取材レポート

昭和女子大学附属昭和小学校

3年目を迎えた「国際コース」と「探究コース」の軌跡とこれから

2024年春、「国際コース」と「探究コース」という2コース制をスタートさせた昭和女子大学附属昭和小学校。3年目を迎えた両コースの軌跡と今後の展開などについて、校長の前田崇司先生、国際コース長の近藤真司先生、探究コース長の工藤豪先生にお話を聞きました。

昭和女子大学附属昭和小学校 国際コース長 近藤真司先生のお話
■着実に力をつけている「国際コース」
■3年生から英語で学ぶ理科と総合学習がスタート

昭和女子大学附属昭和小学校 探究コース長 工藤豪先生のお話
■「体験」を通して見つける「問い」
■「子どもたちが中心となって進める授業
■「探究コース」2年生の野菜作り

昭和女子大学附属昭和小学校 校長 前田崇司先生のお話
■乗り越えてきた課題と見えてきた成果
■自ら学び始める子どもたち

昭和女子大学附属昭和小学校 国際コース長 近藤真司先生のお話

着実に力をつけている「国際コース」

「国際コース」では、毎年12月にTOEFL Primary®テストを受験して児童一人ひとりの英語力を客観的に把握しています。3年生は、Step1でほぼ全員が満点を取れるレベルに達していました。外国人教員の話もしっかりと理解できるようになってきていて、リスニングやリーディングでは、児童のほとんどがA1、A2レベルに達しています。子どもたちの様子を見ていると、入学当初は友達同士の会話は日本語も使っていましたが、今は英語で話すことも多くなりました。「国際コース」では毎朝、月ごとにテーマを決めて1分間スピーチを行っています。1年生のうちは英文を書いた紙を見ながら発表している児童が多かったですが、今は紙を見ないで話せるようになり、プレゼン用の資料を作ってきて発表する児童も出てきました。次のステップとしてリーディングの力も伸ばし、リスニングもさらなるレベルアップを目指していきたいです。

アウトプットの機会として、IC SPARK(国際コース発表会)を2月に行っています。2年生が「桃太郎」を英語劇で発表しました。「国際コース」の子どもたちは、表現力が豊かです。衣装も用意して、それぞれの「桃太郎」を表現できていたと思います。保護者の皆さんも子どもたちの生き生きとした演技を通して成長を感じ、感動していたことが伝わってきました。「桃太郎」では鬼役も重要ですが、そこは男子が演じてくれるなど、男女共学のよさも出ていたと感じます。入学当初は、単純に「英語が好き!」という気持ちが前面に出ていましたが、3年生になるとモチベーションも変わってきます。学年が上がるにつれて学習内容も難しくなってきますが、子どもたちが楽しみながら学び続けられるよう、授業の中にさまざまな工夫を取り入れ、先生方も子どもたちをサポートしています。
国際コース長 近藤真司先生

国際コース長 近藤真司先生

3年生から英語で学ぶ理科と総合学習がスタート

3年生からは、理科と総合学習が英語で学ぶ教科として新しく入ってきます。より専門的な単語を覚える必要があるので、難しさも増します。例えば、先ほど見ていただいた理科の授業は、「子葉」について学んでいました。スケッチをしながら、植物の部位や色の単語を覚えていきますが、「子葉」のように重要な言葉は何度も繰り返し学習し、ミニテストなどで定着させていきます。英語で他教科を学ぶということは、まずベースとして必要な言葉をインプットしなければなりません。難しい用語は視覚化するなどして、英語を使って学んでいけるように外国人教員と日本人教員それぞれの視点で、丁寧に指導を行っています。

算数に関しては、言語と数学的な思考はリンクしている部分もあると感じています。言語が発達していると算数の学力も高いことが多いです。英語で算数を教える際に気をつけていることは、つまずいている児童がいたら、算数と英語のどちらでつまずいているかを見極めることです。どちらに原因があるか把握できるように日本語による算数のテストも実施したり、日本語の算数プリントを宿題として出したりして、ご家庭にも協力をお願いしています。2つの言語を使いこなすためには、ご家庭の協力が不可欠です。他教科を英語で学んでいる学校はまだ少ないので難しい面もありますが、同時に「国際コース」の大きな特色でもあるので、中学での学びにつなげることも考慮しながら丁寧に進めています。

「探究コース」の方は、すでに子どもたちが授業を進めて教員は後ろで伴走するというスタイルが多く見られますが、「国際コース」では、他教科の授業でも英語をツールとして活用するため、まず英語力を身に付ける必要があります。中学年になり、英語のスピーキング力が向上してきたため、今年度からは子ども同士の話し合い活動がより活発になることを期待しています。本校はケンブリッジ国際認定校となっているので、総合学習もケンブリッジのプログラムに沿って英語で学んでいます。これまで培ってきた英語力を活かして、話し合いをしたり、調べものをしたりして、さらにステップアップしていきます。

昭和女子大学附属昭和小学校 探究コース長 工藤豪先生のお話

「体験」を通して見つける「問い」

「探究コース」では、子どもたちが自分から「問い」を見つけることに1年生から力を入れてきました。「問い」は日常生活の中にたくさんありますが、体験と言葉を往還させることが重要なポイントと考えています。3年生はこれまでの2年間で、五感を使って様々な体験をしてきました。例えば、「ダンゴムシはコンクリートを食べる」「ダンゴムシはお尻から水を飲む」などの情報を見つけたら、本当にそうなのか、自分たちで確かめようとします。ダンゴムシに煮干しや鰹節、キュウリを食べさせてみたり、足が本当に14本あるのか数えた児童もいました。透明な容器に入れて下から見たり、iPadで撮影して拡大したりするなど、やり方も自分たちで考えて調べます。教員は我慢して、答えは言いません。ダンゴムシを容器に入れて机の上に置き、常に観察している児童もいました。子どもたちは自分の虫眼鏡や方位磁針を持っているので、いつでも観察できますし、校庭に行って調べることもできます。

各クラスの担任は、入学後から子どもたちを連れて外へ行き、何に興味がありそうか探ります。「探究コース」では、子どもたちが没頭できるテーマを見つけることが非常に重要です。目標に向けて、子どもに合ったものをどう提供するか担任同士でも話し合って情報を共有しています。小学生は発想が柔軟で、教員の予想をはるかに超えることも考えますが、無理そうなことであっても否定はしません。すぐに答えを教えずに我慢することは簡単ではありませんが、まずは「いいね」と言って子どもたちの考えを受け止めるように心がけています。先生方の観察眼なども素晴らしく、教員も楽しみながら探究の楽しさを伝えていることも、本コースの大きな特色です。

本校では、「つかむ」「楽しむ」「豊かにする」「つくりだす」という探究サイクルを設定していますが、「つくりだす」が特に重要です。自分たちで何かを創造したり、話し合ったりしていくうちに、次の課題を自分たちで見つけて新たな「問い」につなげます。例えば、子どもたちは虫を育てた経験を活かして、蝶の羽の動きやバッタの飛び方、カマキリの鎌の動きなどをロボットで表現したいと言ってきました。そこで、昭和女子大のプログラミングを専門とする先生に来ていただき、2年生と3年生は虫ロボットを作っています。ダンゴムシの場合、普通のプログラミングだとスピードが出過ぎてしまうので、スピードを落とすにはどうすればいいか、自分たちで考えて試行錯誤しはじめました。スピードダウンできる方法に気づいた男子が他の児童に教えるなど、子ども同士の教え合いも自然に生まれています。
探究コース長 工藤豪先生

探究コース長 工藤豪先生

子どもたちが中心となって進める授業

各学年、60人それぞれが夢中になることを見つけて、自分から「やりたい」という気持ちの芽がかなり育ってきています。先ほど、2年生の授業を見ていただきましたが、今日は雨が降っているのに、子どもたちが「外で観察したい」と言ってきました。今、野菜を育てているのですが、雨が野菜とどのように関わっているのかを見たいのだそうです。そのように、児童が中心となって授業を展開する流れができているのが「探究コース」の大きな魅力だと感じています。

私は、両コースで社会科を教えています。「探究コース」では、1人が発言すると、その発言についてどんどん意見が出て、自分たちで授業を進めていきます。朝の会や帰りの会も連絡事項を伝えるだけでなく、「探究コース」はその5分を使って「今日自分が気になったことについてみんなはどう思うか」などと、1年生の後半から子どもたちが自発的にやり始めたことに、担任は驚いていました。「学び」を自分たちで作っていくということを、日々積み重ねているのです。

「探究コース」では、自分が体験したことを、自分なりの形で表現していきます。3年生が2年生のときには、世田谷区が主催する「多摩川こどもシンポジウム in 世田谷」に参加して発表しました。校外学習でお世話になっているNPO法人の方から話を聞いたことで、子どもたちは「出たい!」と言って自分たちで準備をはじめたのです。世田谷区の岡本公園でインセクトホテル(昆虫のための隠れ家)を作った経験を、劇のような形で発表しました。このような発表や日頃の学習など、「探究コース」も保護者の方たちの協力が大きいです。学校で体験したことをもう1度繰り返したり、夏休みの研究などにも協力していただいています。学校とご家庭の両方で体験したことを積み重ねて、子どもたちは自分に合った形でアウトプットしていくので、今後どのような形で表現されるのか楽しみです。

「探究コース」2年生の野菜作り

2年生は野菜を育てていますが、授業中、キュウリに支柱を立てている児童がいました。なぜ立てているか聞いてみると、つるが出てくると、そのままだとグルグルになってしまうので支柱を立てたそうです。その児童は、いつも野菜を見に行って、試行錯誤しているようです。また、支柱を立てていない児童は、友達の鉢がどうなるか見て、自分も立てるか考えると言っていました。トマトに支柱を立てないのは、今は実をつけることを優先させたいからなど、それぞれの視点で考えながら野菜を育てています。それぞれの鉢がどうなるか、私たち教員も楽しみです。

昭和女子大学附属昭和小学校 校長 前田崇司先生のお話

乗り越えてきた課題と見えてきた成果

「国際コース」では、外国人教員に日本の文化や日本の小学校のルールを理解してもらうことも大切で、子どもの「学び」を協業で支援するよきチームとなっています。例えば、鉄棒やマット運動など、母国では学んでいないものも英語で教えなければなりません。はじめは戸惑っていましたが、子どもたちが生き生きと取り組む姿や、少しずつ上達していく達成感などを見るうちに、教師として、子どもが学ぶことの意味や価値に気づいていったようです。音楽や体育を英語で教える経験のある日本人教員に間に入ってもらうことで、教え方のポイントなども伝わりやすくなりました。コース長も交えて、打ち合わせにはかなり時間をかけています。外国人教員には日本の教育のよさを理解してもらい、私たちは子どもたちの自由な発想を引き出す授業スタイルなどを見習い、お互いのよいところを取り入れながらギャップを埋めていく努力をしていきます。保護者の皆さんは、ただ英語ができればいいとは思っていません。自分から発信する力を育み、自信を持って何かを伝えられる人になってほしいと望んでいます。それは本校が目指す資質・能力とつながりますので、今後もご家庭に協力していただきながら具現化していきたいです。

「探究コース」では、3年生の理科でモンシロチョウを育て始めました。1、2年生で虫に触れてきた経験があるので、ある児童は自らモンシロチョウを飼育するケースの掃除方法を書いた冊子を作ってきて、みんなに配りたいから印刷してほしいと担任に言ってきたそうです。このような「自分リーダーシップ」が育まれていることを嬉しく思います。昨日は運動会の練習で、綱引きでずっと勝っていた3年生のクラスが初めて負けてしまいました。すると、なぜ負けたのか話し合いを始めたそうです。持ち方はどうだったか、立つ位置はどうだったかなど、子どもたちが自主的に本番で勝つための検証を始めました。そのような場面でも「探究コース」のよさが出ていますし、それぞれの得意分野で「自分リーダーシップ」が発揮されています。4年生以上も含めて、自分がやりたいことと貢献したいことがイコールになってきていると感じられるようになりました。得意分野によってリーダーが変わり、意見交換しながら子どもたちは成長していきます。
校長 前田崇司先生

校長 前田崇司先生

自ら学び始める子どもたち

両コースを見てきて、改めて子どもというのは本当に素晴らしい力を持っており、有能な存在だと感じます。もともと力を持っているので、それを磨いていくのが私たち大人の役目です。磨くというのもおこがましいですが、子どもたちは磨けば光る力をたくさん秘めています。それを信じて、時には待ってあげる時間も必要です。私は保護者や子どもたちに、「やらされる30分より、自分でやろうと思う3分を大事にしよう」と話しています。もちろん、やらなければならないこともありますが、自分で見つけてやろうとする3分はとても貴重なのです。委ねていけば、子どもはどんどん自ら学び、自律的な学びが生まれてきます。社会に出た後もやらされてやるのではなく、自分でアイデアを出したり、経験して学んだことを発信できる力を育てていくことが大切だと考えています。

ハードの面では、これまでランチルームを使用していたアフタースクールが大学のS棟に移動したことで、ランチルームを別の形で活用できることになりました。これから工事を行って、大きなモニターなどを備えた「探究ラボラトリー」に改修します。全学年が話し合いやプレゼンで使用でき、より探究を深められる施設になります。秋には完成して学びの環境もより充実するので、両コースとも課題と向き合いながらさらにブラッシュアップさせていきたいと思っています。

取材協力

昭和女子大学附属昭和小学校

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