取材レポート

昭和女子大学附属昭和小学校

新校長が小・中・高をつなぎ、より強い連携が実現

昭和女子大学附属昭和小学校では、2021年4月に真下峯子先生が校長に就任。真下先生は、2020年4月に昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校の校長に就任しています。小学校と中学・高校の校長を兼務することで、小・中・高の連携がより強まり、児童の将来がより具体的に見えてくることが期待されます。新校長の真下峯子先生に、今後の方針や見えてきた変化などについて聞きました。

昭和女子大学附属昭和小学校 校長 真下峯子先生のお話
校長 真下 峯子 先生

校長 真下 峯子 先生

昭和女子大学附属昭和小学校 校長 真下 峯子 のお話

世界を見る目と科学への好奇心を育む教育

昭和学園は、2020年に創立100周年を迎えました。これまでの歴史や伝統を大切にしながら、次の100年を見据えて、新たな学びの仕組みを加えていきたいと考えています。本校は、100年の歴史の中でグローバルに進化してきましたが、これからの時代には科学的な視点も必要です。子どもたちが世界を見る目とサイエンスへの好奇心を持てるように、新たなことも取り入れていきます。好奇心を持てないと、楽しい人生は送れません。私は、幼いころから生物が好きでしたが、高1で学んだ発生は衝撃的でした。それで、発生生物学を学びたくて大学に行ったのですが、今でも理科が大好きです。理科の教員としての経験も活かして、本校の子どもたちにもキラキラとした好奇心を輝かせたいと思っています。

理科の実験から始まる「校長先生道徳」

「校長先生道徳」では、理科の教員である私にしかできない道徳をやりたいと考えました。テーマを与えて、まずは自分で考え、ほかの人の考えを聞いて、意見交換する道徳をつくっていきます。良いか悪いかではなく、探究できる道徳です。たとえば、先日のテーマは「本当の優しさとは何か」。立場によって、優しいと思うか思わないか、変わってくるという話です。それぞれの学年でかなり活発な議論が行われ、子どもたちもいろいろな考えの子がいることがわかりました。 

毎回、本題に入る前に、必ず理科の実験を見せています。先日は、アルカリ性を確かめる実験をしました。薄い水酸化ナトリウム溶液(透明)に、フェノールフタレインを入れるとピンク色になり、ストローで息(二酸化炭素)を吹き込むと再び透明になります。私が息を吹きかけたらピンク色から透明になったので、子どもたちは興味津々。「先生は魔女じゃないよ、みんなもできるよ。中学生になったら、みんなやるんだよ」と言ったら、「早く中学へ行きたい!」という声が聞こえて嬉しく思いました。小学校と中学・高校の校長を兼務しているからこそ、伝えられることです。このような実験も取り入れながら、中学での学びを子どもたちがイメージできるように、興味や関心をつなげていきたいと思っています。

男子にとって必要な力を育む好環境

本校に入学するとそれぞれの児童に、お兄さん、お姉さんとして6年生が付いてペアになります。6年生と1年生がメンターとバディの関係となり、音楽や読書、運動会などもそのペアで行うのです。また、3年生から参加する宿泊行事では、3年生と6年生、4年生と5年生がペアとなり、学園の宿泊体験施設で寝食を共にします。子どもたち同士の関わりの中で育っていくことが、大きな力となるのです。中学を受験することになる男子が本校を選ぶ理由は、そのような学校生活の中にあると思っています。中学を受験して勝ち抜くには、計算力や問題を解く力だけでなく、大変なことに立ち向かっていく底力が必要です。本校で学校生活を送る中で、思考力、判断力、表現力を育み、へこたれずにやり抜く力が身につきます。それは、高校や大学、社会へ出てからも必要となる力です。

小・中・高がつながることのメリット

高校と大学は、独自の五修生制度*をはじめ、様々な面で連携ができています。小学校と中学がつながれば、初等教育から大学、そしてその先もよりはっきりと見えてくるようになります。カリキュラムに関しても、よりスムーズにつなげることが可能になるでしょう。たとえば、中・高でプログラミングの独自カリキュラムを作ったのですが、小学校のプログラミングをどうつなげていくか検討しています。本校から中学へ上がった子はプログラミングのスキルも高いので、その力をより高められるようなカリキュラムを考えていきたいです。小学校では4月から1人1台iPadを使いこなしていますが、中学に入ったらキーボード付きのchromebookへと移行します。そして、高校ではBYOD(Bring Your Own Device)で、自分が好きな端末を選ぶことができます。小学校から高校までで、どんなタイプの端末にも対応できるようになるのです。

成績の追跡調査も行って、小学校から中・高へとつなげていきたいと考えています。高校の数学が苦手な子は、小学校の算数で躓いていることもあるからです。小学校までさかのぼって弱点や得意分野を共有できれば、弱点をケアしながら得意を伸ばしていける仕組みができると思います。

*6 年生(高3)の1年間は昭和高等学校に籍を置きながら昭和女子大学で学ぶ、附属ならではの制度。

小・中・高の教員同士も連携

これまでは、小学校と中・高で共有できなかったことも、私を中心に共有できるようになりました。とはいえ、私が両方にずっといられるわけではないので、校長補佐の教員が2人います。1人はマネジメントが専門で、もう1人はデータ分析が専門です。それぞれの専門分野を活かして、他の教員との話し合いや教育効果の分析などが、よりスムーズに、そしてより専門的に行えるようになりました。小学校と中・高の教頭同士は、ホットラインで情報共有しています。小学校と中・高がチームとしてつながれるように、実情を把握することから始めました。何かをやっただけで終わるのではなく、やってどうだったかを保護者の皆さんに向けても発信していきたいと、教員たちとも話しています。

本学園はワンキャンパスなので、小学校と中学・高校、大学、そしてBST(ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウ昭和)も距離が近く、心も近いと感じています。小学校と中・高の距離は、たった250歩です。移動の途中で私との挨拶や会話をきっかけに、子どもたちと中・高の生徒もつながっています。小学校で力をつけた子が入ってくれば中・高の教員も嬉しいですし、小学校から送り出した子が大きく成長すれば小学校の教員も嬉しいです。小・中・高がつながれば、新しいことにも挑戦できます。これまでの歴史を守りながら、次の100年に向けてイノベーションを起こしていきたいです。

取材協力

昭和女子大学附属昭和小学校

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