取材レポート

東京女学館小学校

さらなる「授業の充実」を目指し、教員同士が高め合う研究授業

東京女学館小学校の教育目標は、「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」。「すずかけ」「つばさ」「とびら」という3つの特色ある教育活動と、「問題解決」と「相互啓発」をキーワードとした「授業の充実」という2本の柱で、教育目標の具現化を目指しています。2023年度の振り返りと2024年度の新たな展開について、校長の盛永裕一先生にお話を聞きました。

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話
2024年度の新入生から36人学級がスタート
教員同士が高め合う研究授業
2023年度からタスマニア研修を再開
家庭で育む「人の話を聞く力」
校長 盛永裕一先生

校長 盛永裕一先生

東京女学館小学校 校長 盛永裕一先生のお話

2024年度の新入生から36人学級がスタート

今年度の1年生から、36人学級になりました。1クラスで4人減ったことになりますが、机が1列少なくなったので教室が広く感じます。入学式でも、壇上からの眺めは少しコンパクトになった印象です。授業での発言回数が増えることなどが期待されているので、どのような変化があったかをこれから検証していきたいと思っています。

コロナによる行動制限もなくなり、日数を減らしていた宿泊行事なども通常どおり行えるようになりました。ホームページをリニューアルして「校長室だより」のページを新たに作りましたので、授業やクラブ活動、宿泊行事など、子どもたちの様子をこれまで以上に発信していきます。夏休み中に実施しているタスマニア研修も再開し、子どもたちの英語に対する意欲も増してきました。本校では、英語の授業を1・2年生は1学級を2グループ、3年生からは3グループに分けて少人数で授業を行っています。コミュニケーションの手段として英語を身につける英語教育をさらにブラッシュアップさせ、次の展開につなげていきたいと考えています。

本校は、2028年に創立100周年を迎えます。100周年に向けて、式典や記念誌などについて話し合っているところです。教員の組織として広報室を作り、2025年度版から学校案内のパンフレットを一新しました。学校説明会等でもこれまでよりオープンにして、本校の魅力を伝えていきたいと考えています。

教員同士が高め合う研究授業

コロナの影響などもあって中止していた研究授業を、昨年度から復活させました。研修ではなく、教員が相互啓発して高め合う研究の場です。昨年度は算数と国語で、新任の教員による授業も含めて、計3回行いました。研究授業では、教員が指導案を作って授業を行い、それを他の教員が見て意見交換し合います。各教科の専門家もお招きして、それぞれの授業で講評していただきました。児童の性格なども教員たちはよくわかっているので、意見交換も活発にできます。先輩教員の授業について若手教員が発言する場面も見られるなど、教員同士の高め合いが感じられました。「授業の充実」は本校の教育目標を具現化するための柱でもあるので、今後も継続していきます。教員同士が認め合い、高め合う関係であれば、授業の質は高まります。教員の学ぶ意欲こそが、子どもたちの学ぶ意欲にもつながるので す。

本校では、思考力・判断力・表現力が身につくような授業を目指しています。これらの力が身についていれば、もし公式を忘れてしまっても自分で作り出すことができるのです。しかし、これらの力が身についていないと、公式を忘れてしまったらどうすることもできなくなってしまいます。そのような子どもは、困難なことにぶつかって解決できないと思ったら、そこから先に進むこともできないでしょう。前に進むためには、これまでの経験から作られた解決のための「引き出し」を自ら開けて、自分の力で解決することが大切です。「引き出し」は自分で開けなければなりませんし、多くの「引き出し」を作っておくことが解決につながります。親や教員が全部解決に導いてしまうと、「引き出し」を増やすことができません。子どもたちが「引き出し」を増やせるように、教員たちも研究することが必要なのです。せっかくいいことを言った児童がいても、授業を進行させることに集中していると気づけないこともあります。そこに他の教員が気づいて意見交換することで、高め合っていけるのです。

2023年度からタスマニア研修を再開

コロナ禍では、オーストラリア・タスマニアの姉妹校との交流はオンラインで行っていましたが、2023年度から現地での研修を再開しています。2023年度は6年生22名が参加し、ファーン校の児童と交流しました。本校と積極的に交流活動を行っているファーン校は、1935年創立の名門女子校です。ジャパニーズデイには、現地の子どもたちに浴衣を着せてあげたり、日本舞踊を教えてあげるなど、「すずかけ」で学んだ日本文化を紹介しました。プログラムの後半には、2人1組で3泊4日のホームステイが組まれています。子どもたちは英語漬けになることへの恐怖心はないようで、「とにかくホームステイが楽しかった!」という声が多く聞かれました。最終日には、ホストファミリーと涙のお別れをしている児童も多く、オンラインでは得られない体験ができたことを嬉しく思います。このような体験をした子どもたちは、夏休み以降の学校生活で積極的にいろいろなことに取り組むようになったと感じます。日本文化を学ぶ意欲が高まり、英語の授業も意欲的に取り組むようになりました。この経験を通して「引き出し」が1つ増えたことは、今後の成長にもつながるでしょう。

プログラム全体は大きくは変えませんが、今年度は宿泊施設等の見直しを行いました。これまではホテル内にレストランがなく、食事の度に外出しなければならなかったのです。今回からホテル内で食事ができるようになったので、より安全に過ごすことができる環境となっています。食事のための移動時間が不要になったので、日本文化を紹介するための練習時間を増やすなど、時間も効率よく使えるようになります。今年度も希望者が多かったので抽選で20人に絞り、参加者の研修も始まっています。英会話は、外部からネイティブ講師8人に来てもらい、3人程度のチームで練習します。日本文化については、何を伝えるかをレポートにまとめてプレゼンの準備。出発前の研修から、子どもたちは意欲的に取り組んでいます。

家庭で育む「人の話を聞く力」

本校では教育目標の具現化を目指し、授業も問題解決型を取り入れています。そのベースとなるのは「人の話をしっかり聞く」ことです。自分のことばかり話したり、「心ここにあらず」の状態で聞くようでは、問題解決のスタート地点に立つこともできません。人の話をしっかり聞くことができる子は、他の子と相互啓発することができ、学習内容や問題解決力を高めていきます。まずは保護者の皆さんが、子どもたちの課題や困っていることなど、ニーズをちゃんと聞いてあげましょう。

ニーズを聞き出すためには、日頃からたくさん褒めて、子どもが本音を言いやすい環境を作ることが大切です。子どもの話をしっかり聞いて、「あなたはどうしたいの?」という言葉をかけてください。「人の話をしっかり聞く」というベースができていれば、本校の学校生活で問題解決に必要な「引き出し」を作るための経験を積み重ね、「引き出し」を自分で開けられるように成長していきます。

取材協力

東京女学館小学校

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