取材レポート

洗足学園小学校

異学年との交流で様々な気づきを得る「たてわり活動」

洗足学園小学校では、総合学習の時間に「たてわり活動」を行っています。1年生から6年生で「たてわり班」を構成し、宿泊行事やスポーツ大会なども実施。2022年11月10日に行われた「たてわりスポーツ大会」を取材し、異学年で活動するねらいや子どもたちの変化について、入試広報委員長の松島隆先生にお話を聞きました。

洗足学園小学校入試広報委員長 松島隆先生のお話

洗足学園小学校入試広報委員長 松島隆先生のお話

1年間同じメンバーで交流を深める「たてわり活動」

本校では、1年生から6年生までの「たてわり班」を構成し、総合学習の時間を中心に活動しています。「たてわり班」は、1年間同じメンバーです。入学すると、1年生はまず2年生とペアを組んで交流会を行い、2年生が上級生への橋渡しをする役目を果たします。2年生が1年生の手を引いて、学校探検なども行います。コロナの影響で今はできていませんが、通年で「たてわりランチ」も定期的に行っていました。春には、1年生から6年生の「たてわり班」で遠足に行きます。そして夏に実施するのが、校内に宿泊する1・2年生の「夏の学校」と、3年生から6年生の長野県黒姫高原での移動教室です。寝食を共にすることで、班員との距離もぐっと近くなります。それらを経て2学期に行うのが、「たてわりスポーツ大会」です。1学期より班員同士の距離が近くなっているので、大いに盛り上がります。

「たてわり活動」では、低学年は上級生をお手本として集団生活に慣れ親しみ、中学年は、班の一員であることを自覚して決められた役割を果たせるようにする、そして高学年は、上級生としての自覚を持ち、リーダーシップを育むことを目指します。班は1年ごとに変わるので、3学期になると少しずつ翌年への準備も始めていきます。1年生と6年生が「一緒に遊ぶ会」は、1年生が上級生として新入生を迎える準備。2年生と5年生が「一緒に遊ぶ会」は、5年生が最上級生として新入生を迎える練習です。新6年生は入学式で、新入生の手を引いて入場したり、入学式に臨む前のお世話も担当します。

「たてわり活動」による子どもたちの変化

「たてわり活動」は、同学年の活動では気づかないことを学び取るよい機会となっており、様々な変化が見られます。例えば、朝会った時に異学年が自然に挨拶をしたり、一緒に登校したりするようになります。休み時間には学年という垣根を越えて、一緒に遊ぶ様子も見られるようになりました。ドッジボールや野球など、遊びの特性に合わせて、異学年が自然に混ざって遊ぶのです。本校には「児童会」があり、毎年役員は選挙で決めています。選挙権は3年生以上にありますが、知らない子ばかりだと投票しにくいという面もあるでしょう。もちろん選挙活動やスピーチなどもしますが、「たてわり活動」でお世話になっていれば、頼りになるかどうかわかります。「たてわり活動」による交流は、誰に投票するか決めるための下地としての役割も果たしているのです。

「たてわりスポーツ大会」で取り組む2種目

「たてわりスポーツ大会」は、ドッジボールと大なわとびの2種目です。以前から大なわとびの大会はあったのですが、「たてわり活動」に適していると考えて組み入れました。2種目にしたのは、ドッジボールだけだと得意な子と不得意な子がはっきりしやすく、せっかく「たてわり班」にしても活躍できない子がでてしまう可能性があるからです。大なわとびなら、女子は休み時間まで練習するぐらい燃えますし、みんながモチベーションを保てるようにという配慮でこの2種目にしました。練習は3週間前から始めますが、それぞれの学級で時間割が違うので、この3週間は体育の授業を特別な時間割で組んでいます。

ドッジボールと大なわとびのそれぞれで優勝チームを決めて、最後に総合優勝も決めます。5・6年生は、ドッジボールで優勝すると教員と試合ができるので、子どもたちはそれをとても楽しみにしています。競争ごとは熱くなりがちですが、この大会は熱くなりすぎないことを学ぶ機会としても重要です。冷静さを失うと、他者への気遣いができなくなることがあります。失敗を責めたりすると、萎縮して余計にできなくなるので、冷静に励まさなければなりません。スポーツ大会の前に運動会があり、運動会の前にはスポーツマンシップについて道徳の時間に学びました。道徳で学んでいるのと学んでいないのでは全然違いますし、それを経て「たてわりスポーツ大会」を行うことでより教育的な効果も高まります。

ドッジボールでの役割分担

このスポーツ大会は「たてわり活動」の一環ではありますが、ドッジボールの場合は、1年生と2年生はクラスごと、3・4年生合同、5・6年生合同という4チームに分かれて対戦します。1・2年生はまだ体も小さいですし、学校生活に慣れる段階なのでクラスごとの対戦です。また、6年生のボールは速いですし、得意・不得意の差も大きいので、体格や学年をある程度揃えないとイーブンな試合になりにくいと考えました。ですから、中・高学年は2学年合同のチームを組んで、それぞれ4年生と6年生が中心となって動いています。2学年合同にするだけでも、先輩・後輩という関係で指導や交流が見られます。

ドッジボールの試合は、作戦を立てないと勝てません。チームに1人、2人の強い人がいるだけでは勝てないスポーツです。チーム内には、得意な子もいれば、苦手な子もいます。それを理解した上で、どのように動くか、誰が誰にパスを出すかなどの作戦を上級生が中心となって考えていくのです。例えば、苦手な子は無理をしてボールを相手に投げたら取られてしまうので、上手にすばやく仲間にパスしたり、当たらないように逃げ切ることを目指すなど、役割分担が明確になっていきます。

大なわとびでの上級生から下級生への気遣い

大なわとびの場合は、1・2年生、3年生から6年生の男子、3年生から6年生の女子という3チームに分かれて行います。1・2年生はまだ回っている縄の中に入ることにも恐怖感がある子が少なくないので、跳ぶのではなくくぐり抜けるようにしました。競技のやり方はいろいろありますが、本校では2分間の間に何回跳べたかを競います。引っかかったら数え直すというシステムだと、引っかかった子が非難されてしまうかもしれません。道徳の時間で指導はしていますが、大会が盛り上がるほど、どこかでそういった言葉が出てくる可能性があります。ですから、途中で誰かが引っかかっても関係なく、回数を数えるシステムです。

大なわとびは特に女子が頑張っていて、休み時間になると上級生が下級生のクラスへ呼びに行くなどして、練習する様子も見られます。1・2年生がくぐるときは6年生が縄を回しますが、恐怖感を与えないように、気を遣いながら取り組む姿も微笑ましいです。「たてわり活動」を通して、そういったことも自然にできるようになっていきます。

卒業式で6年生との別れを心から惜しむ下級生

本校では、全員が中学受験をします。2月1日が本番ですが、その前日には学校で励ます会を開催して、「たてわり班」でお守りを作って6年生に渡します。卒業式でも、ホールから6年生が戻ってくると、下級生が花束を持って待っています。卒業する6年生を送り出す下級生たちは、心から別れを惜しむのです。「たてわり活動」を行っていることで、卒業式が「知らない人の行事」ではなくなり、「お世話になった人とお別れする日」となり、卒業式で涙する子が増えました。いろいろな行事を全学年で共有できるようになるのも、「たてわり活動」のよさだと思います。

今年度が初めての試みとしては、運動会の「大玉送り」という競技を「たてわり班」で行いました。運動会全体としては赤組と白組の対戦ですが、昨年までは学年ごとに行っていた「大玉送り」を「たてわり班」で行ってみたのです。大きいボールをみんなで送り出す競技なので、何も考えずにやっていたら勝つことはできません。上級生が下級生に教えながら、慣れ親しんでいる班員たちで大玉を送りました。今後も行事や日常生活の中で、「たてわり班」で活動する機会を増やしていきたいと考えています。

「たてわりスポーツ大会」当日の様子と子どもたちの感想

当日は、吉田英也校長先生のお話、注意事項の説明、選手宣誓、ラジオ体操の後、大なわとび、ドッジボールの順に競技が行われました。

「ドッジボールも大なわとびも、1人でやる競技ではありません。みんなで協力しあって、よい結果が出せるように頑張ってください」という校長先生の言葉を、子どもたちはしっかりと受け止めて大会がスタート。大なわとびでは横で見守る上級生が、間隔があいてしまっている1・2年生に「どんどん詰めてね!」と、状況を見ながら優しく声をかけている様子も見られました。5・6年生のドッジボールは、他学年と比べてボールや動作のスピード感が圧倒的。下級生たちにとってそのような5・6年生の姿は、身近なロールモデルとなるでしょう。

自分たちの競技が終わった班は、大階段に座って観戦します。1学期から交流の積み重ねがあるからこそ、6年生が中心となって声かけや誘導などもスムーズに行うことができていました。


「本番はみんな緊張して、その気持ちが班全体に広まってしまったので練習のときより記録が落ちてしまいました。それでも、大なわとびは96回跳べたので、100回に一番近かった班として賞状をもらいました。ドッジボールでは、おしいところで負けてしまったけれど、協力するということを改めて知ることができたと思います。試合で活躍したり、コツを教えてくれた4年生には感謝の気持ちでいっぱいです」(3年生・男子)

「ドッジボールは、前日の練習で全敗してしまったので、その反省を活かして本番に臨みました。その結果、試合開始からよい入り方ができ、全勝優勝できたので嬉しかったです。さらに、大なわとびとドッジボールの結果を合わせて、総合優勝もできました。楽しみにしていたスポーツ大会で、このような結果が出せてよかったです」(3年生・男子)

取材協力

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