取材レポート

東京女学館小学校

一人ひとりに目が届く36人学級から、さらなる教育の充実へ

東京女学館小学校では、日本人としての品性を育て、国際社会に羽ばたく土台を築くことを目指し、「すずかけ」(日本の伝統文化を学ぶ)、「つばさ」(情報教育・体験学習)「とびら」(国際理解・英語学習)という3つの特色ある教育活動を行っています。2025年度の新たな展開などについて、校長の盛永裕一先生にお話を聞きました。

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話
6年生の算数で少人数指導を導入
より活発になった「とびら」の活動
パキスタン日本人学校との交流
小中高連携も再始動
2025年度からアフタースクールがスタート
校長 盛永裕一先生

校長 盛永裕一先生

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話

6年生の算数で少人数指導を導入

「つばさ」の授業などで使用しているコンピューター室をリニューアルし、パーテーションを設置して机と椅子を新しくしました。カラフルで持ち運びしやすい椅子と、使用目的に合わせてレイアウトできる机です。本校では英語の授業は少人数に分割(4年生までは1学級2分割、5・6年生は1学級3分割)して行ってきましたが、今年度からこの教室を活用して6年生の算数も少人数制を導入します。算数の授業を2分割するために、教員も1人増員しました。グループ分けについては、単元によって、1クラスを均等に分割したり、習熟度別、進度別に分けるなど、担任と算数の教員で相談して決めていきます。

例えば、図形を的確に描けるようにするために、操作が苦手な児童を集めて手厚くサポートする場面もあるでしょう。いろいろな考えが出てきた方が面白い単元のときは、習熟度は関係なく均等に分けるなど、工夫していきます。どのような分け方にしても、それぞれのグループに教員がつくので、一人ひとりにより細やかな指導ができるようになります。1つの授業を教員2名で担当すれば、教員同士の意見交換が活発になり、教材研究にも深みが出てきます。これまでは希望者が受検していた算数検定も、今年度からは2年生以上全員が受検することになりました。教育の質をさらに向上させるために環境を整え、学習へのモチベーションを高める機会も様々な形でつくっていきたいと考えています。

より活発になった「とびら」の活動

コロナ禍では制限があった「とびら」の活動も例年通り行えるようになり、各学年で様々な異文化交流が行われています。夏休み中のタスマニア海外研修には、6年生が20人参加しました。定員(6年生が優先)があるため希望者全員が参加することは難しいので、同時期に山梨県で「Fujiイングリッシュキャンプ」(5・6年生の希望者)を実施しています。こちらは定員が60人なので5年生が中心となり、英語漬けで2泊3日を過ごす宿泊プログラムです。5~6人のグループに分かれて、アメリカ・カナダ・オーストラリアなど様々な国のネイティブティーチャーと一緒に過ごします。オリジナルの英語劇を完成させることを軸に、自然散策をしながら英語を学んだり、海外旅行で用いる英会話などを体験する3日間です。5年生は秋に「とびら」の授業で体験型英語学習施設「東京グローバルゲートウェイ(TGG)」を訪れ、より実践的な会話を学び、タスマニア海外研修へとステップアップしていきます。

2年生は、BST(ブリティッシュスクール・イン・東京)の児童たちと交流します。昨年度は、11月に2年生全員で港区にあるBSTを訪問し、ゲームをするなどして半日間一緒に過ごしました。低学年の方が、恥ずかしがらずに積極的にコミュニケーションを取っていけると感じます。1月にはBSTの児童を本校に招いて、「すずかけ」で学んだことを活かしておもてなしをしました。お互いの文化を体験するだけでなく、けん玉や福笑いなどの遊びを通して自然に英語に慣れていけるので、英語学習へのモチベーションも上がります。本校の児童は浴衣を着せてあげることができるので、BSTの子どもたちはとても喜んでいました。

パキスタン日本人学校との交流

昨年度から2年間、本校の教員が在外教育施設派遣教員としてパキスタンのイスラマバードに赴任していることから、イスラマバードの日本人学校とZoomによる交流も行いました。昨年度はお互いの学校紹介から始めて、3年生は夏休みの自由研究を発表し合い、4・5年生はビブリオバトルの決勝戦で好きな本を紹介し合いました。「パキスタンのおすすめの食べ物」や「給食はあるのか」などの質問も出て、パキスタンというあまり馴染みのない国の文化は子どもたちにとっては新鮮だったようです。私も30年ほど前に3年間、派遣教員としてニュージーランドの日本人学校で教えていた経験があります。派遣された教員は、現地で様々な体験をして帰国します。来年度にはパキスタンから帰国した教員が復帰し、自分が体験したことを児童に伝えて様々な刺激を与える存在になってくれることでしょう。2年間の経験が教員の資質向上にもつながり、「とびら」の授業がさらに充実することに期待しています。

小中高連携も再始動

コロナ禍では中断していた中高との連携も再始動して、さらに深めていきたいと考えています。その1つとして、中高の様々なクラブ活動を体験する全学交流会を開催し、5・6年生が多数参加しました。中高生は小学生に部活動の楽しさを伝えようと工夫してくれたので、子どもたちはお姉様たちの説明やパフォーマンスに憧れの思いを抱いたことと思います。高校との連携として実施したのが、「芸術A・B」(STEAM教育とも連動した独自科目)を選択している高校生によるワークショップです。6年生の希望者が参加し、ライト・ドローイング(暗くした部屋でペンライトを使って空中に文字を書き、その軌道を動画で撮影)の作品をつくるなど、高校生はどうしたら小学生が楽しめるか考えて企画してくれました。子どもたちにとっても楽しい経験となり、芸術を選択したいと思った児童もいたようです。

中高の校舎屋上には、ソーラーパネルが設置されています。ソーラーパネル委員会の中高生に案内されて、5年生が見学しました。中高生は学園祭で掲示したソーラーパネルに関する資料などを使ってわかりやすく説明してくれたので、社会科の学習にもつながる発展的な学びとなったと思います。昨年度は、中高に来ていたタイからの留学生が小学校にも遊びにきて、4年生と一緒に習字に挑戦しました。同じ敷地内に中高があるというメリットを活かし、今後も様々な形で中高生との交流などを行っていきます。

2025年度からアフタースクールがスタート

昨年度から本校のホームページで「校長室だより」を公開し、授業や校外学習などの様子を見ていただけるようになりました。ホームページでは、子どもたちがどんな給食を食べているか、メニューだけでなく、カロリー、食材、メーカー、産地なども「今週の給食」として公開しています。食材の産地にもこだわり、厳選した材料を使用している安心・安全な給食です。保健室と連携して、アレルギーにも対応しています。

今年度から、アフタースクールもスタートさせます。準備に3年かけて、本校ならではのプログラムをつくりました。学校での学習を具現化でき、アフタースクールで経験したことを学校の学習にも活かせるプログラムです。STEAMとグローバルが週1回ずつで、海外の人とZoomでつながったり、世界のアートを教えてもらうなど、「とびら」や「つばさ」にもつながる体験を用意しています。昨年度から1クラス36人、1学年72人になり、一人ひとりにより目が届く環境になりました。現状に留まることなく、今後も教育の質を上げていきたいと考えています。

取材協力

東京女学館小学校

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