学ぶことと、体験して学ぶこととでは、児童のようすが全く異なります。」と国語科の井原暢子先生は語ります。
また、図工の授業で行われる「歌舞伎体験」もとてもユニーク。実際に舞台を鑑賞した後、児童たちは自分の顔に「隈取」を施します。 最初は顔を白く塗るのを恥ずかしがっていた子も、隈取の色が持つ意味(正義や怒りなど)を理解すると、鏡を見つめる目が一気に真剣になります。大人でも経験したことがないような『本物』に触れることで、児童たちの表現力や感性は一気に開花するようです。
「これからのグローバル社会に向け、英語も大切ですが、自分の国の文化を伝えることはすごく大事なことです。こういった体験は、児童たちが国際社会へ出た際にも、海外の人へ自らの体験として語れる揺るぎないアイデンティティとなるでしょう」と井原先生はおっしゃいました。
5年生では、1週間かけて卒業生であるプロの能楽師から直接指導を受ける「能体験」が行われます。最後には学院の浴衣と袴を身にまとい、保護者の前で演じるまでを 経験します。
「能の歴史について、深く内容を聞いた上で、扇子の動かし方や挨拶の作法などの所作を教えてもらうので、児童も理解しやすく、今まさに日本の文化を教えてもらっているんだという実感と、日本人としての誇りも芽生えます。単に教科書上で学ぶことと、体験して学ぶこととでは、児童のようすが全く異なります。」と国語科の井原暢子先生は語ります。
また、図工の授業で行われる「歌舞伎体験」もとてもユニーク。実際に舞台を鑑賞した後、児童たちは自分の顔に「隈取」を施します。 最初は顔を白く塗るのを恥ずかしがっていた子も、隈取の色が持つ意味(正義や怒りなど)を理解すると、鏡を見つめる目が一気に真剣になります。大人でも経験したことがないような『本物』に触れることで、児童たちの表現力や感性は一気に開花するようです。
「これからのグローバル社会に向け、英語も大切ですが、自分の国の文化を伝えることはすごく大事なことです。こういった体験は、児童たちが国際社会へ出た際にも、海外の人へ自らの体験として語れる揺るぎないアイデンティティとなるでしょう」と井原先生はおっしゃいました。
「答えのない問い」にチームで挑む、帝塚山流・恊働学習
児童の主体性を育む「探究学習」を、仲間と協力して結論を導き出す「恊働学習」へと深化させています。
昨年の6年生は、「オオサンショウウオ」をテーマに生態から環境破壊の歴史、データ分析まで、教科の枠を超えた「教科横断型」の学びに取り組みました。理科を担当した池本先生は、次のように語ります。
「オオサンショウウオが生息するダムによって、元の場所に戻れないオオサンショウウオについて、グループで解決策を議論しました。『ダムにエレベーターをつけよう』といった柔軟なアイデアに対し、費用面などの現実的な課題をぶつけると、また必死に議論が始まる。この『答えのない問い』に対し、お互いを認め合いながらコミュニケーションを取る姿こそ、社会で最も必要とされる力だと確信しています」
こうした学びの背景には、同校の教育理念「自学主義」があります。 「一般的に探究は一人で行うことが多いですが、本校ではあえて立心偏(りっしんべん) の『恊働』という文字を使い、心を合わせて考えることを重視しています。教員が好奇心のきっかけを作れば、児童は自ら調べ、主体的に学び始めます。校内には学びのヒントが溢れていますから、毎日の生活そのものを楽しんでほしいです!」
昨年の6年生は、「オオサンショウウオ」をテーマに生態から環境破壊の歴史、データ分析まで、教科の枠を超えた「教科横断型」の学びに取り組みました。理科を担当した池本先生は、次のように語ります。
「オオサンショウウオが生息するダムによって、元の場所に戻れないオオサンショウウオについて、グループで解決策を議論しました。『ダムにエレベーターをつけよう』といった柔軟なアイデアに対し、費用面などの現実的な課題をぶつけると、また必死に議論が始まる。この『答えのない問い』に対し、お互いを認め合いながらコミュニケーションを取る姿こそ、社会で最も必要とされる力だと確信しています」
こうした学びの背景には、同校の教育理念「自学主義」があります。 「一般的に探究は一人で行うことが多いですが、本校ではあえて立心偏(りっしんべん) の『恊働』という文字を使い、心を合わせて考えることを重視しています。教員が好奇心のきっかけを作れば、児童は自ら調べ、主体的に学び始めます。校内には学びのヒントが溢れていますから、毎日の生活そのものを楽しんでほしいです!」
個に寄り添う教育で「自学主義」の芽を育てる
「自ら学ぶ」姿勢を育てるためには、児童たちが安心して自分を出せる環境と、個々の習熟度に合わせたサポートが欠かせません。「個に寄り添う教育」を具現化する複数のシステムが構築されています。
1.毎日交わされる「日記指導」
全学年で、教員と児童による毎日の日記交換が行われています。これは単なる文章指導ではありません。「友達関係の悩みや、親にも言えない小さな不安を日記に綴ってくれる子がいます。担任はそれを読み、適切なタイミングで声をかけます。週に一度ではなく『毎日』交換することで、児童たちとの信頼関係が深くなり、学習に向かう心の土台が作られるのです」と、入試広報部長の池本先生は語ります。
2.独自のオリジナル教材「てづかんじ」と「ぐんどくん」
オリジナル教材がある学校は珍しいのですが、同校では教材開発にも力を入れているのが大きな特色です。6年生となると、入試対策に入るため、6年生の1学期までには小学校で学ぶ全ての学習を終えるようにしています。市販の教材では、スピードに追いつけないという思いから、オリジナル教材を制作しています。
1.毎日交わされる「日記指導」
全学年で、教員と児童による毎日の日記交換が行われています。これは単なる文章指導ではありません。「友達関係の悩みや、親にも言えない小さな不安を日記に綴ってくれる子がいます。担任はそれを読み、適切なタイミングで声をかけます。週に一度ではなく『毎日』交換することで、児童たちとの信頼関係が深くなり、学習に向かう心の土台が作られるのです」と、入試広報部長の池本先生は語ります。
2.独自のオリジナル教材「てづかんじ」と「ぐんどくん」
オリジナル教材がある学校は珍しいのですが、同校では教材開発にも力を入れているのが大きな特色です。6年生となると、入試対策に入るため、6年生の1学期までには小学校で学ぶ全ての学習を終えるようにしています。市販の教材では、スピードに追いつけないという思いから、オリジナル教材を制作しています。
- てづかんじ:5年生までに小学校で学ぶ全1,026字を習得する計画的なテスト用ドリルです。単に字を覚えるだけでなく、その漢字を使った高度な熟語や特殊な読み方も収録されており、中学入試にも直結する高い語彙力を養います。
- ぐんどくん:1年生から古典や名作に親しむための群読集です。『草枕』や『蜘蛛の糸』、百人一首などを遊びながら覚えることで、「言葉の貯金」を増やします。低学年の児童たちが、休み時間にゲーム感覚で百人一首を暗唱する姿は、日常的な風景になっています。
3.フォローアップとコース別授業
主要教科に加え、イノベーションスタディーズなどの各教科で、専科教員と担任による「チームティーチング」を実施しています。複数の目で児童を見守ることで、つまずきを早期に発見し、一人ひとりの理解度や関心に応じたきめ細やかな対応を可能にしています。また、放課後の「フォローアップ学習」では、つまずきをそのままにしない丁寧な個別指導を徹底。高学年では、目標に合わせたコース別授業も導入し、発展的な学びを求める意欲や中学入試への対策にも柔軟に答えています。
主要教科に加え、イノベーションスタディーズなどの各教科で、専科教員と担任による「チームティーチング」を実施しています。複数の目で児童を見守ることで、つまずきを早期に発見し、一人ひとりの理解度や関心に応じたきめ細やかな対応を可能にしています。また、放課後の「フォローアップ学習」では、つまずきをそのままにしない丁寧な個別指導を徹底。高学年では、目標に合わせたコース別授業も導入し、発展的な学びを求める意欲や中学入試への対策にも柔軟に答えています。
デジタルを「文房具」に変える。最先端のICT教育
帝塚山学院小学校は、伝統を重んじる一方で、最先端のICT教育でも先駆的な存在です。「イノベーションスタディーズ」という独自の教科を設け、1年生からタイピングや情報モラルを学びます。
「3年生で1人1台の端末を所有する頃には、児童にとってタブレットは鉛筆と同じ『文房具』になっています」と池本先生。
6年生によるプレゼンテーションコンテストは圧巻です。歴史上の人物になりきり、マイク一本とスライドを駆使して、聞いている人の心を動かすスピーチを行います。
「世界的に著名な起業家のプレゼンを参考に、文字を極限まで減らし、写真一枚で想いを伝える児童もいます。ある卒業生からは、『小学校でのプレゼン経験があったから、中学校のプレゼンテーションコンテストで入賞できました』という嬉しい報告も届きました」と池本先生。
さらに、昨年度からは生成AIについての授業も開始。「どの動画がAIによって作られたものか」を見抜く目を養うなど、テクノロジーに使われるのではなく、主体的に使いこなす「人間力」を磨いています。
「3年生で1人1台の端末を所有する頃には、児童にとってタブレットは鉛筆と同じ『文房具』になっています」と池本先生。
6年生によるプレゼンテーションコンテストは圧巻です。歴史上の人物になりきり、マイク一本とスライドを駆使して、聞いている人の心を動かすスピーチを行います。
「世界的に著名な起業家のプレゼンを参考に、文字を極限まで減らし、写真一枚で想いを伝える児童もいます。ある卒業生からは、『小学校でのプレゼン経験があったから、中学校のプレゼンテーションコンテストで入賞できました』という嬉しい報告も届きました」と池本先生。
さらに、昨年度からは生成AIについての授業も開始。「どの動画がAIによって作られたものか」を見抜く目を養うなど、テクノロジーに使われるのではなく、主体的に使いこなす「人間力」を磨いています。
まとめ
取材前、大阪北部に住む私にとって、帝塚山は少し遠いイメージがありましたが、実際は梅田から20分圏内、難波や天王寺からは約10分という利便性の良さに驚かされました。南海高野線「帝塚山」駅にほぼ直結の登校環境に加え、警備員の配置、先生方も駅で指導にあたるなど、安全面の配慮が徹底されています。都心へ向かうラッシュとは逆方向の電車になるため、低学年でも負担なく通える点も、大きな安心材料になると思いました。
今回の取材で最も印象的だったのは、110年の伝統が今の時代を生きる児童たちの背中を押し、次の一歩を支える「道しるべ」となっていることでした。
伝統が育む揺るぎない自信と、未来を見据えた革新的な学び、先生方の熱い想いに触れ、AI時代を生き抜く「人間力」を育める確かな環境がここにあります。「実際に足を運んで、児童の活気や教員の情熱に触れてみてください。キャンパスでお待ちしています」と取材の最後に池本先生は力強い笑顔でそう結ばれました。
今回の取材で最も印象的だったのは、110年の伝統が今の時代を生きる児童たちの背中を押し、次の一歩を支える「道しるべ」となっていることでした。
伝統が育む揺るぎない自信と、未来を見据えた革新的な学び、先生方の熱い想いに触れ、AI時代を生き抜く「人間力」を育める確かな環境がここにあります。「実際に足を運んで、児童の活気や教員の情熱に触れてみてください。キャンパスでお待ちしています」と取材の最後に池本先生は力強い笑顔でそう結ばれました。








