帝塚山小学校
伝統の『八百屋さん』が進化!帝塚山小が挑む「探究型ポップコーン・プロジェクト」の全貌
帝塚山小学校が取り組む「ポップコーン・プロジェクト」が、従来の学校教育の枠組みを超えた教科横断型のキャリア教育として大きな注目を集めています。トウモロコシの栽培から製品化、パッケージデザイン、そして販売まで。子どもたちが「本物」に触れ、五感を通じて社会の仕組みを学ぶ、同校の新しい教育の姿を追いました。
帝塚山小学校 教頭 辰巳喜之先生のお話
帝塚山小学校 教頭 辰巳喜之先生のお話
教頭 辰巳喜之先生
帝塚山小学校 教頭 辰巳喜之先生のお話
伝統の活動を「探究型」へ進化
同校では約30年前から、校内農園で栽培・収穫した野菜を販売する『5年生による八百屋さん』を、育友会イベント「TEZ’fes」にて開催。近年は、子どもたちお手製のポップコーンの販売も加わり、世代を問わず多くの来場者から親しまれてきました。
2025年度、この活動は「探究型キャリア教育」へと進化。単なる「作る・売る」体験に留まらず、社会とのつながりや付加価値の創出を自ら模索する、より深い学びへと刷新されました。
「理科」での栽培・収穫の学習に始まり、「国語」では心を動かすネーミングやキャッチコピーを考案など、このプロジェクトの最大の特徴として挙げられるのは、教科横断的なアプローチです。
また、「美術」では同学園の大学教員を招いて、消費者の目に留まるパッケージデザインや色彩心理を学習し、「社会」では企業の出張授業を通して、著作権や企業倫理を学びました。
「美術」の特別授業を振り返り、辰巳先生はこう語ります。
「大学の先生方からは、ネーミングに隠された仕掛けや、『買い手の視点』に立つデザインの大切さをプロの視点で伝えていただきました。教員にとっても新鮮な驚きと学びの連続で、子どもたちは帝塚山ノートに熱心にメモを取りながら、真剣なまなざしで話に聞き入っていました。子どもたちの発想の引き出しも随分と増えたはずです」
こうした専門家による『本物の学び』を日常的に提供できるのは、総合学園である同校の強みでもあります。
2025年度、この活動は「探究型キャリア教育」へと進化。単なる「作る・売る」体験に留まらず、社会とのつながりや付加価値の創出を自ら模索する、より深い学びへと刷新されました。
「理科」での栽培・収穫の学習に始まり、「国語」では心を動かすネーミングやキャッチコピーを考案など、このプロジェクトの最大の特徴として挙げられるのは、教科横断的なアプローチです。
また、「美術」では同学園の大学教員を招いて、消費者の目に留まるパッケージデザインや色彩心理を学習し、「社会」では企業の出張授業を通して、著作権や企業倫理を学びました。
「美術」の特別授業を振り返り、辰巳先生はこう語ります。
「大学の先生方からは、ネーミングに隠された仕掛けや、『買い手の視点』に立つデザインの大切さをプロの視点で伝えていただきました。教員にとっても新鮮な驚きと学びの連続で、子どもたちは帝塚山ノートに熱心にメモを取りながら、真剣なまなざしで話に聞き入っていました。子どもたちの発想の引き出しも随分と増えたはずです」
こうした専門家による『本物の学び』を日常的に提供できるのは、総合学園である同校の強みでもあります。
プロジェクトが進む中で、子どもたちから「テーマソングを作りたい」「よびかけのアナウンスをしたい」といった新しいアイデアが生まれました。テーマソングは、子どもたちが日常的に口ずさんでいたメロディーをもとに、教員が楽器でアレンジし、ひとつの曲として完成させたものです。
また、子どもたちが考えたアナウンス原稿と完成したテーマソングは、販売当日の校内放送でプロモーションとして流され、活動を盛り上げる大きな力となりました。
このエピソードからも、ポップコーン・プロジェクトに主体的に向き合う子どもたちの姿が目に浮かびます。
また、子どもたちが考えたアナウンス原稿と完成したテーマソングは、販売当日の校内放送でプロモーションとして流され、活動を盛り上げる大きな力となりました。
このエピソードからも、ポップコーン・プロジェクトに主体的に向き合う子どもたちの姿が目に浮かびます。
卒業生との連携が生む「循環型教育」
本プロジェクトにおいて、もう一つの重要な柱となったのが「環境への配慮」です。
パッケージ制作にあたり、同校は卒業生が代表を務める紙卸業者「株式会社ペーパル」と連携。本来であれば収穫時に廃棄されるはずだったトウモロコシの皮などを素材として再利用し、独自の「トウモロコシ・ペーパー」を共同開発しました。この紙を使って、子どもたちはポップコーンを一つひとつ手作業で包んでいったそうです。
「自分たちが出した廃棄物をただ捨てるのではなく、価値あるものへ再生させるにはどうすればよいか。それを自ら考えるプロセスこそが、真の環境教育につながります。このトウモロコシ・ペーパーは、次年度の『帝塚山ノート」の表紙にも採用されることにもなりました」と辰巳先生は語ります。
不要物を資源へと変える『循環型経済』を肌で感じるこの試みは、机上の学びだけでは得られない確かな手応えを、子どもたちの心に残してくれたことでしょう。さらに、自分たちの探究の成果が「学校のスタンダード」をより環境に優しいものへと塗り替えていく。この成功体験は、子どもたちが「社会の一員として、持続可能な未来のために何ができるか」を主体的に捉え直す、大きなターニングポイントとなったはずです。
パッケージ制作にあたり、同校は卒業生が代表を務める紙卸業者「株式会社ペーパル」と連携。本来であれば収穫時に廃棄されるはずだったトウモロコシの皮などを素材として再利用し、独自の「トウモロコシ・ペーパー」を共同開発しました。この紙を使って、子どもたちはポップコーンを一つひとつ手作業で包んでいったそうです。
「自分たちが出した廃棄物をただ捨てるのではなく、価値あるものへ再生させるにはどうすればよいか。それを自ら考えるプロセスこそが、真の環境教育につながります。このトウモロコシ・ペーパーは、次年度の『帝塚山ノート」の表紙にも採用されることにもなりました」と辰巳先生は語ります。
不要物を資源へと変える『循環型経済』を肌で感じるこの試みは、机上の学びだけでは得られない確かな手応えを、子どもたちの心に残してくれたことでしょう。さらに、自分たちの探究の成果が「学校のスタンダード」をより環境に優しいものへと塗り替えていく。この成功体験は、子どもたちが「社会の一員として、持続可能な未来のために何ができるか」を主体的に捉え直す、大きなターニングポイントとなったはずです。
楽しみながら、そして誠実に「働く」に向き合う
プロジェクトの意思決定は、すべて学級内での対話をベースに進められました。
「商品作りにまつわるあらゆる工程で、まずは個々の児童が案を練り、グループワークや学級プレゼンを経て合意形成を図りました。当然、意見が割れることもあれば、自分の案が採用されない悔しさを味わう子もいます。教員はそうした一人ひとりの心に寄り添いながらも、あくまで子どもたちが主体となるよう、サポートに徹しました」と、辰巳先生は振り返ります。
販売当日はあいにくの雨予報となり、屋外テントから教室内への急な会場変更を余儀なくされました。しかし、子どもたちは動じることなく即興で教室を飾り付け、活気あふれる売り場を見事に作り上げたのです。
「陳列の工夫や宣伝放送のタイミングなど、常に『お客様の視点』に立ち、どうすれば気持ちよく購入いただけるかを真剣に考える姿が見られました。どの子も驚くほど生き生きと、当事者意識を持って取り組んでいました」
販売開始とともにブースの前には瞬く間に行列ができ、用意したポップコーンは短時間で完売。購入した保護者からは「子どもたちの熱気と勢いに圧倒された」「心から楽しそうに活動する姿が印象的だった」と、感嘆の声が寄せられました。
今回のプロジェクトで得られた収益の使い道についても、子どもたちから学校全体に役立つアイデアを募りました。教員がリーダーシップを発揮しつつ、子どもたちと一緒に真剣に話し合った結果、「自分たちのクラスだけでなく、学校のみんなが使えるものを購入しよう」という方向にまとまりました。その話し合いを経て、クラス備品の整備に加え、学校全体で楽しめる竹馬や図書館の本を購入することが決まったそうです。
子どもたちの意見が学校全体のための取り組みへと広がっていく様子が、とても印象的なプロジェクトとなりました。
自分たちの頑張りが、形を変えて「みんなの笑顔」へと還元されていく。そこには、働くことの厳しさの先にある「誰かの役に立つ喜び」を実感する、子どもたちの姿が見えてきます。
プロジェクトを終えた子どもたちの感想にも、深い学びの跡が刻まれています。
「学年全員で協力する大切さを知った」
「商品一つひとつに、作り手の多くの思いが込められていることに気づいた」
「お金を稼ぐことの大変さと、中途半端なことをしてはいけないという責任感を知った」
「同じ目標に向かって誠実に人と向き合い、やるべきことに一生懸命に取り組む。そして他者を思いやり、社会の仕組みを肌で感じる。本学園の建学の精神である『社会有為な人材の育成』につながる重要な経験となりました」と辰巳先生は笑顔を見せます。
「商品作りにまつわるあらゆる工程で、まずは個々の児童が案を練り、グループワークや学級プレゼンを経て合意形成を図りました。当然、意見が割れることもあれば、自分の案が採用されない悔しさを味わう子もいます。教員はそうした一人ひとりの心に寄り添いながらも、あくまで子どもたちが主体となるよう、サポートに徹しました」と、辰巳先生は振り返ります。
販売当日はあいにくの雨予報となり、屋外テントから教室内への急な会場変更を余儀なくされました。しかし、子どもたちは動じることなく即興で教室を飾り付け、活気あふれる売り場を見事に作り上げたのです。
「陳列の工夫や宣伝放送のタイミングなど、常に『お客様の視点』に立ち、どうすれば気持ちよく購入いただけるかを真剣に考える姿が見られました。どの子も驚くほど生き生きと、当事者意識を持って取り組んでいました」
販売開始とともにブースの前には瞬く間に行列ができ、用意したポップコーンは短時間で完売。購入した保護者からは「子どもたちの熱気と勢いに圧倒された」「心から楽しそうに活動する姿が印象的だった」と、感嘆の声が寄せられました。
今回のプロジェクトで得られた収益の使い道についても、子どもたちから学校全体に役立つアイデアを募りました。教員がリーダーシップを発揮しつつ、子どもたちと一緒に真剣に話し合った結果、「自分たちのクラスだけでなく、学校のみんなが使えるものを購入しよう」という方向にまとまりました。その話し合いを経て、クラス備品の整備に加え、学校全体で楽しめる竹馬や図書館の本を購入することが決まったそうです。
子どもたちの意見が学校全体のための取り組みへと広がっていく様子が、とても印象的なプロジェクトとなりました。
自分たちの頑張りが、形を変えて「みんなの笑顔」へと還元されていく。そこには、働くことの厳しさの先にある「誰かの役に立つ喜び」を実感する、子どもたちの姿が見えてきます。
プロジェクトを終えた子どもたちの感想にも、深い学びの跡が刻まれています。
「学年全員で協力する大切さを知った」
「商品一つひとつに、作り手の多くの思いが込められていることに気づいた」
「お金を稼ぐことの大変さと、中途半端なことをしてはいけないという責任感を知った」
「同じ目標に向かって誠実に人と向き合い、やるべきことに一生懸命に取り組む。そして他者を思いやり、社会の仕組みを肌で感じる。本学園の建学の精神である『社会有為な人材の育成』につながる重要な経験となりました」と辰巳先生は笑顔を見せます。
正解のない問いに挑む、本物の学び
続けて辰巳先生は、今回の学びが「デジタル全盛の時代だからこそ意義がある」と指摘します。
「ネーミングや価格設定、販売方法など、今回直面した問いに『たった一つの正解』はありません。正解を探すのではなく、皆が納得できる答えを自分たちで作り上げていく。これこそがこれからの教育において最も重要なことであり、本プロジェクトでの大きな収穫でした」
今回の成功を受け、来年度もこのポップコーン・プロジェクトは継続される予定です。
「まずは今年の実績を土台にしつつ、次の5年生には『さらに改善できることはないか』『他にどんなチャレンジができるか』を自ら考えてほしいですね。先輩たちの活動にさらなる創意工夫を加え、進化させていくことを期待しています」
最後に、辰巳先生はこう熱く語ってくれました。
「AIは非常に便利ですが、それは答えを出すための道具の一つに過ぎません。何を問いかけ、その答えにどう価値を見出すかを決めるのは人間です。本校では、本物に触れ、人と人とのふれあいを大切にする教育を通して、子どもたちの可能性という『根っこ』を伸ばしていきます。深く、力強く張った根っこがあってこそ、AIや未来のテクノロジーを正しく使いこなせる時代を切り拓いていけるのだと信じています」
テクノロジーが加速する時代において、揺るぎない「自分」という軸を持ち、周囲と手を取り合いながら最適解を紡ぎ出す。人間として求められる資質が、このポップコーン・プロジェクトから育まれています。
「ネーミングや価格設定、販売方法など、今回直面した問いに『たった一つの正解』はありません。正解を探すのではなく、皆が納得できる答えを自分たちで作り上げていく。これこそがこれからの教育において最も重要なことであり、本プロジェクトでの大きな収穫でした」
今回の成功を受け、来年度もこのポップコーン・プロジェクトは継続される予定です。
「まずは今年の実績を土台にしつつ、次の5年生には『さらに改善できることはないか』『他にどんなチャレンジができるか』を自ら考えてほしいですね。先輩たちの活動にさらなる創意工夫を加え、進化させていくことを期待しています」
最後に、辰巳先生はこう熱く語ってくれました。
「AIは非常に便利ですが、それは答えを出すための道具の一つに過ぎません。何を問いかけ、その答えにどう価値を見出すかを決めるのは人間です。本校では、本物に触れ、人と人とのふれあいを大切にする教育を通して、子どもたちの可能性という『根っこ』を伸ばしていきます。深く、力強く張った根っこがあってこそ、AIや未来のテクノロジーを正しく使いこなせる時代を切り拓いていけるのだと信じています」
テクノロジーが加速する時代において、揺るぎない「自分」という軸を持ち、周囲と手を取り合いながら最適解を紡ぎ出す。人間として求められる資質が、このポップコーン・プロジェクトから育まれています。
編集後記
同校では、子どもたちの「根っこ」を育てる3つの柱として、以下の教育方針を掲げています。
「考える子どもを育てる」
「心を磨き、共感力を高める」
「本物にふれ可能性を広げる」
今回のポップコーン・プロジェクトは、まさにこの3本柱を具現化したものでした。
伝統を大切にしながらも、大学や企業連携を通して「本物」に触れ、仲間と試行錯誤する。そうして鍛えられた「根っこ」は、未来という未知のステージにおいて、彼らが力強く歩んでいくための揺るぎない土台となるに違いありません。
「考える子どもを育てる」
「心を磨き、共感力を高める」
「本物にふれ可能性を広げる」
今回のポップコーン・プロジェクトは、まさにこの3本柱を具現化したものでした。
伝統を大切にしながらも、大学や企業連携を通して「本物」に触れ、仲間と試行錯誤する。そうして鍛えられた「根っこ」は、未来という未知のステージにおいて、彼らが力強く歩んでいくための揺るぎない土台となるに違いありません。








