取材レポート

啓明学園初等学校

自ら考える力と基礎基本の育成

啓明学園初等学校では、豊かな感性や創造性、自ら考える力の育成をめざして独自の教育を行っています。同時に、基礎基本もしっかりと身につけさせます。同校の教育の特色についてお話を聞きました。

啓明学園初等学校 教頭 佐川 康博先生 のお話

「クリエイティブラーニング」につながる森遊び

本校では、子どもの「気づき」や「創造性」「考える力」などを育む独自の教育「クリエイティブラーニング」に力を入れています。先生に課題を与えられるのではなく、課題そのものを発見することから子どもが取り組み、探究するというクリエイティブな学習活動です。

「クリエイティブラーニング」は、本校がこれまで行ってきたアクティブラーニングや、体験学習を発展させる形でつくり出したものです。ことに、本校がもとから大切にしている体験学習は、クリエイティブラーニングと直接つながっています。たとえば、1・2年生が月に1回行う「森遊び」は、自然豊かな本校ならではの体験学習です。敷地3万坪の校内にある雑木林や池など、また校外に広がる昭島の自然が「森遊び」の場となります。

子どものセンシビリティーを高め、ふだん気づかないことに気づかせたい。それが「森遊び」の大きなねらいです。だから、自然観察の専門家を指導員に招き、知識を与えるのではなく、感覚を研ぎ澄ませるための体験学習を行います。たとえば、指導員は「川の音を聞こう。どんな音をしている?」と問いかけます。すると子どもたちは耳を澄ませ、「さわさわ」「ちょろちょろ」「ざあざあ」……いろんな答えが返ってきます。指導員は一つひとつを受け止め、「それが全部川の音だよ」と。また、崖滑りや不要な木の伐採など、指導員に見守られながらさまざまな体験をします。

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「察する学び」を重視

校内には広い農園もあり、米作りや野菜の栽培などを1年生から行います。中・高学年も総合学習や各教科で体験学習を行います。4年生は多摩川の源流を見に行き、海に流れ出るところまでたどってみます。宿泊を伴う体験学習は3年生から毎年行います。3年生は校内の「北泉寮」に合宿し、戦争を体験した人のお話を聞きます。東京都文化財に指定されている北泉寮は、戦時中に疎開した子どもたちが寝泊まりして授業を受けたという歴史があります。

本校ではこうした体験学習とともに、子どもたちが課題について自ら考え、調べ、解決するアクティブラーニングにも取り組みました。そのねらいは、考える力や探求力、表現力などを育むことです。体験学習とアクティブラーニングを結びつけた学びも行ってきました。

そして、本校が積み重ねてきた教育をより高めたいと考えるようになりました。アクティブラーニングだけでは足りないと考えたのです。子どもたちに必要な学びとは、「察する学び」ではないか。感性を働かせて何かを察し、「待てよ」と立ち止まり、そこに課題を見出す。自分たちで調べ、答えを導く。そうした「クリエイティブラーニング」を、2017年度より本格的に開始しました。今年2018年1月には、外部の教育関係者に向けて公開授業研究会を開催し、全クラスの「クリエイティブラーニング」の授業を公開しました。

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「自分で考えることのできる子ども」の育成

「クリエイティブラーニング」は総合学習の時間を中心に、各教科の授業で行っています。教員は子どもたちに気づきをうながし、子どもからの問題提起を大事にします。そのために授業をいろいろと工夫します。本校の教育の特色である国際交流も「クリエイティブラーニング」につなげます。たとえば、国際交流の一つに、海外のゲストから言葉や伝統文化について教えてもらう機会があります。なかには紛争を抱えている国からのゲストもいます。そうした人たちのお話をもとに、教員が気づきや課題発見を導きます。

子どもたちが課題を見出したら、それについてグループで調べます。みんなで悩んだり迷ったりしながら、自分たちなりの「答え」を探します。すると、一つの共通テーマに対して、グループごとに異なる解が出てきます。たとえば、原発をテーマに調べたときは、じつに様々な考えが出てきました。

「クリエイティブラーニング」の当初の大きなねらいは「察する学び」であり、気づきや課題発見を重視しましたが、こうして実際にやっていくうちに、「自分で考えることのできる子どもを育てる」というねらいも大きくなりました。ときに教員も収集がつかなくなるくらい多様な意見が飛び出す「クリエイティブラーニング」によって、子どもたちは「自分の考え」をきちんと述べることができるようになります。特に高学年にそうした成果が見られます。

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検定にチャレンジし基礎基本を身につける

「クリエイティブラーニング」と並行して、基本的な処理能力を養っていくことも重視しています。課題を発見し、自ら考え、解決する力などの応用的な能力だけでなく、計算や暗記などの基礎基本の力も大事です。2020年から始まる大学新入試の準備としても、応用力だけを伸ばせば足りるのではありません。

そこで本校では、検定試験を活用してしっかりと基礎基本を習得させていきます。日本語検定は年一回、3年生以上全員必修です。本校は帰国生の受け皿になる学校として創立し、現在は全体の3割弱が帰国生や外国籍の子どもです。そうした子どもも一般生も、学年に関係なく自分のレベルに応じて受けられるのが検定です。

このほか、英語、算数、珠算の各検定も行います。これらは希望制とし、日本語検定も含めすべて校内で実施するので、だれもが受けやすく、多くの子どもが受検しています。教員は検定指導も行い、習熟度別のプリントなどに取り組ませます。子どもたちは様々な検定にチャレンジすることで自分の得意な検定をもっと受けたいと思うようになり、なかには外部の検定試験を受けに行くなど積極的にレベルを上げていく子どももいます。たとえば、本校の英語教育では、6年生で英検3~2級レベルに到達するよう指導しますが、自分でどんどん英検を受け4年生で準1級に合格する子どももいます。

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毎日行う朝学習

基礎基本の定着のために、10分間の朝学習も毎日行います。英語は週3回、あとの2回は国語と算数を練習します。英語の授業は週2回なので、朝学習と合わせて毎日英語を学びます。 本校では以上のように、バランスのとれた教育を大切にします。一方に基礎基本の教育、もう一方に豊かな感性や課題を発見する力、創造性や思考力を養う教育、この二つを両輪にこれからもよりよい教育をめざしていきます。

最後になりましたが、課外学習としてアフタースクールを設置し、現在多くの子どもが利用しています。英語・そろばん・プログラミングの各教室を本校教員が指導します。英語教室では各自タブレット端末でe-ラーニングをするほか、啓明学園中学校・高等学校のネイティブ教員も担当し、オールイングリッシュで料理や藍染体験をするなど、多彩で実践的なプログラムを展開しています。また、サッカー教室「チェルシーサッカースクール」では、イギリスのチェルシーフットボールクラブのコーチライセンスを取得している指導者を迎えています。子どもたちにも人気の教室です。本校ではアフタースクールを含め、今後も子どもたちに多様な学びを提供していきます。

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取材協力

啓明学園初等学校

〒196-0002  東京都昭島市拝島町5-11-15   地図

TEL:042-541-1003(代)

FAX:042-542-5441(代)

URL:http://www.keimei.ac.jp/

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