取材レポート

精華小学校

30代の卒業生が実感!「体験学習」+「作文」で育まれる力

精華小学校では、ものの見方や考え方を深めていくために、体験を重視した学習を大切にしています。体験するだけでなく、 事前学習から作文を伴う事後学習までを行う総合的な学習として実施している点が大きな特色です。1 年生から体験と作文を積み重ね、6 年生の「関西旅行」(4泊5日)と「関西旅行記」が集大成となるように系統的に行っている体験学習について、5年生担任の倉富寿史先生にお話を聞きました。

精華小学校 5年生担任 倉富寿史先生のお話
5年生担任 倉富寿史先生

5年生担任 倉富寿史先生

精華小学校 5年生担任 倉富寿史先生のお話

精華の伝統「体験学習」+「作文」

各学年で実施している体験学習は、社会科に関連した知識を広げることを入口とし、社会科から国語へと教科を横断して旅行記をゴールとする学びです。今年度引率した5年生の東海旅行では、登呂博物館、清水港、久能山東照宮、三保の松原、由比漁港、茶畑などを訪れました。旅行記としてアウトプットするためにはメモも取るので、現地でのインプットにも力を入れるようになります。現地に行ったからこそわかる空気感、初めて見たもの、体験したことについても、しっかりと語ることができるようになるのです。

メモの取り方は社会科の授業で少し教えていますが、実践を通して学んでいくしかないのであまり細かいことは教えません。訪問先では、机と椅子に座ってメモを取れることは少ないですし、暑かったり、風が吹いていたり、雑音があったり、観光客が多くてメモを取りにくかったりするなど、教室で練習できるものでもないからです。隣の人がたくさんメモを取っているのを見て刺激を受けたり、あまり取っていない人を見れば反面教師にするなど、経験を重ねながら自分なりのメモを取れるようになっていきます。

これまでいろいろな学年を担当してきましたが、どの学年も体験学習に行ったら旅行記を書くことを当たり前のことと理解しています。文化祭で各学年の作品を展示しているので、説明しなくてもわかっているのです。文化祭は例年、10月の第1土曜日と日曜日に、中高とは別に小学校だけで開催しています。理科や図工の授業で作った作品など、4月から勉強してきた学習成果を発表する場です。1年生から6年生の旅行記も、保護者をはじめ、来校した皆さんが手に取って見られるように展示しています。6年生の関西旅行記は一人ひとりが書く枚数も多いので、80冊がどんと教室に置かれている光景も本校ならではの伝統です。6年間、文化祭で作品展示が繰り返されるので、子どもたちも保護者も、「来年はこれを書くんだな」と理解していきます。ですから、文化祭は児童にとっても保護者にとっても、非常に大きな意味がある行事です。

系統立てた指導のもとで伸ばしていく作文の力

1年生は4月から文字指導を行い、短い物語を勉強して、まずは1行書いたり、絵日記を書くことから始めます。7月までに段落の概念を教えて、3行ぐらい書けるように指導していきます。しかし1年生は、「話が変わったら改行して、1マス下げて書き始める」ということがなかなか理解できません。変なところで1マス空けたりするので、段落の概念を理解できるまでには、かなり丁寧な指導が必要です。そういった段階を経て、夏休み明けに動物園を訪れて、自分が見た動物について書きます。

1年生から6年生まで共通しているのは、行く前の準備です。2年生以上は行く前に、いつどこに行き、今どんな気分なのかなど、心構えとして前書きを書きます。1年生はまだ難しいので、どの動物を見学するか決めるのが1年生なりの心構えです。幼稚園の遠足と違って、全部の動物を見るわけではありません。決めた動物だけをじっくりと観察します。そして、「くちばし おおきい」とか「しっぽ ながい」など、気づいたことをメモして、それをもとに作文を書きます。そこからスタートして、学年を重ねるごとにメモも充実してきて、書く枚数も増えて質も上がっていくのです。

そして6年生で書く関西旅行記が、その集大成となります。京都や奈良を訪れる関西旅行は、他校でいう修学旅行の位置づけになりますが、他校と違う点は旅行が終わった後に旅行記を書くことです。4泊5日の関西旅行では約30か所を訪れて、文化財を鑑賞したり、様々な体験をします。高野山で宿坊に泊まったり、大徳寺で坐禅体験をするなど、歴史だけでなく文化や公共心なども学び、考えながら、子どもたちはメモを取ります。関西旅行記は、最低でも原稿用紙30枚は書きましょうと言っていますが、例えば、法隆寺について書こうと思ったら、1枚では終わらないでしょう。それぞれについて膨らませていったら、平均50枚ぐらいにはなります。100枚近く書く児童もいますし、上下巻になるほど書く児童もいました。

社会に出てから実感する「力」

漢字が苦手、水泳が苦手という人がいるように、作文をたくさん書ける人もいればあまり書けない人もいます。書ける児童はどんどん伸ばしたいですが、苦手な児童にとっては大変な6年間になるかもしれません。ですから、例えば清水港について書くときも、「原稿用紙2枚から4枚」というように幅を持たせて、苦手な人は2枚でもいいとしています。そうやって書いていくうちに、最初は苦手だった児童も書けるようになっていくのです。教室で作文を書いていると、鉛筆の音がまわりから聞こえてきます。苦手でも書かなければいけない状況となっていて、限界を感じてもそれを突破するしかありません。スポーツでもそうですが、一時期にどっぷり浸かってとことんやってみることで、その分野を深めることができると実感しています。9月に集中的に旅行記を書くことで、子どもたちの文章力も高まっていきます。

社会人になった卒業生が文化祭に来て、在校生の関西旅行記を見ながら「仕事でもこんなに書くことはないが、これを経験しておいてよかったと今、実感している」などと言ってくれると、本校の教育が間違っていなかったと感じられます。中高生だとまだ比較対象がないのでわからないのですが、社会人になると実感するようです。私たち教員も、6年間で完成させようとは思っていません。小学校では、社会に出てから役立つ力の種を蒔いているところなのです。

体験学習を行う9月は、まだ暑くて過酷な環境です。そのような中で気持ちを奮い起こしてメモを取ることは、精神力を鍛えることにもつながります。体力は、遊んだり、体育の授業を受けたり、学校に来るだけでも身に付くでしょう。知力も、様々な学びの中で育まれていきます。そこに精神力が加われば、知力・体力・精神力という三位一体の理想的なバランスが完成されるのです。旅行記を含めた体験学習を通して鍛えられた精神力は、中学受験でも本番に強く、それまでの努力を成果として出せる児童が多いことにも結果としてつながっていると感じます。作文を書くのに苦労する児童もいると思いますが、私学ならではの一貫した視点があって行っています。学年ごとの積み重ねが力になっていくので、子どもたちの力を信じて見守っていただきたいです。

1年生、3~5年生の授業を取材

同校は、2人の担任が80人(2クラス)を見る学年担任制です。学年担任に加え、1 学年に1〜2人、専科の教員が副担任として付きます。授業によっては教員が2人付くので、きめ細やかなフォローが可能です。

前日に動物園を訪れた1年生は、自分が観察した動物について書きます。2人の先生が子どもたちの机をまわり、質問がある児童は立って先生がまわってくるのを待っていました。5年生は自分のメモを見ながら黙々と書き、質問などがあれば先生の机に並びます。メモの書き方も一人ひとり違っていて、自分で考えながらメモしていることがわかりました。4年生は、県内旅行記を書いています。取材中に、見学した「宮ヶ瀬ダム」と「三保ダム」について児童に聞いたところ、それぞれの違いやダム建設によって沈んだ村があったことなどを、何も見ずに説明できていたので、しっかりとインプットされていることが伝わってきました。

3年生の算数では、前半は活発な意見交換が行われ、後半にノートパソコンを使って授業が進められていました。作文は原稿用紙に鉛筆書きですが、算数の授業などではタブレットやノートパソコン(3年生以上はChromebookを1人1台所有)も活用し、伝統的な教育とICTを活用した教育がバランスよく行われています。

5年生と6年生の児童にインタビュー

Iさん(5年生)

――東海旅行では、何が印象に残っていますか?

Iさん 朝早く起きて、競りの様子を見学した由比漁港です。いつも食べているお魚が、私たちの口に入るまでの流れを知ることができたので印象に残っています。茹でたてのシラスも食べましたが、とてもフワフワしていました。清水港で乗ったクルーズ船も楽しかったです。3年生のときは横浜で埠頭巡りをしましたが、また違った景色が楽しめました。

――作文は、どの場所についてたくさん書けそうですか?

Iさん 三保の松原です。宿舎の窓から見た三保の松原と船から見た三保の松原について、内側からと外側から見ることができたので、たくさん書けそうです。

――宿舎では、どんなことをしましたか?

Iさん みんなのメモを見せ合って、松組と桜組でガイドさんから聞いた話の違うところなどを教え合いました。教えるときは先生みたいに話したり、逆に聞く立場にもなったりして面白かったです。

――文化祭で上級生の作文を見て、どう感じましたか?

Iさん 大変そうだなと思いました。6年生の関西旅行記は、その年によっていろいろなハプニングもあったことなどもわかりました。私はあまり作文が得意ではないので、あんなにたくさんは書けそうにないなと思っています。旅行に行ったらメモを取るので、思い出すことはできますが、文章にするのは難しいです。まだ得意とは言えませんが、読書感想文は前よりたくさん書けるようになったなと思います。

Hさん(6年生)

――関西旅行で印象に残っている場所を教えてください。

Hさん 京都全般ですが、特に大徳寺で座禅をしたことが印象に残っています。初めて座禅をしましたが、毎日やるとなると大変そうだなと思いました。

――「関西旅行記」を書き終えた感想を教えてください。

Hさん 原稿用紙90枚になりましたが、こんなにたくさん書いたのは初めてです。春休み中は1日8枚ぐらいという計画を立てて、毎日半日ぐらいかけて書いていました。文化祭で上級生の作文を見たときは、量も多くて大変そうだと思いましたが、実際に書いてみたら、思ったほど大変ではなかったです。今まで5年間作文を書いてきたので、慣れてきたということもあると思います。書き終わったときはすごい達成感があり、こんなに書けたことが嬉しかったです。

――体験学習は楽しいですか?

Hさん 社会科が好きなので、学校の旅行は楽しいです。作文を書くのも好きな方なので、メモもかなりたくさん取ります。1年生から書いていくうちに、国語はかなり得意になったと思います。
――これまで学校で行った旅行で印象に残っている場所はどこですか?

Hさん 4年生で行ったダムが一番思い出に残っています。ダムを見たのは初めてで、想像よりずっと大きかったです。2つのダムを見ましたが、作り方も違っていて、ダムといっても全然違うなと思いました。4年生の旅行記には、ダムについてかなりたくさん書きました。

――文化祭で「関西旅行記」を展示しますが、どんなところを見てほしいですか?

Hさん いろんなところに行って、できるだけたくさんメモも取って、現地で聞いた話なども書いているので、そこを見てほしいです。自分で撮った写真も貼ってあります。

取材協力

精華小学校

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