帝塚山小学校
卒業研究に生成AIを導入。これからの「生きる力」を養う帝塚山小の教育
帝塚山小学校では、1・2年生はタブレット端末をあえて持たせず、「読む」「書く」といった基礎的な学びを重視する一方で、卒業研究への生成AIの導入や教科横断型の学習など、時代に応じた取り組みも柔軟に取り入れています。
さらに2024年度には、コロナ禍を契機に見直しを進めていた体験合宿の再構成を完了し、多角的な視点から自然を学ぶプログラムへと刷新しました。
子どもたちの成長に本当に必要なものを見据えながら進化を続ける同校の教育について、校長の野村至弘先生にお話を伺いました。
帝塚山小学校 校長 野村至弘先生のお話
さらに2024年度には、コロナ禍を契機に見直しを進めていた体験合宿の再構成を完了し、多角的な視点から自然を学ぶプログラムへと刷新しました。
子どもたちの成長に本当に必要なものを見据えながら進化を続ける同校の教育について、校長の野村至弘先生にお話を伺いました。
帝塚山小学校 校長 野村至弘先生のお話

校長 野村至弘先生
帝塚山小学校 校長 野村至弘先生のお話
卒業研究に生成AIを導入
学びのスタイルが大きく変わりつつある今、帝塚山小学校でも2023年度に新たな一歩を踏み出しました。6年生の卒業研究に生成AIを導入したのです。
卒業研究は6年間にわたる自然体験学習や探究学習の集大成となる取り組み。子どもたちは自らの興味をもとにテーマを設定し、時間をかけて調べ、試行錯誤を重ねながら1つのレポートとしてまとめ上げていきます。
この探究的な学びに生成AIを取り入れると聞いて、「子どもたちがAIに丸投げしてしまうのでは」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。
しかし、野村校長は「生成AIを『文章を書いてもらう道具』ではなく、『学びのヒントをくれる先生』のような存在として活用できるようにしました」と説明します。
「子どもたちが調べたいテーマを入力しても単純に答えが提示されることがないよう、専科教員が設定しました。自分で調べ学習を行うためのヒントが複数提示されるので、子どもたちがAIにサポートされながら調べ学習を進めるというプロセスを経て、自分なりの卒業研究を完成させていきました」
こうした取り組みについて、学校説明会で紹介したところ、参加された保護者からも高い関心が寄せられたそうです。
「これからの時代、子どもたちはAIと共に生きていくことになります。だからこそ、『どう使うか』を学ぶことが大切です。生成AIをうまく活用するのも『生きる力』のひとつ。本校では、書くことの大切さを守りながら、生成AIを使えるところではうまく取り入れて、子どもたちの深い学びにつなげていきます」
卒業研究は6年間にわたる自然体験学習や探究学習の集大成となる取り組み。子どもたちは自らの興味をもとにテーマを設定し、時間をかけて調べ、試行錯誤を重ねながら1つのレポートとしてまとめ上げていきます。
この探究的な学びに生成AIを取り入れると聞いて、「子どもたちがAIに丸投げしてしまうのでは」と不安に思う保護者の方もいるかもしれません。
しかし、野村校長は「生成AIを『文章を書いてもらう道具』ではなく、『学びのヒントをくれる先生』のような存在として活用できるようにしました」と説明します。
「子どもたちが調べたいテーマを入力しても単純に答えが提示されることがないよう、専科教員が設定しました。自分で調べ学習を行うためのヒントが複数提示されるので、子どもたちがAIにサポートされながら調べ学習を進めるというプロセスを経て、自分なりの卒業研究を完成させていきました」
こうした取り組みについて、学校説明会で紹介したところ、参加された保護者からも高い関心が寄せられたそうです。
「これからの時代、子どもたちはAIと共に生きていくことになります。だからこそ、『どう使うか』を学ぶことが大切です。生成AIをうまく活用するのも『生きる力』のひとつ。本校では、書くことの大切さを守りながら、生成AIを使えるところではうまく取り入れて、子どもたちの深い学びにつなげていきます」


さまざまな分野の学びが詰まった『ポップコーン・プロジェクト』が始動
毎年11月に開催する帝塚山フェスティバル(TEZ Fes)は、保護者会(育友会)の協力のもと、模擬店が立ち並び、お祭りのような賑わいを見せる行事です。その中で、5年生は学校農園で育てた野菜を販売し、その収益で本を買うなどしてきたそうです。
この催しで現在、進行中なのが「ポップコーン・プロジェクト」と名付けられた新しい取り組みです。このプロジェクトが立てられた経緯について、野村校長は次のように説明します。
「これまでのフェスティバルでは、子ども達が学習の題材として栽培してきたポップコーンを学校農園産の野菜と共に販売していました。毎年好評で、多くの来場者に喜ばれてきました。そんな中、このポップコーン販売をより深い学びにしたいと考え、製品化の過程を全て体験するキャリア教育としてこのプロジェクトが立ち上がったのです」
この催しで現在、進行中なのが「ポップコーン・プロジェクト」と名付けられた新しい取り組みです。このプロジェクトが立てられた経緯について、野村校長は次のように説明します。
「これまでのフェスティバルでは、子ども達が学習の題材として栽培してきたポップコーンを学校農園産の野菜と共に販売していました。毎年好評で、多くの来場者に喜ばれてきました。そんな中、このポップコーン販売をより深い学びにしたいと考え、製品化の過程を全て体験するキャリア教育としてこのプロジェクトが立ち上がったのです」


このプロジェクトでは、5年生がクラス全体でポップコーンを入れる箱のデザインを作成します。また、販売用のポスター制作などの販売促進活動にも取り組む予定だとか。
「商業デザインを専門とする大学教員を招いて、パッケージデザインやキャッチコピーを考える上で大切なことなどを教えていただく予定です。さらに、帝塚山小学校卒業生の業者さんがパッケージの印刷を引き受けてくださることになりました。この会社の協力の元、収穫の際に出たトウモロコシの葉や皮を紙に練り込み、環境教育にもつなげる予定をしております。」
トウモロコシの栽培は理科、パッケージデザインは美術と情報、そして購買者を惹きつけるキャッチコピーや説明文づくりは国語と、このプロジェクトにはさまざまな分野の学びが詰まっています。
野村校長は「子どもたちにとって、実際に自分たちが作ったものを売って、お金をいただくのは初めての経験になると思います。収益で何かが手に入ったという経験は、一生の大切な思い出になるでしょう。単に教室の中で勉強するだけでなく、これからの社会を生きていく上で非常に大切な力を育てる場になってほしいと、願いながら進めています」と笑顔を見せます。
「商業デザインを専門とする大学教員を招いて、パッケージデザインやキャッチコピーを考える上で大切なことなどを教えていただく予定です。さらに、帝塚山小学校卒業生の業者さんがパッケージの印刷を引き受けてくださることになりました。この会社の協力の元、収穫の際に出たトウモロコシの葉や皮を紙に練り込み、環境教育にもつなげる予定をしております。」
トウモロコシの栽培は理科、パッケージデザインは美術と情報、そして購買者を惹きつけるキャッチコピーや説明文づくりは国語と、このプロジェクトにはさまざまな分野の学びが詰まっています。
野村校長は「子どもたちにとって、実際に自分たちが作ったものを売って、お金をいただくのは初めての経験になると思います。収益で何かが手に入ったという経験は、一生の大切な思い出になるでしょう。単に教室の中で勉強するだけでなく、これからの社会を生きていく上で非常に大切な力を育てる場になってほしいと、願いながら進めています」と笑顔を見せます。


積み重ねを重視した新たな体験合宿が誕生
帝塚山小学校では、創立以来、体全体で本物とふれあう実体験を大切にしてきました。その姿勢を象徴する取り組みが、全学年で行う体験合宿です。この体験合宿はコロナ禍により一時中断を余儀なくされましたが、野村校長はその期間を「見直しのよいタイミング」と前向きにとらえたと語ります。
「それまでの体験合宿は、毎年同じ場所・同じ内容で実施していました。しかし、コロナ禍による中断をきっかけに、『このままでよいのか』と見直しに着手しました。見直す上で特に大切にしたのが1年生から6年生までの学びの系統性です。2024年度にようやく新しい体験合宿の形が整い、全体の見直しを終えることができました」
今回の見直しの中で、内容を大きく変えたのが4・5年生の臨海学舎。メインイベントである遠泳を敢えて取りやめ、海辺の生活や環境、生き物についての学びを中心とする内容へと方向転換したのです。
「遠泳を取りやめた分、水泳の授業の指導目標を4泳法のマスターに変更しました。本校には設備の整った室内プールがあり、5月下旬から水泳の授業を始めることができます。夏休み期間も個別に対応しながら、卒業までに必要な泳力が身に付くよう丁寧に指導を行っています」
新たな臨海学舎では、海辺の生活や産業について学ぶだけでなく、「命を守る学び」にも力を入れています。
4年生では海上保安庁の救急救命士から、5年生では実際に浜辺の事故に対応しているライフセーバーから、海での事故の実例や泳ぐときの注意点について学ぶ機会が設けられているそうです。
「海の専門家から話を聞いた後、ライフジャケットを着用して海水浴もしました。事故にあった時にどのような姿勢で救助を待つかも実際に体験し、子どもたちはライフジャケットの必要性を実感したようです。泳ぎに加えて、命を守るための学習が確立できたと感じています」
また、自分の命を守る意識づけは、4・5年生だけにとどまりません。同校では低学年の活動でも水辺では必ずライフジャケットを着用。さらに、社会科で水産業を学ぶ際にも着用の重要性について触れているといいます。
「本校では、水辺に行くときはライフジャケットが必要であることを日常的に伝えています。ここまで力を入れている学校は本校ぐらいでしょう。しかし、子どもたちの命を守る上では非常に大切なこと。これからも折に触れて、子どもたちに伝えていきます」
「それまでの体験合宿は、毎年同じ場所・同じ内容で実施していました。しかし、コロナ禍による中断をきっかけに、『このままでよいのか』と見直しに着手しました。見直す上で特に大切にしたのが1年生から6年生までの学びの系統性です。2024年度にようやく新しい体験合宿の形が整い、全体の見直しを終えることができました」
今回の見直しの中で、内容を大きく変えたのが4・5年生の臨海学舎。メインイベントである遠泳を敢えて取りやめ、海辺の生活や環境、生き物についての学びを中心とする内容へと方向転換したのです。
「遠泳を取りやめた分、水泳の授業の指導目標を4泳法のマスターに変更しました。本校には設備の整った室内プールがあり、5月下旬から水泳の授業を始めることができます。夏休み期間も個別に対応しながら、卒業までに必要な泳力が身に付くよう丁寧に指導を行っています」
新たな臨海学舎では、海辺の生活や産業について学ぶだけでなく、「命を守る学び」にも力を入れています。
4年生では海上保安庁の救急救命士から、5年生では実際に浜辺の事故に対応しているライフセーバーから、海での事故の実例や泳ぐときの注意点について学ぶ機会が設けられているそうです。
「海の専門家から話を聞いた後、ライフジャケットを着用して海水浴もしました。事故にあった時にどのような姿勢で救助を待つかも実際に体験し、子どもたちはライフジャケットの必要性を実感したようです。泳ぎに加えて、命を守るための学習が確立できたと感じています」
また、自分の命を守る意識づけは、4・5年生だけにとどまりません。同校では低学年の活動でも水辺では必ずライフジャケットを着用。さらに、社会科で水産業を学ぶ際にも着用の重要性について触れているといいます。
「本校では、水辺に行くときはライフジャケットが必要であることを日常的に伝えています。ここまで力を入れている学校は本校ぐらいでしょう。しかし、子どもたちの命を守る上では非常に大切なこと。これからも折に触れて、子どもたちに伝えていきます」


内部・外部、いずれにも進学サポートを提供
近年、帝塚山中学校・高等学校の人気が高まっています。それに伴い、小学校の学校説明会でも内部進学に関する質問が増えているといいます。
「今年3月の学校説明会では、中学校の入試広報担当の先生にも来てもらい、質問コーナーを設けました。保護者の方々が長い列をつくるほどの盛況で、内部進学への関心の高さを実感しました」
中学校側からも、小学校からの内部進学生を大切にしたいという姿勢が伝えられており、内部進学の基準のひとつとなる年2回の学力診断テストの出題範囲や難易度も、中学校と連携して決めているのだとか。野村校長は「中学入学後に、よりスムーズにスタートできるよう小中の連携を強めていきたい」と語ります。
さらに、同校では小学校での生活をしっかりと充実させた上で、無理なく中学校に進学してもらえるようカリキュラムを工夫し、週2回の補習も用意しています。
「補習は基本的に本校独自の問題集を使って、自学自習のスタイルで進めてもらっています。
現在、内部進学率は約50%程度。かつては6割ほどあったものの、やや減少傾向にあるそうです。
「中高では“国公立大学進学”という目標を明確に打ち出しています。遠方の国公立大学より、関西圏の私立大学を望まれるご家庭も一定数あり、外部進学を選ばれるケースが増えてきました」
そうした状況を踏まえ、同校では外部進学希望者に対しても丁寧なサポートを行っています。
「進路指導部には、これまでの外部進学者の成績データを保管しており、そのデータをもとに学校選びの相談に応じることもできます。 同校では内部・外部のいずれの進路を選んでも、子ども一人ひとりが納得のいく形で次のステップに進めるよう、学校全体でサポートする体制が整えられています。
「今年3月の学校説明会では、中学校の入試広報担当の先生にも来てもらい、質問コーナーを設けました。保護者の方々が長い列をつくるほどの盛況で、内部進学への関心の高さを実感しました」
中学校側からも、小学校からの内部進学生を大切にしたいという姿勢が伝えられており、内部進学の基準のひとつとなる年2回の学力診断テストの出題範囲や難易度も、中学校と連携して決めているのだとか。野村校長は「中学入学後に、よりスムーズにスタートできるよう小中の連携を強めていきたい」と語ります。
さらに、同校では小学校での生活をしっかりと充実させた上で、無理なく中学校に進学してもらえるようカリキュラムを工夫し、週2回の補習も用意しています。
「補習は基本的に本校独自の問題集を使って、自学自習のスタイルで進めてもらっています。
現在、内部進学率は約50%程度。かつては6割ほどあったものの、やや減少傾向にあるそうです。
「中高では“国公立大学進学”という目標を明確に打ち出しています。遠方の国公立大学より、関西圏の私立大学を望まれるご家庭も一定数あり、外部進学を選ばれるケースが増えてきました」
そうした状況を踏まえ、同校では外部進学希望者に対しても丁寧なサポートを行っています。
「進路指導部には、これまでの外部進学者の成績データを保管しており、そのデータをもとに学校選びの相談に応じることもできます。 同校では内部・外部のいずれの進路を選んでも、子ども一人ひとりが納得のいく形で次のステップに進めるよう、学校全体でサポートする体制が整えられています。

取材を終えて
今回の取材では帝塚山小学校の伝統である体験合宿の刷新の他、生成AIを使った卒業研究やさまざまな分野の学びが詰まったポップコーン・プロジェクトなど、帝塚山小学校の“今”についてたくさんお話を伺いました。
野村校長は、中でもポップコーン・プロジェクトについて、目を輝かせてお話くださいました。本当に楽しそうな取り組みで、きっと子どもたちも野村校長と同じように目を輝かせて取り組んでくれることでしょう。どんなポップコーンが出来上がってくるのか、今から楽しみでなりません。
同校では2025年度にホームページの全面リニューアルとInstagramの開設を行い、校舎や施設、日々の学校生活の様子をより分かりやすく発信しています。まずはウェブやSNSを通じて情報を得ていただき、そして実際に足を運んで、子どもたちの様子や学校の空気を感じてほしいと思います。
野村校長は、中でもポップコーン・プロジェクトについて、目を輝かせてお話くださいました。本当に楽しそうな取り組みで、きっと子どもたちも野村校長と同じように目を輝かせて取り組んでくれることでしょう。どんなポップコーンが出来上がってくるのか、今から楽しみでなりません。
同校では2025年度にホームページの全面リニューアルとInstagramの開設を行い、校舎や施設、日々の学校生活の様子をより分かりやすく発信しています。まずはウェブやSNSを通じて情報を得ていただき、そして実際に足を運んで、子どもたちの様子や学校の空気を感じてほしいと思います。

