賢明学院小学校
初の卒業生女性校長が語る「言葉の力」と「逆算の思考」。伝統のカトリック精神のもと、自ら考え行動する児童を育む学びとは
カトリックの精神に基づく人間教育を大切にしてきた賢明学院小学校。学校が建つこの土地は、カトリック教育の実現を願った田口芳五郎枢機卿が私財を投じて取得し、寄付した由緒ある場所です。未来を担う児童たちへの深い願いが込められた学び舎として、歩みを重ねるとともに、安心して学べる教育環境も大切に守り続けてきました。2026年度には、初の卒業生出身校長として古川ルミ校長が就任。卒業生として母校へ戻ってきた古川校長に、同校が大切にしている教育と、これからの時代を生きる児童たちに必要な力について、お話を伺いました。
賢明学院小学校 校長 古川ルミ先生のお話
賢明学院小学校 校長 古川ルミ先生のお話
校長 古川ルミ先生
賢明学院小学校 校長 古川ルミ先生のお話
卒業生として母校へ。初の卒業生校長が受け継ぐ伝統
「在籍していた頃と、校長として戻ってきた今とでは、やはり見える景色が全く違いますね。立場が変わったのだなと日々実感しております」
そう穏やかに語るのは、校長に就任した古川ルミ先生です。古川校長は、小学校から高校までを賢明学院で過ごした卒業生。日本女子大学卒業後、大阪教育大学大学院を修了。その後も専門分野の研鑽を積むために、研究機関等で学んでおられました。公立中学校や大阪教育大学附属天王寺中学校で教壇に立ち、和泉市教育委員会、大阪教育大学附属池田中学校副校長など、さまざまな教育現場や教育行政で経験を重ねてこられました。卒業生が校長を務めるのは学院初のことです。
「まさか私が校長として戻ってくるとは思っていませんでした。本当にご縁だと思っています」
就任後は、卒業生や関係者から数多くの激励の声が届いているそうです。
「卒業生初の校長ということで、本当にたくさんの方が応援してくださっています。ありがたいことに、応援団がたくさんいます」
久しぶりに母校へ戻り、時代の変化を感じる一方で、変わらない校風も感じているといいます。
「私が在学していた頃は、小・中・高校あわせて16名ほどのシスターがいらっしゃいました。今はその環境も大きく変わりましたが、児童たちの優しさは変わっていません。人のことを考えられる児童が本当に多く、お互いを思いやる落ち着いた雰囲気こそが、賢明学院の素晴らしい伝統だと感じています」
卒業生として母校を見つめる視点と、多くの教育現場を経験してきた教育者としての視点。その両方を持つ古川校長だからこそ、長年受け継がれてきた校風の価値を、改めて実感されているようでした。
そう穏やかに語るのは、校長に就任した古川ルミ先生です。古川校長は、小学校から高校までを賢明学院で過ごした卒業生。日本女子大学卒業後、大阪教育大学大学院を修了。その後も専門分野の研鑽を積むために、研究機関等で学んでおられました。公立中学校や大阪教育大学附属天王寺中学校で教壇に立ち、和泉市教育委員会、大阪教育大学附属池田中学校副校長など、さまざまな教育現場や教育行政で経験を重ねてこられました。卒業生が校長を務めるのは学院初のことです。
「まさか私が校長として戻ってくるとは思っていませんでした。本当にご縁だと思っています」
就任後は、卒業生や関係者から数多くの激励の声が届いているそうです。
「卒業生初の校長ということで、本当にたくさんの方が応援してくださっています。ありがたいことに、応援団がたくさんいます」
久しぶりに母校へ戻り、時代の変化を感じる一方で、変わらない校風も感じているといいます。
「私が在学していた頃は、小・中・高校あわせて16名ほどのシスターがいらっしゃいました。今はその環境も大きく変わりましたが、児童たちの優しさは変わっていません。人のことを考えられる児童が本当に多く、お互いを思いやる落ち着いた雰囲気こそが、賢明学院の素晴らしい伝統だと感じています」
卒業生として母校を見つめる視点と、多くの教育現場を経験してきた教育者としての視点。その両方を持つ古川校長だからこそ、長年受け継がれてきた校風の価値を、改めて実感されているようでした。
「言語活動」がすべての学びの土台になる
今後の教育について尋ねると、古川校長が真っ先に挙げたのは「言語活動を基盤とした教育」でした。
「やはり言語活動を重視しているからこそ、算数の文章題も理解できますし、英語教育にもつながります。ベースには国語がありますが、図や表を読み解く力や、自分の考えを表現する力も含めて、言語活動そのものが、すべての学びの土台になると考えています」
古川校長が重視しているのは、国語だけではなく、さまざまな情報を読み取り、自分の考えを伝える力を含めた「言語活動」全体です。
「今の私があるのも、賢明学院で培った言語力のおかげだと思っています」
在学中から文章を書くことが好きだったという古川校長。大学生まで内閣官房長官賞や厚生大臣賞など数々の論文コンクールで受賞を重ねてきたそうです。その言語力を支えてきたのが、賢明学院で長年続いている読書と日記の習慣です。
「小学校1年生から毎日日記を書く宿題があります。低学年のうちは短い文章から始まりますが、その日の出来事を振り返り、『何があったのか』『自分はどう感じたのか』を言葉にしていきます。自分の考えを整理し、限られた言葉で伝えることは、大人にとっても容易なことではありません。だからこそ、毎日少しずつ積み重ねることで、自然と考える力や表現する力が育っていくのです」
低学年では1行から始まる日記も、高学年になると1ページほどの文章になります。日々の積み重ねが、自分で考え、自分の言葉で伝える力へとつながっていくのです。
また、賢明学院小学校ではICT活用を進める一方で、「アナログな体験」も同じように大切にしています。デジタル全盛の現代だからこそ、使い始める時期を、大切に見極めています。
「タブレット端末の本格的な活用は3年生からとしています。1・2年生の間は、基本的な学びの土台を育むことを大切にしており、2年生からは『国語辞典』に親しむ時間を設けています。デジタルに触れる前に、自分の辞書をめくり、言葉を調べる楽しさを体感することを大切にしているのです。スマートフォンなどで検索すれば一瞬で答えは出ますが、それでは他の言葉が目に入りません。紙の辞書をめくれば、その言葉の前後にある文字も自然と視界に入り、語彙が豊かに広がっていきます。鉛筆を持って、紙の匂いを感じながら自分で調べる。この『読む・書く・調べる』という学びのステップを進めた上で、デジタルとアナログの両方の良さをバランス良く身につけてこそ、豊かな学びが育まれると考えています」
「やはり言語活動を重視しているからこそ、算数の文章題も理解できますし、英語教育にもつながります。ベースには国語がありますが、図や表を読み解く力や、自分の考えを表現する力も含めて、言語活動そのものが、すべての学びの土台になると考えています」
古川校長が重視しているのは、国語だけではなく、さまざまな情報を読み取り、自分の考えを伝える力を含めた「言語活動」全体です。
「今の私があるのも、賢明学院で培った言語力のおかげだと思っています」
在学中から文章を書くことが好きだったという古川校長。大学生まで内閣官房長官賞や厚生大臣賞など数々の論文コンクールで受賞を重ねてきたそうです。その言語力を支えてきたのが、賢明学院で長年続いている読書と日記の習慣です。
「小学校1年生から毎日日記を書く宿題があります。低学年のうちは短い文章から始まりますが、その日の出来事を振り返り、『何があったのか』『自分はどう感じたのか』を言葉にしていきます。自分の考えを整理し、限られた言葉で伝えることは、大人にとっても容易なことではありません。だからこそ、毎日少しずつ積み重ねることで、自然と考える力や表現する力が育っていくのです」
低学年では1行から始まる日記も、高学年になると1ページほどの文章になります。日々の積み重ねが、自分で考え、自分の言葉で伝える力へとつながっていくのです。
また、賢明学院小学校ではICT活用を進める一方で、「アナログな体験」も同じように大切にしています。デジタル全盛の現代だからこそ、使い始める時期を、大切に見極めています。
「タブレット端末の本格的な活用は3年生からとしています。1・2年生の間は、基本的な学びの土台を育むことを大切にしており、2年生からは『国語辞典』に親しむ時間を設けています。デジタルに触れる前に、自分の辞書をめくり、言葉を調べる楽しさを体感することを大切にしているのです。スマートフォンなどで検索すれば一瞬で答えは出ますが、それでは他の言葉が目に入りません。紙の辞書をめくれば、その言葉の前後にある文字も自然と視界に入り、語彙が豊かに広がっていきます。鉛筆を持って、紙の匂いを感じながら自分で調べる。この『読む・書く・調べる』という学びのステップを進めた上で、デジタルとアナログの両方の良さをバランス良く身につけてこそ、豊かな学びが育まれると考えています」
言葉の力の先にある英語教育
こうした「言葉の力」の土台があるからこそ、賢明学院小学校の英語教育も深い学びへとつながっています。
「大切なのは『第一言語(日本語)』がしっかりと築かれていることです。私たちが物事を考えるときのベースには、常に日本語があるからです。上手に英語を発音できても、頭の中で深く考える力が育っていなければ、中身のある対話はできません。まずは母国語の基礎を築き、その上で、国際社会で活用できる『生きた英語』を楽しく身につけていってほしいと願っています」
同校の英語授業では、児童が主体となって活動し、教員はそれを支える役割を担います。オールイングリッシュの環境の中で、児童たちは自然と英語を使いながら学んでいきます。
また、児童の英語力を確かめるため、国際基準の英語テスト「TOEFL Primary」を導入。文部科学研究財団を通じてアメリカのETS(教育テストサービス)と交流し、実際のデータをフィードバックし、新しいテストの開発協力まで行っています。文部科学省事業「AIの活用による英語教育強化事業」のモデル校(2025年度)に指定されているなど、日本の英語教育をリードする存在として、教育関係各位や他校からも高い注目を集めています。伝統を大切にしながら、新しい学びにも積極的に挑戦する。その姿勢が賢明学院の大きな魅力です。
「大切なのは『第一言語(日本語)』がしっかりと築かれていることです。私たちが物事を考えるときのベースには、常に日本語があるからです。上手に英語を発音できても、頭の中で深く考える力が育っていなければ、中身のある対話はできません。まずは母国語の基礎を築き、その上で、国際社会で活用できる『生きた英語』を楽しく身につけていってほしいと願っています」
同校の英語授業では、児童が主体となって活動し、教員はそれを支える役割を担います。オールイングリッシュの環境の中で、児童たちは自然と英語を使いながら学んでいきます。
また、児童の英語力を確かめるため、国際基準の英語テスト「TOEFL Primary」を導入。文部科学研究財団を通じてアメリカのETS(教育テストサービス)と交流し、実際のデータをフィードバックし、新しいテストの開発協力まで行っています。文部科学省事業「AIの活用による英語教育強化事業」のモデル校(2025年度)に指定されているなど、日本の英語教育をリードする存在として、教育関係各位や他校からも高い注目を集めています。伝統を大切にしながら、新しい学びにも積極的に挑戦する。その姿勢が賢明学院の大きな魅力です。
ノーチャイムが育む「逆算して考える力」
古川校長は強い信念のもと、次のような児童の姿を思い描いています。変化の激しいこれからの社会のなかで、今だけを見るのではなく、将来を見据えて、『今、自分は何をすべきか、何を学ぶべきか』を逆算して考え、自ら行動できる児童です。
先生からの指示で動くのではなく、自分で考えて一歩踏み出す力。その土台ともいえるのが、ノーチャイム制です。賢明学院小学校では授業の始まりや終わりを知らせるチャイムが鳴りません。
「チャイムが鳴らないということは、自分で時間を見て、次の行動をしなければならないということです。入学したばかりの1年生にとっては、最初は難しいことかもしれませんが、『次これをするためには、今こうしておかなければいけない』と学校生活の中で、自然と時間を逆算して考える習慣を身につけていきます 」
そんな賢明学院らしさを感じた出来事がありました。ある日、台風の影響で廊下に結露が発生し、古川校長がモップで拭き掃除をしていたとき、「先生、私たちも手伝います」と児童たちが自然と集まり、一緒に拭き掃除をしてくれたのだそうです。
「私の姿を見て、自分は何をしたらいいのかを考えて行動してくれました。その姿に感動しました」
自ら考えて動く力と、人を思いやる心。その両方が自然に育まれていることを感じた瞬間でした。
先生からの指示で動くのではなく、自分で考えて一歩踏み出す力。その土台ともいえるのが、ノーチャイム制です。賢明学院小学校では授業の始まりや終わりを知らせるチャイムが鳴りません。
「チャイムが鳴らないということは、自分で時間を見て、次の行動をしなければならないということです。入学したばかりの1年生にとっては、最初は難しいことかもしれませんが、『次これをするためには、今こうしておかなければいけない』と学校生活の中で、自然と時間を逆算して考える習慣を身につけていきます 」
そんな賢明学院らしさを感じた出来事がありました。ある日、台風の影響で廊下に結露が発生し、古川校長がモップで拭き掃除をしていたとき、「先生、私たちも手伝います」と児童たちが自然と集まり、一緒に拭き掃除をしてくれたのだそうです。
「私の姿を見て、自分は何をしたらいいのかを考えて行動してくれました。その姿に感動しました」
自ら考えて動く力と、人を思いやる心。その両方が自然に育まれていることを感じた瞬間でした。
思いやりが受け継がれる学校であり続けたい
「卒業生が大人になったとき、『この学校を卒業して本当によかった』と思える学校でありたいです」
古川校長が最後に語ってくださったのは、母校への深い愛情でした。賢明学院小学校には、長年変わらず受け継がれている温かな校風があります。入学したばかりの1年生に上級生が寄り添い、困っている友だちがいれば自然と手を差し伸べる姿です。
「私が小学生だった頃から変わらない姿です。上級生に優しくしてもらった児童は、下級生に優しくすることができます。その思いやりの循環こそが賢明学院の原点だと思っています」
カトリックの精神に基づく人間教育は、特別な授業だけで育まれるものではありません。日々の学校生活の中で相手を思いやり、自ら考えて行動する経験を積み重ねることで、少しずつ児童たちの心に根づいていきます。
「児童たちにはよく『卒業したら私の可愛い後輩になるんだよ』と話しています」
卒業生として、校長として、先生が守り続けたいのは、学力だけではない、人としての成長を支える教育です。言葉の力を育み、自ら考え行動し、人を思いやる心を育てる。賢明学院小学校には、創立以来受け継がれてきた教育の本質が、今も確かに生き続けています。
古川校長が最後に語ってくださったのは、母校への深い愛情でした。賢明学院小学校には、長年変わらず受け継がれている温かな校風があります。入学したばかりの1年生に上級生が寄り添い、困っている友だちがいれば自然と手を差し伸べる姿です。
「私が小学生だった頃から変わらない姿です。上級生に優しくしてもらった児童は、下級生に優しくすることができます。その思いやりの循環こそが賢明学院の原点だと思っています」
カトリックの精神に基づく人間教育は、特別な授業だけで育まれるものではありません。日々の学校生活の中で相手を思いやり、自ら考えて行動する経験を積み重ねることで、少しずつ児童たちの心に根づいていきます。
「児童たちにはよく『卒業したら私の可愛い後輩になるんだよ』と話しています」
卒業生として、校長として、先生が守り続けたいのは、学力だけではない、人としての成長を支える教育です。言葉の力を育み、自ら考え行動し、人を思いやる心を育てる。賢明学院小学校には、創立以来受け継がれてきた教育の本質が、今も確かに生き続けています。
まとめ
取材を通して印象的だったのは、賢明学院に息づく温かな校風でした。毎日の日記や読書、紙の辞書を使った学び、ノーチャイム制など、こうした積み重ねが「自分で考える力」や「自分の言葉で伝える力」、「相手を思いやる心」を育み、同校の先進的な英語教育や探究的な学びを支えているのだと実感しました。
また、古川校長が語る言葉の端々には、「卒業して大人になってからも『この学校で学べてよかった』と思える学校であり続けたい」という、卒業生だからこその責任感と母校への深い愛情が感じられました。古川校長ご自身が先輩から受け取った温もりを、今度は校長として、児童たちへ還していく。そんな実直で人間味あふれる古川校長の姿から、学力だけでは測れない、自ら考える力や、他者を思いやる心を育む教育を改めて感じる取材となりました。
また、古川校長が語る言葉の端々には、「卒業して大人になってからも『この学校で学べてよかった』と思える学校であり続けたい」という、卒業生だからこその責任感と母校への深い愛情が感じられました。古川校長ご自身が先輩から受け取った温もりを、今度は校長として、児童たちへ還していく。そんな実直で人間味あふれる古川校長の姿から、学力だけでは測れない、自ら考える力や、他者を思いやる心を育む教育を改めて感じる取材となりました。








