取材レポート

横須賀学院小学校

教育技術の共有にも期待! 台湾の小学校と姉妹校締結

横須賀学院小学校では、2016年から台湾の彰化縣にある大村國民小學との交流を続けています。交流の中で信頼関係を築いてきた両校は、これまで以上に交流を深めていくことを目指して姉妹校締結の調印式を実施。横須賀学院小学校のチャペルで行われた調印式を取材し、横須賀学院小学校の小出啓介校長先生、英語科の阿部志乃先生、大村國民小學の江淑芳校長先生、教務主任の魏相英先生にお話を聞きました。

大村國民小學との姉妹校締結調印式

横須賀学院小学校 小出啓介校長先生、阿部志乃先生(英語科)
大村國民小學 江淑芳校長先生、魏相英先生(教務主任)のお話


魏相英先生によるICTを活用した音楽の授業(5年生)

大村國民小學との姉妹校締結調印式

横須賀学院小と大村國民小學(以下、大村小)は、英語科の学習として「Travel Teddy Project」*で交流したことをきっかけに、テレビ会議システムを使用したプロジェクト学習や交流団の訪問などを行ってきました。台湾からは2回目の訪問となった今回、江校長先生や魏先生らに引率されて7名の児童が来日。ホームステイや授業を通して、横須賀学院小の児童をはじめ、保護者や教員たちとも交流を楽しみました。

滞在の最終日に行われた姉妹校締結調印式で大村小の江校長先生は、「これまでの様々な交流には、保護者の方たちのサポートが欠かせませんでした。台湾では、横須賀学院小が価値ある教育を行っている、素晴らしい学校であることを保護者の皆さんも認識しています。学校訪問を通した経験は、両校の児童が世界市民として目覚めるきっかけになると信じています。姉妹校締結により両校はさらに絆を強め、今後は長期的な学校間の協力体制を構築していく予定です。お互いを尊重し、2つの小学校はますます発展していくことでしょう」と、姉妹校になることへの喜びや期待を語りました。それを受けて小出校長先生は、来日への感謝の気持ちや姉妹校の関係がいつまでも続くように願っていることを伝えました。

調印式の後は、大村小の児童が日本語で『大きな古時計』を合唱し、途中から横須賀学院小の児童も加わって美しい歌声がチャペルに響きました。

*海外の小学生とクマのぬいぐるみを留学生として交換し、留学生(ぬいぐるみ)が体験したことを日記帳に記録して、相手の学校に伝えるプロジェクト。

このページのTOP

横須賀学院小学校 小出啓介校長先生 阿部志乃先生(英語科)

大村國民小學 江淑芳校長先生 魏相英先生(教務主任)のお話

姉妹校締結までの経緯

横須賀学院小 小出校長先生
「大村小との交流は、英語科のプログラムとして始まったものです。ビデオ会議などで交流を深めていく中で、子どもたちから『会いたい!』という声が多く出るようになりました。そのような声を受けて、教科のプログラムとしてではなく、学校としてのつながりを深めるべきだと考えるようになりました。子どもたちの声が学校を動かし、子どもたちが学校を変えたのです。未来に生きる彼ら、彼女たちの力で、大村小との姉妹校締結が実現しました」

大村小 江校長先生
「台湾と日本は文化が似ている点も多く、国同士の関係も良好です。2016年から始まった『Travel Teddy Project』をきっかけに交流を深め、信頼関係を築いてきました。学校同士の強い絆が育まれ、日本についてもっと知りたいという思いも強くなっています。深い信頼関係が築けているからこそ、姉妹校締結が実現できたのです」

このページのTOP

横須賀学院小学校 小出啓介校長先生

横須賀学院小学校 小出啓介校長先生

大村國民小學 江淑芳校長先生

大村國民小學 江淑芳校長先生

言葉の壁を越えた子どもたちの交流

横須賀学院小 小出校長先生
「今回7人の児童が台湾から来日しましたが、最初はお互いに距離があり、本校の児童も大村小の児童も、どちらも表情が硬かったです。しかし、心配はいりませんでした。廊下を歩いていたら、本校の児童が『一起玩吧!(イーチーワンバ)』とつぶやいているのが聞こえました。『一緒に遊ぼう!』という中国語を自分で調べて、忘れないようにつぶやいていたのです。『一起玩吧!』は、とてもいい言葉だと思いました。その後、一緒にドッジボールをして遊ぶ様子が見られたり、意外な子が大村小の児童に話しかけていたり、意外な子が積極的に遊んでいたり、教員たちが知らなかった子どもたちの姿をこの交流で見ることができました」

大村小 江校長先生
「台湾の子どもたちは日本語をほとんど知りませんし、日本の子どもたちも中国語を知りません。共通語として英語がありますが、まだコミュニケーションできるレベルではありません。子どもたちはそのような壁を乗り越えて、ジェスチャーやアイコンタクトなど、言語に頼らない方法でコミュニケーションを取ろうとしている姿を見ることができました。ホームステイ先では、父母や祖父母などのホストファミリーとも、言葉を越えた心の交流がありました。一緒にゲームを楽しんだり、思いが通じたときには嬉しさを感じ、別れ際には涙を流すなど、様々な気持ちを体験したと思います」

このページのTOP

ホームステイプログラムによる子どもたちの成長

横須賀学院小 小出校長先生
「2018年に本校の児童が大村小を訪問した際は、教員だけでなく、保護者も同行しました。滞在中は、自分からコミュニケーションをとって仲良くなっていくなど、自立していく様子が見られて、保護者の目の前で子どもたちが変わっていきました。そのような中で、保護者の方たちの気づきも多くあったと思います。今回初めてホームステイを受け入れましたが、台湾からは毎日ビデオ電話があり、保護者同士も『台湾に来て』『日本に来て』と誘い合うなど、家族間での交流も深まり、とても面白いプログラムだと感じました」

大村小 江校長先生
「子どもたちは日本のマナーなどもよく知らなかったので、教員や保護者は心配し、来日前に日本のマナーなどを練習する講座も開きました。しかし実際に来てみたら、子どもたちは周りを見て自分たちで気づいて行動していました。そのような独立心を見ることができて、とても嬉しく思っています。子どもたちは、台湾と日本の授業の違いも感じ取りました。台湾では先生が指名した子だけが体験するようなことも、日本ではクラス全員で共有している場面もあり、子どもたちがそのような雰囲気を楽しんだと言っています。そして、来日前に子どもたちが台湾で練習したり学んだこと以上の学びがあり、それは日本に来なければ学ぶことはできなかったと思う、と子どもたちから今回の訪問についての感想もありました」

このページのTOP

横須賀学院小学校と大村國民小學、それぞれの魅力

横須賀学院小 阿部先生
「大村小は、学校全体から先生方の熱意が感じられ、設備に関しても校長先生が尽力されていることが伝わります。教員同士の信頼関係もしっかりとできていて、教育に対して全員が同じ方向を向いているのが素晴らしいと思います。国際教育や英語をはじめ、音楽などの芸術表現にも力を入れており、合唱で何度も全国大会に出場しているような学校です。ブロックなどを使ったロボット工学にも力を入れていて、コンピューターサイエンス専門の先生もいます。子どもたちがロボットを作って動かすのも当たり前で、それが低学年の1年生から計画されているのです。それほど早くから本格的にやっている学校は、日本ではおそらくまだないと思いますし、台湾でもあまりないと思います。大村小がある場所は決して都会ではありませんが、取り入れている教育は先進的で世界レベルです。様々な刺激を受けて、私たち教員もがんばらなければと思っています」

横須賀学院小 小出校長先生
「ICT教育に関しては、大村小から学ぶことがたくさんあります。例えば本校では、各教室にWi-Fi環境が整ったのは昨年の夏ですが、大村小では10年前には整っていたそうです。ICTを今後どのように活用していくか、大村小の先生方からも情報をいただいて、本校でも今まで以上に取り入れていきたいと考えています」

大村小 魏先生
「大村小では、教員が子どもたちの行動すべてに責任を持つという感覚がありますが、横須賀学院小では子どもたちをもっと自由に行動させていると感じます。そして、横須賀学院小の子どもたちの方が、より台湾に興味を持っていて、中国語を話そうとしている子も多かったです。好奇心も強いように感じました。子どもたちがiPadを持ち歩いて、あちこちで使っていることも新鮮でした。台湾では、授業中に先生の指示でiPadを出して使います。子どもたちがケースを持ち歩いて自由に使える仕組みはいいなと思ったので、台湾でも取り入れてみたいです」

このページのTOP

横須賀学院小学校 阿部志乃先生(英語科)

横須賀学院小学校 阿部志乃先生(英語科)

大村國民小學 魏相英先生(教務主任)

大村國民小學 魏相英先生(教務主任)

今後の交流への期待

横須賀学院小 小出校長先生
「姉妹校締結の調印式をするにあたり、本校の教員4名が冬休み中に大村小を訪問しました。授業を見たり経験したことからも様々な刺激や学びがあったので、教員同士の交流ももっと深めていきたいです。今回初めてホームステイを受け入れましたが、非常に有意義なプログラムでした。今後も継続的に行っていき、さらに、学校行事を一緒に行うことなども考えています。姉妹校となったことは、これから長いつながりを結んでいくための始まりです。お互いを刺激しあって子どもたちの未来を一緒に作っていきたいと思っていますので、大村小の皆さん、よろしくお願いします」

大村小 江校長先生
「横須賀学院小と姉妹校になれたことに感謝しています。これまでもビデオ会議などを通して交流してきましたが、今後はホームステイプログラムなどによる交流にも力を入れていきます。また、教員もお互いの学校で授業を行うなどして、教育技術を共有していきたいです。そして保護者の皆さんにも、ご理解、ご協力をいただきながら保護者同士の交流も深めて、学校を離れたところの文化や歴史なども共有していきたいと思っています。今回の訪問で、子どもたちの自立的な行動に気づくことができました。日本で実施したプログラムと同じようなことを、台湾でも実施していきたいです。また、今までやっていない新しいことにも挑戦していきたいと思っています。次はぜひ、台湾へ来ていただきたいです」

このページのTOP

魏相英先生によるICTを活用した音楽の授業(5年生)

交流団が帰国する前に、大村小の魏相英先生によるICTを活用した音楽の授業(5年生)も行われました。授業は英語で進められ、音楽だけでなく英語も学ぶCLIL型(英語の語学学習と他の教科学習を統合したアプローチ)の授業です。例えば、交響詩『モルダウ』の一部を聞いた後、魏先生は「How does this music make you feel?(この音楽をどのように感じるか?)」と質問。子どもたちは、答えとして用意された「This music makes me (       ).」の括弧内に「comfortable(快適な)」「relaxed(くつろぐ)」「sad(悲しい)」「scared(怖い)」など、気持ちを表す8つの言葉から選んで答えます。「relaxed」を選んだ子もいれば、「comfortable」と「scared」という正反対の2つの気持ちを選んだ子もいました。ゲームの要素も取り入れ、「音」を効果的に使った授業に、子どもたちは楽しそうに取り組んでいました。

このページのTOP

取材協力

横須賀学院小学校

〒238-8511 神奈川県横須賀市稲岡町82   地図

TEL:046-825-1920

FAX:046-825-1925

URL:https://www.yokosukagakuin.ac.jp/

横須賀学院小学校