取材レポート

昭和女子大学附属昭和小学校

探究コースと国際コース、それぞれの1年間

昭和女子大学附属昭和小学校では、2024年度の1年生から「探究コース」と「国際コース」の2コース制を導入。1年生の担任を務めた小野一泰先生(探究コース・学年主任)、丸山美穂先生(探究コース)、松崎奈穗先生(国際コース)に、各クラスの1年間を振り返っていただきました。

昭和女子大学附属昭和小学校 小野一泰先生のお話
■2024年度「探究コース」(1年1組)の振り返り
■「探究コース」の2年目

昭和女子大学附属昭和小学校 丸山美穂先生のお話
■2024年度「探究コース」(1年2組)の振り返り
■「探究コース」1年目の成長

「探究コース」の授業を取材(2年生の図工と読書)

昭和女子大学附属昭和小学校 松崎奈穗先生のお話
■2024年度「国際コース」(1年3組)の振り返り

「国際コース」の授業を取材(1・2年合同 生活科)

参考記事: [英語教育に特色] 昭和女子大学附属昭和小学校(探究コース) https://www.ojuken.jp/special-english-showajoshidaigakufuzokushowa/
(左)丸山美穂先生 (中)小野一泰先生 (右)松崎奈穗先生

(左)丸山美穂先生 (中)小野一泰先生 (右)松崎奈穗先生

昭和女子大学附属昭和小学校 小野一泰先生のお話

2024年度「探究コース」(1年1組)の振り返り 

本校では創立以来、「昭和っ子の研究」と名付けた総合学習を児童主体で行ってきました。学年テーマに沿ってクラスごとに研究テーマを設定し、調べ学習や実験、観察などに子どもたちが主体的に取り組む独自プログラムです。「探究コース」では、「昭和っ子の研究」として積み重ねてきたことをブラッシュアップして、これまで以上に学びを深める活動を行っていきます。本校では、時間割の中に「探究」という授業は設定していません。「昭和っ子の研究」として、専科教員が担当する授業や他教科との連携、単元の内容によって費やす時間の濃淡を付けるなど、教員たちが1年間の流れを考えて活動のための時間を創出します。探究的な学習では、探究サイクルを複数まわして経験を重ねることが重要です。「昭和っ子の研究」では2月に1年間の成果を発表してきましたが、「探究コース」では9月に1サイクル目の発表、2月に2サイクル目の発表を行います。2サイクル経験することで、1サイクル目で学んだことや得たことを2サイクル目に活かすことができるのです。

1年生の学年テーマは「動物」ですが、クラスによって取り組む内容は異なります。私が担当した1組のテーマは、「動物の特徴」でした。5月の遠足で多摩動物公園に行った際に、子どもたちが「この動物を調べたい」などといろいろなことを感じ取っている様子が見られたので、動物それぞれの特徴に目を向けて研究しようと考えたのです。1サイクル目の中でも、身近な動物(公園での観察など)、恐竜(オリジナルの恐竜を工作)、ペンギン(グループ研究)というように、小さなサイクルをまわしました。1年生は研究のやり方もわからない状態からのスタートなので、前半はグループで研究のやり方を学びます。夏休み中は家庭の協力を得て、水族館に行くなどして調べ学習を行い、9月にグループでペンギンについて発表しました。

子どもたちには、インターネットや本でわかる知識を得てほしいのではなく、体験を通して感じてほしいと思っています。自分ごととして体験できるように、企画書で思いを伝えて北海道の旭山動物園とのリモート授業を実現させたり、葛西臨海水族園で飼育員さんからペンギンの卵(標本)を見せてもらって大きさを確認する機会なども作れました。10月からは自分が選んだ動物について研究を進めましたが、前半で経験したことを活かして自走していくことができたと思います。

「探究コース」の2年目

「ここまでやらなければならない」と教員が決めていないことが、「昭和っ子の研究」で培った本校の探究学習です。教員が到達点を決めてしまうと、子どもたちの思いとは違うものになってしまいます。そして、学校だけ、1つの教科だけで行うのではなく、家庭と学校、他教科とのつながりなど、多方面から子どもたちの力を引き出していくことで、探究をより深めていくことができるのです。保護者の皆さんも一緒に考えてノートをまとめるのを手伝ったり、探究テーマに関連がある施設に出かけるなど、様々な形でご協力いただきました。週末に出かけた先で見たものや工作、研究したことは、「自由学習」として発表してクラス内で共有しています。子どもたちが提出したノートのコピーを教室に掲示すると、様々な刺激となっていくのです。最近の例では、押し花を作った児童がいたので、それを見て他の児童もやりたいということになり、みんなで漢字辞典を重しにして押し花を作っています。

2年生に上がる際は、1組と2組の児童をミックスしてクラス編成をしました。1組と2組は取り組んだテーマが違うので、経験したことも違い、得た知識も違っています。1組と2組の児童をミックスすることで、それぞれが持つ知識や経験を教え合っていくことができるのです。「探究コース」は、選択と比較がキーワードだと思っています。例えば、隣のクラスがやっていることと自分たちがやっていることを比較することができますし、自分にはどのやり方が合っているか選ぶこともできるのです。発表する際にも、ポスターを作って説明するのが得意な子もいれば、口頭で発表する方が得意な子もいるでしょう。様々な経験を通して自分らしさを追求することは、本校が高めていきたい資質・能力の1つである「自分づくり」にもつながっていきます。2年生も1組と2組は別の流れで進んでいくので、3年生になってまたミックスして、それぞれのよさが融合されていくことに期待しています。

昭和女子大学附属昭和小学校 丸山美穂先生のお話

2024年度「探究コース」(1年2組)の振り返り

2組は虫がすごく好きな児童が何人もいたので、クラスのテーマを「むし」にして、5月からいろいろな虫を飼い始めました。公園に行くと幼虫や卵を見つけて、名前がわからなくても持って帰り、自分たちで調べます。ハサミムシの羽が扇子のように折りたたまれていることに興味を持つとハサミムシの羽を作ってみたり、ダンゴムシは壁にぶつかると左右交互に曲がって進む習性があることがわかると迷路を作った実験をしたりするなど、子どもたちは様々なことに取り組みました。7月には、すみかを作ったり、調べたことをポスターで知らせるなど、グループに分かれての活動を行うことができました。夏休み中は自分で決めた虫を飼育して、気づいたことを記録したりスケッチしたりしました。9月の探究フェスタでは、発表だけではなく、触れあいコーナーや調べたことを説明するコーナー、クイズコーナーに分かれて保護者も参加型の発表スタイルとなりました。

2サイクル目には昆虫博士をお招きして、珍しい虫など、いろいろなものを見せていただきました。そこから刺激を受けて粘土で幼虫を作ったり、ファイルで羽を作ったりと、ものづくりへシフトしていきました。井の頭自然文化園では、指導員の方に虫の捕まえ方を教えていただき、見た目が奇抜な幼虫の中にも触れるものがあることを知りました。学寮の東明学林では、2組は雨でも虫探しをしました。最初は虫が苦手だった児童も、この頃には夢中になっていました。そして、動く虫を作りたいと始めたのが、レゴを使ったプログラミングによる虫ロボットの制作です。本物の虫の動きを何回も見て、カマキリがカマを動かす様子やダンゴムシの転がる様子などを再現することを目指しました。前半での飼育の過程があったからこそ、本物に近づけたいという思いが強かったのだと思います。昭和女子大学で教育工学や小学校のプログラミング教育を研究している森秀樹先生の協力を得て、アドバイスや難しい動きの解説などをしていただきました。

「探究コース」1年目の成長

特に虫ロボットの制作では、毎回振り返りを書き、自分がどこまで進んでいるのか、次の課題は何か確認しながら進めました。「今は一人でチャレンジしたい」「友達の手伝いがほしい」など、立ち位置を可視化しました。この活動を通して、目に見えない力が身についたと実感することができました。例えば、子ども同士の教え合いや学び合う力や、トライアンドエラーを繰り返して、諦めずに最後まで頑張り抜こうという力です。また、普段はおとなしい子が、虫ロボット制作で活躍できたことも嬉しかったです。このような活動ができたのも、子どもたちの思いを保護者の皆様がくみ取ってくださり、家庭での飼育にも協力していただけたので、探究学習をより深めることができました。私は今年度も1年生の担任をしていますが、また新たなテーマを決めるために、きっかけ作りを手探りで行っているところです。

●「探究コース」の授業を取材(2年生の図工と読書)

「探究コース」では、CLIL学習にそって独自開発した英語教育プログラム「e-MAP」を実践。音楽・図工・体育の週1時間を専科教員と英語教員の2人で担当し、場面によって英語と日本語を使い分けながら指導する先進的な教育方法です。国語は1年生から、「ことば」「書写」「読書」の授業を専科教員が担当しています。「読書」の授業では、図書室で司書教諭が読み聞かせを行った後、子どもたちが自由に本を選んで読書を楽しんでいました。

「国語の『うみのかくれんぼ』という単元で擬態について学んだら、関連する魚の本をたくさん紹介してもらうなど、専科教員だからこそできる本のセレクトで子どもたちの興味・関心が広がっていきます。子どもたちの『土・砂・泥をさわってみたい!』という気持ちから泥遊びをしたときは、泥遊びに関連した本の読み聞かせをしてもらい、そこから生活科の学びへとつなげていくことができました。専科教員が持つ専門性を活かしながら、教科の枠を超えた授業を展開していくことができています」(小野先生)

昭和女子大学附属昭和小学校 松崎奈穗先生のお話

2024年度「国際コース」(1年3組)の振り返り

「探究コース」との大きな違いは、「国際コース」では週4コマ「ELA(English Language Arts)」の授業があることです。この授業では、ケンブリッジのカリキュラムに沿って、英語を母語とする子どもたちと同じように、「英語で考え、英語で学ぶ力」を育てます。読む力や書く力をしっかりと伸ばしながら、聞く力や話す力もバランスよく育てていきます。また、この授業で英語を学ぶことを通して、外国の文化や考え方にも触れていきます。こうした学びから、一つの出来事についても、日本とは違う見方があることに気づき、物事をより広い視野で考えられるようになります。例えば算数は、日本の検定教科書を英語に翻訳したものを使いますが、日本語の教科書もお渡ししているのでご安心ください。本校独自の算数プリントや東京都の私学協会が作っている算数プリントなども単元ごとに配布して、理解できているかを日本語で確認していただくなどのフォローもしっかりと行っています。「探究コース」のようにプロジェクトベースの活動に取り組むことは時間的に難しいですが、探究的な要素は各教科に盛り込んでいます。

国語の授業は「読書」や「書写」、「ことば」も含めて、「国際コース」では日本人担任が行います。日本語を話す時間が限られているので、内容を凝縮させて、「聞く・話す・読む・書く」の4技能がしっかりと身につくような授業を展開しています。毎朝10分間のモジュール学習も、「国際コース」はすべて国語です。読み聞かせ(月)、ことば(火)、書写(水)、文字(木)、自由読書(金)というように1週間で50分になり、国語の授業1コマ分を積み重ねていくことも、大きな力となっていきます。「ことば」の授業では、一人ひとりがオノマトペ(擬音語・擬態語)辞典を考えて作り、作文に活かして使うなどの工夫もしました。「書写」では水筆を取り入れ、「とめ・はね・はらい」の感覚も筆で体験しています。懇談会で進度などをしっかりと説明し、廊下には英語と日本語の両方で掲示して、現状や今後の予定も説明します。デイリーメモを写真付きで毎日配信しているので、安心して過ごせたというフィードバックもいただけました。

「国際コース」として初めての1年生でしたが、学校と家庭がうまく連携できたことが成功の秘訣だったと思います。家庭で少しでも心配なことがあれば必ず学校に知らせていただけましたし、学校では3人の担任でシェアしたことは保護者の皆さんにも伝えていたので、学校と家庭の双方で子どもたちを一緒に見ている感覚が強い1年でした。学校任せにしないで、保護者の皆さんからも一緒に考えようという気持ちが伝わってきたので、とてもありがたかったです。

●「国際コース」の授業を取材(生活科)

この日は、1年生と2年生の合同で生活科の授業が行われました。「自分の身のまわりの環境を知る」というテーマで1年生が学校探検をする中で、2年生から遊具の使い方などを教えてもらいます。英語で自己紹介をした後、遊具で安全に遊ぶためにロープの使い方などを2年生が英語で教えてあげていました。説明が難しそうなときは、外国人教員が「滑り台は何て言うの?」などと質問しながら、英語を引き出します。異学年の交流活動としても、よい機会となっていました。

「今後も、学園探検、七夕のお祝い、秋祭りなど、2年生の国語や生活科のカリキュラムとマッチングさせて、1・2年生合同の授業を行っていきます。探究コースとの合同行事としては、学年のお誕生日会を年3回実施します。7月は1組(探究コース)が企画・進行を担当し、12月は2組(探究コース)、2月は3組(国際コース)の担当です。3組は英語のゲームを企画するなど、各クラスの特色が出るお誕生日会になります」(松崎先生) 

取材協力

昭和女子大学附属昭和小学校

〒154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57   地図

TEL:03-3411-5114 

FAX:03-3411-5356

URL:https://es.swu.ac.jp/

昭和女子大学附属昭和小学校