取材レポート

奈良学園小学校

子どもたちが未来へ羽ばたくために

小学校から中学・高校まで 12 年一貫教育を行う奈良学園。20 年後の社会で活躍できる子どもたちの育成に力を入れています。近年の新しい取り組みなど、学校が推進する教育についてお話を伺いました。

奈良学園小学校 校長 梅田 真寿美 先生のお話
校長 梅田 真寿美 先生

校長 梅田 真寿美 先生

奈良学園小学校 校長 梅田 真寿美 先生のお話

AI や IoT が広がる社会へ向けて

本校は 2017 年に創立 10 周年を迎え、これまでの教育の営みを見つめ直すとともに、21 世紀という新しい時代に目を向けました。将来の社会はどうなっているだろうか。目の前の子どもたちの教育を考えるとき、そこをしっかりと見据えなくてはなりません。 科学技術の発展により目前に迫っているのは AI(人工知能)や IoT(Internet of Things)の本格的な稼働です。国も近未来の社会に向けて、AI やロボット、IoT の活用を積極的に推進しています。そうした社会を生きる子どもたちに求められる力として近年特に重視されているのが、物事をやり抜く力や意欲、コミュニケーション力や協調性、リーダーシップなど、人間が持つ“非認知能力”です。 本校では、“認知能力”である“見える学力”を確実に養うのはもちろん、“非認知能力”である“見えない力”も伸ばしていきます。創立 11 年目となった 2018 年度より新しい教育をスタートさせるとともに、教育環境や教育システムなど本校ならではの特色は変えることなく大切にします。

幼稚園から高校まで集合する「登美ヶ丘キャンパス」

まず、本校のすばらしい教育環境について紹介したいと思います。奈良学園幼稚園、小学校、奈良学園登美ヶ丘中学・高校、すべてがともに広大な「登美ヶ丘キャンパス」で学んでいます。幅広い年齢層が触れ合い、学び合うことのできる環境が本校の大きな魅力です。
施設も充実しています。総合グラウンドは甲子園球場の約 3 倍の面積、しかも天然芝です。電子黒板を設置したゆとりある教室、蔵書 4 万冊のライブラリー、校舎屋上には本格的な天体望遠鏡を設置、礼法を学ぶ作法室や子どもたちがお米を育てる校内棚田など、最良の環境でのびのびと、有意義に学ぶことができます。

4-4-4 制による 12 年一貫教育を推進

異年齢の児童生徒がともに学ぶキャンパスだからこそ実現できるのが、奈良学園独自の 4-4-4 制による 12 年一貫教育です。本校では次のように区切っています。

Primary:小学 1 年生~4 年生
Middle:小学 5 年生~中学 2 年生
Youth:中学 3 年生~高校 3 年生

この区切りによって、現代の子どもたちの発達段階に応じた教育を行うことができます。その主要なものが、認知能力である“見える学力”の育成です。たとえば、Middle の小学 5・6 年生は、全教科とも専門の教員が教える教科担任制を採用し、加えて、国語・算数・理科・社会の 4 教科は各学期で中間・期末考査を実施します。

こうした5・6年生の教育は、中学での学びの準備となるものですが、あくまでも学級担任が子どもをよく見て、きめ細かく対応します。その一つとして行うのが、考査に向けた自学自習の指導です。考査の 1 週間前から子どもが「計画表」を用いて勉強スケジュールを立て、担任が毎日確認しアドバイスします。一人ひとりに目配りし自主性をうながしていく方針です。

また、算数・国語については、教科担当の教員が毎週放課後に教室を開きます。発展学習を行う「演習」と、基礎学習を行う「特訓」です。中学校に内部進学した子どもたちへのアンケートでは、定期考査について「しんどかったけれど、今あの経験が活かされている」「勉強の仕方の練習ができていたので、中学で困らずにできた」など、多くの子どもが前向きな感想を持っていることがわかりました。

「ことば」を通した学び

どの授業においても「ことば」を通した学びを大切にし、「話す・聞く・読む・書く」活動を意図的に取り入れています。その中心となるのが国語です。低学年から「ワザを身につけよう」を合言葉に、文と文との論理的なつながりの読み取りや相手に伝わりやすい文章構成など、さまざまな「ワザ」を身につけます。たとえば、「しかし」「だから」などの“つなぎことば”の役割を学んだうえで、実際に報告文を書いてみる活動を通し、論理的な読み取りや自分で文章を書くうえでの具体的な「ワザ」を身につけていきます。

国語では、全学年で「ブックトーク学習活動」に取り組みます。これは、教科書で学んだ物語文のテーマと共通する本を各自で選んで読み、それぞれを結びつけながら紹介文を書いたうえで、スピーチをする活動です。この活動によって、主題を読み深める力やテーマに沿って原稿をまとめる力、相手に伝わるように話す力などを総合的に養います。

各自で学びを振り返る

図工でも、「ことば」を通した学びを行います。その一つが、互いの作品の鑑賞です。友だちの作品のなかから心ひかれたものを選び、その理由をみんなの前で言葉で表現します。3 年生のある児童は、タイプのまったく異なる作品 2 点を取り上げ、「この絵はとても細かく、くわしく描いています。こっちの絵は色がとてもきれいです」と、それぞれの特徴を言葉で上手にとらえ発表しました。一人ひとりの思いを言葉で表し、互いに認め合うこのような場面を通して、児童の感性を育てていきます。

学びの「振り返り」を、子ども自身が「ことば」を通して行うことも大切です。算数ではそのために「算数作文」に取り組みます。教員が作成したワークシートを使って、子どもが自分の学びを振り返り、文章にまとめるのです。各教員が工夫し、こうした「ことば」による「振り返り」も行っています。

英語は新カリキュラム、「個に応じた学び」も強化

英語はこれまでの教育内容を整理し、さらに時代に合った新たなカリキュラムを 2018 年度よりスタートさせました。1~4 年生は「フォニックス」と「コミュニケーションベーシック」をそれぞれ週 1 時間、計 2 時間の英語の授業を行います。5・6 年生に設置するのは、「ABC グラマー」週 1 時間、「コミュニケーションアドバンス」週2時間の、計 3 時間です。

「ABC グラマー」の授業は、日本人の英語科教員が教えます。「フォニックス」と「コミュニケーション」は日本人英語科教員と ALT(外国語指導助手)がペアで担当し、子どもがたくさん英語を「使う」活動を中心に実践力を高めていきます。

同じく 2018 年度より強化したのが、「個に応じた学び」です。全学年の英語に「ATR CALL BRIX システム*」を導入しました。「聞く・話す・書く・読む」の 4 技能を養う e ラーニングシステムです。高度な音声情報処理技術によって発音の正確さを点数で表すなど、個別に能力を伸ばします。本校では一人 1台タブレット端末を使用し、定期的に授業のなかで取り組んでいます。こうした学びが、6 年生全員参加のハワイ宿泊学習にも生かせることになります。現地小学校との交流も含めた 5 泊 7 日の充実したプログラムで、6 年間かけて培った英語力をアウトプットする大切な機会となっています。

* ATR CALL BRIX システム:ATR(国際電気通信基礎技術研究所)が研究開発した英語学習システム。

算数も新システム導入・プログラミング教育も開始

「個に応じた学び」として、算数も 2018 年度より新たな取り組みをスタートさせました。それは4・5年生に導入した「リアテンダントシステム」です。一つの単元が終わるごとに独自の単元テストを行い、AI の要素を持つコンピュータが成績を詳細に分析したうえで、個別の練習問題に取り組みます。このシステムでは、たとえば、応用問題は解けたけれど基礎問題でミスがあり、集中力にムラが見られるなど、個々の課題を明らかにします。それによって、自分の目標や意識するべきことを子ども自身が具体的に把握できます。

「リアテンダントシステム」で行う単元テストでは、難易度の異なる16種類の練習問題が用意され、本人に合ったものをAIが精査するのも特長です。もちろん教員も一人ひとりのテストをチェックし、個別学習をサポートします。子どもたちからは「苦手な問題を繰り返し練習できる」「発展問題にも取り組める」など好評です。同システムは教育事業を手掛ける企業などが協同開発したもので、私立小学校では本校が初導入となりました。今後も個別最適化された学びの環境を整えていきます。

プログラミング教育も 2018 年度より本格的にスタートしました。総合学習の時間を中心に、他教科のなかでも行っています。本校がねらいとするのは、プログラミングの学習を通して論理的思考力を育むこと。低学年はプログラミングの前段階として論理性を養い、中学年は実際にコンピュータを使ったプログラミングを体験します。高学年では、学校紹介を目的にロボットプログラミングにチャレンジするなど、身につけたスキルを活用する段階まで進めたいと考えます。

多様な学年縦割り活動

子どもの非認知能力を養ううえで、本校では学年縦割りの活動を大切にしています。たとえば、思春期の入り口にある 5・6 年生では自己肯定感やリーダーシップなどの非認知能力を養うことが大切です。そこで、1~6 年生の全学年縦割り活動を行い、6 年生がリーダー役を担います。

1 グループ約 15 人の縦割りメンバーで、全校遊びや七夕集会などを楽しみます。以前行った 9 つのゲームのうち、グループ全員で 1 枚の新聞紙の上に乗るというゲームでは 6 年生がリーダーシップを発揮し、上級生が下級生をおんぶするなど楽しみながら協力し合いました。七夕集会でも、上級生が下級生に七夕飾りの作り方を教え、下級生もそれを一生懸命聞きながらいっしょに飾り、みんなの願いが笹に集まりました。

"非認知能力"を高める豊富な活動

縦割り活動によって、ふだんはクラスのなかでリーダーシップを発揮しにくかった子どもにも、下級生の面倒をよく見て、グループをまとめようとがんばる姿が見られます。一方、下級生にとっては、上級生のお兄さんやお姉さんが自分のめざす姿となります。異学年が触れ合うことはリーダーシップを育むだけでなく、コミュニケーション力や協調性など、すべての子どもたちの非認知能力を養うための教育となるのです。

本校では全学年の縦割り活動を学期ごとに1~2回行うほか、高学年と低学年、高学年と中学年、奈良学園幼稚園の園児と低学年児童など、いろいろな組み合わせによる活動を日常的に行っています。最大の縦割り活動は、幼稚園から高校までの合同運動会。奈良学園登美ヶ丘の名物行事です。

縦割り活動のほか、各学年で実施する宿泊行事などの体験学習も非認知能力を養う大事な機会です。3 年生は琵琶湖、4 年生は京都・美山町、5 年生は広島など、学校外のさまざまな人たちと触れ合いながら、自然体験や平和学習を行います。事前・事後の学習も時間をかけ、宿泊中は毎日自分を振り返って「しおり」に書き残すなど、一つの活動も無駄にせず子どもの力を養っていきます。

安心・安全な学校として

子どもたちの登下校を保護者へメールで伝えるスクールカードシステム、防犯カメラ設置や警備員の常駐など、安心・安全のための取り組みも力を入れています。避難訓練も定期的に実施します。

スクールバスはJR祝園駅および近鉄高の原駅・近鉄学園前駅から運行し、県内はもちろん、京都・大阪・兵庫からも安全に通学できます。いじめ防止も学校の重要な使命です。本校で策定している「いじめ防止基本方針」をもとに「いじめ対策委員会」が中心となり、いじめの未然防止、早期発見に組織的に取り組んでいます。また、安全面を考えるときに欠かせない食物アレルギーに対しても、個に応じたきめ細やかな対応を行っています。

放課後子ども預かり『きらっ登』

最後に紹介したいのは、放課後子ども預かり『きらっ登』です。1~4 年生対象で、平日は放課後19時まで、長期休暇中も開所します。校内専用ルームや体育館・運動場・PCルームなどで楽しく活動しています。また、本校が運営する「ならとみサッカースクール」や、「珠算」「茶道」「バレエ」「体操」など 8 つの課外講座と『きらっ登』との併用も可能です。

本校ではつねに子どもたちの「今」と「未来」を大切に、日々の教育に一生懸命取り組んでいます。そのめざすところは、20 年後の社会で活躍できる子どもの育成です。これからもより質の高い教育を提供していきます。

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奈良学園小学校

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