取材レポート

川村小学校

正確で綺麗な音をいっぱい聞かせてあげたい。1年生から始める英語教育。

小学1年生からティーム・ティーチングによる英語の授業を取り入れて、ネイティブの先生と触れ合う中で自然と「聞く」、「話す」力を養う川村の英語教育。小中高12年間の一貫教育を見据えた英検への取り組みも注目すべき点で、英語教育の実際について小澤博子先生にお話を聞きました。

川村小学校 教諭 小澤博子先生のお話

1年生から始める週2時間の英語授業

川村小学校では、1年生から英語を始めています。情報、水泳とならんで本校の教育の特色であり、小中高12年間の一貫教育を見据えた取り組みも行っています。

まず1、2年生は週2時間、3年生以上は週3時間の英語の授業があり、そのうち1回はティーム・ティーチングでネイティブの先生と一緒に授業をしています。また1、2年生は複合授業というかたちでクラスを半分に分け、少人数で英語を学べるようにしています。

1年生からティーム・ティーチングによる授業を取り入れているので、ネイティブの先生と触れ合う中で自然と「聞く」力や「話す」力を身につけられるようになっています。

また授業は基本的に英語で進める方針で、教師からの呼びかけや指示もできる限り英語でしています。自然と英語のやりとりができるように子どもたちが日本語で話しかけてきても、英語で返すようにしています。とにかく、1年生から英語をいっぱい聞かせてあげたいと考えています。

2018年度より新しい教材を導入

また2018年度から、英語の必修化に合わせて全学年で一斉に英語の教材が変わりました。

登場人物が6年生まで変わらずに子どもたちと一緒に成長していくというストーリー性を持った内容で、子どもたちも親しみを持って取り組んでいます。すべてのテキストにCDがついているため、家でも繰り返し音読練習するのにも役立っています。

英語をアウトプットさせるには相当なインプットが必要だと言われています。まずは聞くことを中心にやってみようと、また感情が伴わないと棒読みになって会話にならないため、「登場人物の状況は?」や「どんな気持ち?」といったことを確認しながら、その状況にあった言い方をしているかという点も大切にしています。

この教材は対話形式になっているので、誰がどんな状況で話をしているのかが分かれば、たとえセリフを忘れたとしても伝えたいことを伝えられるようになっています。対話の発表をするときも、「とりあえず何か言ってごらん。そうすれば相手の人が何か受け取ってくれるよ」と。教科書の文章をただ読むのではなくて、状況を考えながら日常会話に近いかたちでアウトプットさせたいと考えています。

また高学年になると進行形や過去形、受動態や完了形など中学校3年間で習う英文法もすべて出てくるので、中学校で使っている「New Treasure」にも十分対応できますし、4技能が求められる英検の対策にもつながっていると思います。

中学校を意識した英検への取り組み

併設の川村中学校では、中学卒業時までに準2級の取得を目指して全員が英検を受験します。そのため小学校でも卒業までに3級をとりましょうという具体的な目標を立て英検を意識した取り組みを進めています。

本校が英検の会場校になっているのもありますが、毎年3回、英検の時期になると希望者に声をかけています。今年は5月に第1回目の英検が行われました。

塾や英会話教室などで個人的に申込みをしている子どもも含めると、英検を受験したことのある子どもは全体の3割を超えています。またそのうちの35パーセント近くの子どもが4級を取得していて、3級以上の取得者も約15パーセントといった結果です。1年生から英語を始めていますので、特にリスニングの力は優れていると思います。

他教科で学んだ内容を題材にした英語授業

また英語に関心を持って取り組んでもらうために、英語以外の教科で学んだ内容を題材にして英語の授業をすることもあります。

たとえば1年生であれば1+2とか5−3といった足し算、引き算を英語でやったり、国語の教科書に載っている絵を使って「What can you see ?」 とクイズを出したり。特に1年生は英語の教科書から入ってしまうと英単語がいっぱいで難しい印象を与えてしまうので、最初の授業の時は算数や国語の教科書を使って英語の授業をやることもあります。

他にも3年生の英語の授業で、社会科の地図記号を見せながら「What’s this sign ?」 と取り上げたことがありました。その時は3年生の社会科も受け持っていたので、地図記号の学習もちょうど終わったしやってみようと。他の教科で習ったことを英語でチャレンジしてみると子どもたちにとっても新鮮に感じられるようです。

また高学年はiPadを活用して、歴史上の人物や世界遺産をテーマに調べ学習したものを英語でまとめてみたり、「気象キャスターになろう」というテーマで演じたものを動画で撮って発表したこともあります。

「ipadを使って自分の感情を入れたものを動画に撮ってきて」と、テレビ局にいるweather forecasterと中継先のreporterを2人組で演じ分けるというものでした。みんなの前だと恥ずかしがって棒読みになってしまうと普段は目立たないような静かな子が女優のような演技力を発揮したことがあり、iPadを使ったことでそういう一面にも気づいて褒めてあげられたのは良かったなと思います。

ICTについては4年生以上が1人1台iPadを持っているのですが、英語の勉強にも使えるようにタブレットにはあらかじめ英語関係のアプリを入れてあります。英検のリスニング対策のアプリは家庭学習でも自由に使って構わないということにしていますし、単語力をつけるためにmikanというアプリも入れてあります。

小学校で重要なのは正確で綺麗な音を入れてあげること

私自身、中学と高校の授業も担当した経験があるので常に中高での学習にどうつなげていけばよいかを意識しています。小学校の英語でどういったことが重要かということについて考えたとき、とにかく小学生は耳が良いので正確で綺麗な音を入れてあげたいというのが一番でした。英語で授業を進めるのもCDを聞いて音読させるのも、英語を聞く耳をつくりたいという気持ちがあります。

高学年になればなるほど音が素直に入らなくなってきますし、中高生にとって英語はどうしても点数を取らなければいけないひとつの教科になってしまうので、そういう意味でも小学生のうちは聞いたり話したりすることを楽しんで取り組める教科であって欲しいと思っています。また英語は言語であり、コミュニケーションツールとして使うものだということをわかって欲しい、「お勉強ではなくて言葉ですよ」と伝えています。

英語で対話の発表をしてもらう時に、「先生、読んでいいですか?」と聞かれることがあるのですが、「あなたはお友達と喋るときに台本を書いて喋りますか?」と。「思ったことをそのまま喋っているでしょう、それでよいのです」と。

話すことに関して言えば、まず正しく喋らなければいけないというハードルを下げてあげたいと考えています。それよりも相手に、伝わるかどうかということを考えながら言葉を選ぶことの方が大事だと思います。

イントネーションや表情をつけて喋りましょうと言っているのもそうですが、棒読みになると何を言いたいのか相手に伝わりませんし、isなのかareなのか、theなのかaなのか、細かいところにこだわりすぎると喋れなくなってしまうので、それよりもどんな言葉で何を伝えるのが大事なのかといったことを意識させるようにしています。話せない言葉は書けない、と思っているので、まず話すことを第1にして、細かいところは、その後の作文指導の中で注意していければと考えています。

英語で自己表現ができるように発表の機会を増やしたい

新しい教科書を使うようになって3年目になり、ようやく各学年のペースが揃ったところなので、今後は発表の機会を増やしていきたいと考えています。

英語で自己表現ができるようになって欲しいと思っているので、個人発表はもちろんできればグループ学習にも取り組めるとよいなと、たとえば状況の設定から言葉選びまでオリジナルの台本を創作して発表できるような取り組みをやってみたいと考えています。

また高学年の総合的な学習の時間で取り組んでいる発表を英語でできたらということも考えています。iPadでつくった資料をスクリーンに映しながら、英語でプレゼンテーションするというのもやってみたいと思います。

そのためにもまずは英語に触れる機会を増やして、喋ることをためらわないようにしてあげたいという思いから、1年生の授業を担当していた時は、廊下ですれ違うたびに英語で話しかけたり、登下校の挨拶もGood morningとかSee youって言ってもらったり。

普段から英語を口にするのが自然になっているのはよいことですし、英語のやりとりをすることに抵抗感が無い子どもたちを育てたいと思っています。さらには中学、高校になっても小学校の頃に身につけたことが活きるような、土台を作ってあげたいと思っています。

編集後記

中学や高校の授業も受け持っている小澤先生だからこそ小学校で取り組むべき英語教育のイメージが鮮明で、小中高12年間の一貫教育という利点を生かした学校の魅力を感じました。

取材協力

川村小学校

〒171-0031 東京都豊島区目白2-22-3   地図

TEL:03-3984-8321(代) 03-3984-7707(入試広報室)

FAX:03-3984-9131

URL:https://www.kawamura.ac.jp/syougaku/

川村小学校